574 / 696
第574話「リオネルの報告は、簡潔明瞭。 本当に分かりやすい」
しおりを挟む
ヒルデガルドを抱いたリオネルは防護壁の上空を凄まじい速度で飛び、
先行し、待っていたジャンと100㎞先にて、合流した。
ジャンの報告では、生成した防護壁にひびや、崩れの不備はなかったとの事。
リオネルとヒルデガルドの視認も合わせ、とりあえず問題なしという話に。
更にリオネルは、防護壁付近の地形、村などをヒルデガルドに視認して貰い、
位置等を鑑みて、間違いなく100㎞先まで、防護壁が生成したと、
長さと位置の確認もして貰った。
そんなこんなで、リオネルたちが防護壁を確認している途中、
魔境へ突入したケルベロスから念話連絡が入った。
オークどもの本拠地、『巣』を発見、本拠地と特定したとの事である。
優秀なリオネルの配下たちは、命じられた仕事を完璧に遂行したのだ。
「ヒルデガルドさん」
「は、はい、何でしょうか、リオネル様」
「少し前に、念話で連絡がありました。ケルベロスたちが、魔境のとある地点で、オークどもの巣を発見し、本拠地だと特定しました。こちらも予定通り、防護壁の生成確認が完了したので、このまま、奴らの巣の上空へ転移します」
「え? このまま? 飛翔魔法を使いながら、ですか?」
「はい、これまで嫌になるくらい何度も修行し、成功したので、同時発動は問題ありません」
飛翔魔法、転移魔法、失われた古代魔法をふたつ同時に発動する。
とんでもない事をしれっと言うリオネルだが、
さすがに慣れたヒルデガルドは、すぐに柔らかく微笑む。
「分かりました。リオネル様、参りましょう!」
「はい、巣の上空で、ジズが待っているはずです……ジャン、魔境上空へ転移するぞ、俺の肩に腰かけてくれ」
『あいよっ!』
ジャンがすい~っと、飛び、ヒルデガルドを抱いたリオネルの肩へ腰かけた。
その瞬間、転移魔法が発動。
同時に、リオネルたちの姿は一瞬にして消え、魔境上空100mに転移していた。
少し離れた場所には、ジズが悠々と旋回している。
この真下に、オークどもの『巣』があるに違いない。
むわっとした大気……魔境独特の瘴気が包み込んで来る。
この瘴気のおぞましさに、繊細なアールヴ族は耐えられない。
身体が強張り、あっという間に行動不能となってしまう。
だから、これまでイエーラの討伐隊は、
魔境へ逃げたオークどもを深追いしなかったのだ。
ハッとしたヒルデガルドは、違和感を覚える。
「あ、あれ!? わ、私、魔境へ入っても、何ともない……」
様々な事が立て続けに起こり、ヒルデガルドは、リオネルから究極の防御魔法、
破邪霊鎧をかけて貰った事をすっかり忘れていたのだ。
「はい、先ほどかけた防御魔法の効果です」
そうリオネルから言われ、ハッとしたヒルデガルド。
記憶が甦って来たらしい。
「あ、ああ!! 思い出しました!! そういえば、リオネル様の姿が光り、私は防御魔法をかけて頂きましたね!!」
「はい、ヒルデガルドさんへかけた防御魔法は、他者へかけた場合、効果効能、持続性が、劣化する問題はありますが、そこそこのクオリティをキープし、少なくともその日1日は有効です」
「そ、そうなんですか」
「はい、この防御魔法は、術者自身、もしくはゴーレムや武器防具など無機物に付呪する分には、効果効能、持続性は、ほぼ完璧なんですが、もっと研究の余地がありそうです」
またもリオネルは、ヒルデガルドの好奇心を、思いっきりくすぐるような事を言う。
「ねえ! リオネル様! その話、もっと詳しく詳しくお願い致します」
ヒルデガルドは、リオネルにぎゅ!としがみつき、
甘えながら、せがんでいたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヒルデガルドからせがまれ、リオネルは苦笑。
任務中に自分から、横道へそれるような誘導をしてしまったからだ。
「申し訳ない、ヒルデガルドさん、その話はまた後で」
「え~~っっ!! そんなああ!! せっかく盛り上がって来たところなのにい!!」
「いえいえ、魔法談義より先に、とっとと任務を終わらせましょう」
「ぶ~っ、……な~んちゃって! 分かりました、うふふふふ♡」
ほおをふくらませ、少しだけ、すねたヒルデガルドだが、
すぐに機嫌を直し笑顔となる。
自分をしっかり抱き守ってくれるリオネルは、
本当に、たくさんのものを与えてくれると実感したのだ。
信頼、安心、勇気、向上心、探求心、などなど数えきれない。
同時に人間なんかと、見下し、驕っていた自分の愚かさが恥ずかしくもなる。
つらつら考えるヒルデガルド。
一方、リオネルはてきぱきと指示を出して行く。
「ジズ! このまま待機だ! 旋回しつつ、上空から、警戒してくれ!」
リオネルは、念話と肉声で指示を出した。
ジズは鋭く鳴いて応える。
ピィヤアアアーッ!
了解した!という意思の波動が、リオネルへ伝わって来た。
ここでリオネルは、ケルベロスと念話でやりとり、大きく頷く。
「ヒルデガルドさん」
「はい」
「たった今、確認が取れました。怯えたオークどもは、巣へ逃げ込み、そのまま立てこもっています」
「………………………………」
「安全が確保出来たので、巣から500m離れたケルベロスの居る地点へ、降下します」
「………………………………」
「現在ケルベロスは、アスプ10体と一緒で、それ以外のアスプ20体は、巣をぐるりと取り囲んでいます」
「な、成る程! よ~く、理解しました!」
リオネルの報告は、簡潔明瞭。
本当に分かりやすい。
黙って聞いていたヒルデガルドが、微笑んで頷くと同時に、
リオネルは彼女を抱いたまま、ゆっくりと降下を始めたのである。
先行し、待っていたジャンと100㎞先にて、合流した。
ジャンの報告では、生成した防護壁にひびや、崩れの不備はなかったとの事。
リオネルとヒルデガルドの視認も合わせ、とりあえず問題なしという話に。
更にリオネルは、防護壁付近の地形、村などをヒルデガルドに視認して貰い、
位置等を鑑みて、間違いなく100㎞先まで、防護壁が生成したと、
長さと位置の確認もして貰った。
そんなこんなで、リオネルたちが防護壁を確認している途中、
魔境へ突入したケルベロスから念話連絡が入った。
オークどもの本拠地、『巣』を発見、本拠地と特定したとの事である。
優秀なリオネルの配下たちは、命じられた仕事を完璧に遂行したのだ。
「ヒルデガルドさん」
「は、はい、何でしょうか、リオネル様」
「少し前に、念話で連絡がありました。ケルベロスたちが、魔境のとある地点で、オークどもの巣を発見し、本拠地だと特定しました。こちらも予定通り、防護壁の生成確認が完了したので、このまま、奴らの巣の上空へ転移します」
「え? このまま? 飛翔魔法を使いながら、ですか?」
「はい、これまで嫌になるくらい何度も修行し、成功したので、同時発動は問題ありません」
飛翔魔法、転移魔法、失われた古代魔法をふたつ同時に発動する。
とんでもない事をしれっと言うリオネルだが、
さすがに慣れたヒルデガルドは、すぐに柔らかく微笑む。
「分かりました。リオネル様、参りましょう!」
「はい、巣の上空で、ジズが待っているはずです……ジャン、魔境上空へ転移するぞ、俺の肩に腰かけてくれ」
『あいよっ!』
ジャンがすい~っと、飛び、ヒルデガルドを抱いたリオネルの肩へ腰かけた。
その瞬間、転移魔法が発動。
同時に、リオネルたちの姿は一瞬にして消え、魔境上空100mに転移していた。
少し離れた場所には、ジズが悠々と旋回している。
この真下に、オークどもの『巣』があるに違いない。
むわっとした大気……魔境独特の瘴気が包み込んで来る。
この瘴気のおぞましさに、繊細なアールヴ族は耐えられない。
身体が強張り、あっという間に行動不能となってしまう。
だから、これまでイエーラの討伐隊は、
魔境へ逃げたオークどもを深追いしなかったのだ。
ハッとしたヒルデガルドは、違和感を覚える。
「あ、あれ!? わ、私、魔境へ入っても、何ともない……」
様々な事が立て続けに起こり、ヒルデガルドは、リオネルから究極の防御魔法、
破邪霊鎧をかけて貰った事をすっかり忘れていたのだ。
「はい、先ほどかけた防御魔法の効果です」
そうリオネルから言われ、ハッとしたヒルデガルド。
記憶が甦って来たらしい。
「あ、ああ!! 思い出しました!! そういえば、リオネル様の姿が光り、私は防御魔法をかけて頂きましたね!!」
「はい、ヒルデガルドさんへかけた防御魔法は、他者へかけた場合、効果効能、持続性が、劣化する問題はありますが、そこそこのクオリティをキープし、少なくともその日1日は有効です」
「そ、そうなんですか」
「はい、この防御魔法は、術者自身、もしくはゴーレムや武器防具など無機物に付呪する分には、効果効能、持続性は、ほぼ完璧なんですが、もっと研究の余地がありそうです」
またもリオネルは、ヒルデガルドの好奇心を、思いっきりくすぐるような事を言う。
「ねえ! リオネル様! その話、もっと詳しく詳しくお願い致します」
ヒルデガルドは、リオネルにぎゅ!としがみつき、
甘えながら、せがんでいたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヒルデガルドからせがまれ、リオネルは苦笑。
任務中に自分から、横道へそれるような誘導をしてしまったからだ。
「申し訳ない、ヒルデガルドさん、その話はまた後で」
「え~~っっ!! そんなああ!! せっかく盛り上がって来たところなのにい!!」
「いえいえ、魔法談義より先に、とっとと任務を終わらせましょう」
「ぶ~っ、……な~んちゃって! 分かりました、うふふふふ♡」
ほおをふくらませ、少しだけ、すねたヒルデガルドだが、
すぐに機嫌を直し笑顔となる。
自分をしっかり抱き守ってくれるリオネルは、
本当に、たくさんのものを与えてくれると実感したのだ。
信頼、安心、勇気、向上心、探求心、などなど数えきれない。
同時に人間なんかと、見下し、驕っていた自分の愚かさが恥ずかしくもなる。
つらつら考えるヒルデガルド。
一方、リオネルはてきぱきと指示を出して行く。
「ジズ! このまま待機だ! 旋回しつつ、上空から、警戒してくれ!」
リオネルは、念話と肉声で指示を出した。
ジズは鋭く鳴いて応える。
ピィヤアアアーッ!
了解した!という意思の波動が、リオネルへ伝わって来た。
ここでリオネルは、ケルベロスと念話でやりとり、大きく頷く。
「ヒルデガルドさん」
「はい」
「たった今、確認が取れました。怯えたオークどもは、巣へ逃げ込み、そのまま立てこもっています」
「………………………………」
「安全が確保出来たので、巣から500m離れたケルベロスの居る地点へ、降下します」
「………………………………」
「現在ケルベロスは、アスプ10体と一緒で、それ以外のアスプ20体は、巣をぐるりと取り囲んでいます」
「な、成る程! よ~く、理解しました!」
リオネルの報告は、簡潔明瞭。
本当に分かりやすい。
黙って聞いていたヒルデガルドが、微笑んで頷くと同時に、
リオネルは彼女を抱いたまま、ゆっくりと降下を始めたのである。
0
お気に入りに追加
330
あなたにおすすめの小説
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる