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第574話「リオネルの報告は、簡潔明瞭。 本当に分かりやすい」
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ヒルデガルドを抱いたリオネルは防護壁の上空を凄まじい速度で飛び、
先行し、待っていたジャンと100㎞先にて、合流した。
ジャンの報告では、生成した防護壁にひびや、崩れの不備はなかったとの事。
リオネルとヒルデガルドの視認も合わせ、とりあえず問題なしという話に。
更にリオネルは、防護壁付近の地形、村などをヒルデガルドに視認して貰い、
位置等を鑑みて、間違いなく100㎞先まで、防護壁が生成したと、
長さと位置の確認もして貰った。
そんなこんなで、リオネルたちが防護壁を確認している途中、
魔境へ突入したケルベロスから念話連絡が入った。
オークどもの本拠地、『巣』を発見、本拠地と特定したとの事である。
優秀なリオネルの配下たちは、命じられた仕事を完璧に遂行したのだ。
「ヒルデガルドさん」
「は、はい、何でしょうか、リオネル様」
「少し前に、念話で連絡がありました。ケルベロスたちが、魔境のとある地点で、オークどもの巣を発見し、本拠地だと特定しました。こちらも予定通り、防護壁の生成確認が完了したので、このまま、奴らの巣の上空へ転移します」
「え? このまま? 飛翔魔法を使いながら、ですか?」
「はい、これまで嫌になるくらい何度も修行し、成功したので、同時発動は問題ありません」
飛翔魔法、転移魔法、失われた古代魔法をふたつ同時に発動する。
とんでもない事をしれっと言うリオネルだが、
さすがに慣れたヒルデガルドは、すぐに柔らかく微笑む。
「分かりました。リオネル様、参りましょう!」
「はい、巣の上空で、ジズが待っているはずです……ジャン、魔境上空へ転移するぞ、俺の肩に腰かけてくれ」
『あいよっ!』
ジャンがすい~っと、飛び、ヒルデガルドを抱いたリオネルの肩へ腰かけた。
その瞬間、転移魔法が発動。
同時に、リオネルたちの姿は一瞬にして消え、魔境上空100mに転移していた。
少し離れた場所には、ジズが悠々と旋回している。
この真下に、オークどもの『巣』があるに違いない。
むわっとした大気……魔境独特の瘴気が包み込んで来る。
この瘴気のおぞましさに、繊細なアールヴ族は耐えられない。
身体が強張り、あっという間に行動不能となってしまう。
だから、これまでイエーラの討伐隊は、
魔境へ逃げたオークどもを深追いしなかったのだ。
ハッとしたヒルデガルドは、違和感を覚える。
「あ、あれ!? わ、私、魔境へ入っても、何ともない……」
様々な事が立て続けに起こり、ヒルデガルドは、リオネルから究極の防御魔法、
破邪霊鎧をかけて貰った事をすっかり忘れていたのだ。
「はい、先ほどかけた防御魔法の効果です」
そうリオネルから言われ、ハッとしたヒルデガルド。
記憶が甦って来たらしい。
「あ、ああ!! 思い出しました!! そういえば、リオネル様の姿が光り、私は防御魔法をかけて頂きましたね!!」
「はい、ヒルデガルドさんへかけた防御魔法は、他者へかけた場合、効果効能、持続性が、劣化する問題はありますが、そこそこのクオリティをキープし、少なくともその日1日は有効です」
「そ、そうなんですか」
「はい、この防御魔法は、術者自身、もしくはゴーレムや武器防具など無機物に付呪する分には、効果効能、持続性は、ほぼ完璧なんですが、もっと研究の余地がありそうです」
またもリオネルは、ヒルデガルドの好奇心を、思いっきりくすぐるような事を言う。
「ねえ! リオネル様! その話、もっと詳しく詳しくお願い致します」
ヒルデガルドは、リオネルにぎゅ!としがみつき、
甘えながら、せがんでいたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヒルデガルドからせがまれ、リオネルは苦笑。
任務中に自分から、横道へそれるような誘導をしてしまったからだ。
「申し訳ない、ヒルデガルドさん、その話はまた後で」
「え~~っっ!! そんなああ!! せっかく盛り上がって来たところなのにい!!」
「いえいえ、魔法談義より先に、とっとと任務を終わらせましょう」
「ぶ~っ、……な~んちゃって! 分かりました、うふふふふ♡」
ほおをふくらませ、少しだけ、すねたヒルデガルドだが、
すぐに機嫌を直し笑顔となる。
自分をしっかり抱き守ってくれるリオネルは、
本当に、たくさんのものを与えてくれると実感したのだ。
信頼、安心、勇気、向上心、探求心、などなど数えきれない。
同時に人間なんかと、見下し、驕っていた自分の愚かさが恥ずかしくもなる。
つらつら考えるヒルデガルド。
一方、リオネルはてきぱきと指示を出して行く。
「ジズ! このまま待機だ! 旋回しつつ、上空から、警戒してくれ!」
リオネルは、念話と肉声で指示を出した。
ジズは鋭く鳴いて応える。
ピィヤアアアーッ!
了解した!という意思の波動が、リオネルへ伝わって来た。
ここでリオネルは、ケルベロスと念話でやりとり、大きく頷く。
「ヒルデガルドさん」
「はい」
「たった今、確認が取れました。怯えたオークどもは、巣へ逃げ込み、そのまま立てこもっています」
「………………………………」
「安全が確保出来たので、巣から500m離れたケルベロスの居る地点へ、降下します」
「………………………………」
「現在ケルベロスは、アスプ10体と一緒で、それ以外のアスプ20体は、巣をぐるりと取り囲んでいます」
「な、成る程! よ~く、理解しました!」
リオネルの報告は、簡潔明瞭。
本当に分かりやすい。
黙って聞いていたヒルデガルドが、微笑んで頷くと同時に、
リオネルは彼女を抱いたまま、ゆっくりと降下を始めたのである。
先行し、待っていたジャンと100㎞先にて、合流した。
ジャンの報告では、生成した防護壁にひびや、崩れの不備はなかったとの事。
リオネルとヒルデガルドの視認も合わせ、とりあえず問題なしという話に。
更にリオネルは、防護壁付近の地形、村などをヒルデガルドに視認して貰い、
位置等を鑑みて、間違いなく100㎞先まで、防護壁が生成したと、
長さと位置の確認もして貰った。
そんなこんなで、リオネルたちが防護壁を確認している途中、
魔境へ突入したケルベロスから念話連絡が入った。
オークどもの本拠地、『巣』を発見、本拠地と特定したとの事である。
優秀なリオネルの配下たちは、命じられた仕事を完璧に遂行したのだ。
「ヒルデガルドさん」
「は、はい、何でしょうか、リオネル様」
「少し前に、念話で連絡がありました。ケルベロスたちが、魔境のとある地点で、オークどもの巣を発見し、本拠地だと特定しました。こちらも予定通り、防護壁の生成確認が完了したので、このまま、奴らの巣の上空へ転移します」
「え? このまま? 飛翔魔法を使いながら、ですか?」
「はい、これまで嫌になるくらい何度も修行し、成功したので、同時発動は問題ありません」
飛翔魔法、転移魔法、失われた古代魔法をふたつ同時に発動する。
とんでもない事をしれっと言うリオネルだが、
さすがに慣れたヒルデガルドは、すぐに柔らかく微笑む。
「分かりました。リオネル様、参りましょう!」
「はい、巣の上空で、ジズが待っているはずです……ジャン、魔境上空へ転移するぞ、俺の肩に腰かけてくれ」
『あいよっ!』
ジャンがすい~っと、飛び、ヒルデガルドを抱いたリオネルの肩へ腰かけた。
その瞬間、転移魔法が発動。
同時に、リオネルたちの姿は一瞬にして消え、魔境上空100mに転移していた。
少し離れた場所には、ジズが悠々と旋回している。
この真下に、オークどもの『巣』があるに違いない。
むわっとした大気……魔境独特の瘴気が包み込んで来る。
この瘴気のおぞましさに、繊細なアールヴ族は耐えられない。
身体が強張り、あっという間に行動不能となってしまう。
だから、これまでイエーラの討伐隊は、
魔境へ逃げたオークどもを深追いしなかったのだ。
ハッとしたヒルデガルドは、違和感を覚える。
「あ、あれ!? わ、私、魔境へ入っても、何ともない……」
様々な事が立て続けに起こり、ヒルデガルドは、リオネルから究極の防御魔法、
破邪霊鎧をかけて貰った事をすっかり忘れていたのだ。
「はい、先ほどかけた防御魔法の効果です」
そうリオネルから言われ、ハッとしたヒルデガルド。
記憶が甦って来たらしい。
「あ、ああ!! 思い出しました!! そういえば、リオネル様の姿が光り、私は防御魔法をかけて頂きましたね!!」
「はい、ヒルデガルドさんへかけた防御魔法は、他者へかけた場合、効果効能、持続性が、劣化する問題はありますが、そこそこのクオリティをキープし、少なくともその日1日は有効です」
「そ、そうなんですか」
「はい、この防御魔法は、術者自身、もしくはゴーレムや武器防具など無機物に付呪する分には、効果効能、持続性は、ほぼ完璧なんですが、もっと研究の余地がありそうです」
またもリオネルは、ヒルデガルドの好奇心を、思いっきりくすぐるような事を言う。
「ねえ! リオネル様! その話、もっと詳しく詳しくお願い致します」
ヒルデガルドは、リオネルにぎゅ!としがみつき、
甘えながら、せがんでいたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヒルデガルドからせがまれ、リオネルは苦笑。
任務中に自分から、横道へそれるような誘導をしてしまったからだ。
「申し訳ない、ヒルデガルドさん、その話はまた後で」
「え~~っっ!! そんなああ!! せっかく盛り上がって来たところなのにい!!」
「いえいえ、魔法談義より先に、とっとと任務を終わらせましょう」
「ぶ~っ、……な~んちゃって! 分かりました、うふふふふ♡」
ほおをふくらませ、少しだけ、すねたヒルデガルドだが、
すぐに機嫌を直し笑顔となる。
自分をしっかり抱き守ってくれるリオネルは、
本当に、たくさんのものを与えてくれると実感したのだ。
信頼、安心、勇気、向上心、探求心、などなど数えきれない。
同時に人間なんかと、見下し、驕っていた自分の愚かさが恥ずかしくもなる。
つらつら考えるヒルデガルド。
一方、リオネルはてきぱきと指示を出して行く。
「ジズ! このまま待機だ! 旋回しつつ、上空から、警戒してくれ!」
リオネルは、念話と肉声で指示を出した。
ジズは鋭く鳴いて応える。
ピィヤアアアーッ!
了解した!という意思の波動が、リオネルへ伝わって来た。
ここでリオネルは、ケルベロスと念話でやりとり、大きく頷く。
「ヒルデガルドさん」
「はい」
「たった今、確認が取れました。怯えたオークどもは、巣へ逃げ込み、そのまま立てこもっています」
「………………………………」
「安全が確保出来たので、巣から500m離れたケルベロスの居る地点へ、降下します」
「………………………………」
「現在ケルベロスは、アスプ10体と一緒で、それ以外のアスプ20体は、巣をぐるりと取り囲んでいます」
「な、成る程! よ~く、理解しました!」
リオネルの報告は、簡潔明瞭。
本当に分かりやすい。
黙って聞いていたヒルデガルドが、微笑んで頷くと同時に、
リオネルは彼女を抱いたまま、ゆっくりと降下を始めたのである。
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