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第571話「ヒルデガルドさん、ジャン、俺のそばへ」
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イエーラ領内の占領地域から、跋扈していたオークどもを、
あっさり排除したリオネル。
占領地域に、オークどもの気配がない事を再び確認すると、
転移魔法で、待機するヒルデガルドたちの下へ帰還した。
「ただいま、戻りましたあ!」
片手を挙げ、声を張り上げて、帰還報告をするリオネルを見て、
ヒルデガルドは思い切り大きく目を見開き、
「よ、よくぞ、ご無事でえ!!」
感極まったように叫び、そのまま猛ダッシュ。
リオネルに、ひしっ!としがみついた。
そして無事を確かめるように、ぎゅ!ぎゅ!と、何度もリオネルを抱きしめ、
ぶるぶると身体を震わせる。
ううううと、小さな嗚咽も発していた。
心配しているとは思っていたが、想像以上のヒルデガルドの取り乱しように、
リオネルはびっくりした。
作戦を一から十まで説明し、
こちらの戦力と、リスクの少なさを、彼女には充分周知させたはずなのに。
と、そこへ笑顔のジャンが飛んでやって来た。
『あはは! リオネル様! お帰りなさあい! お疲れ様ああ!』
そして、リオネルにしがみつき、しゃくりあげるヒルデガルドを見て、
『あ~あ、ひで~や。リオネル様が、泣かせちゃったあ!』
と、人聞きが悪い事を言う。
おいおいおいと、リオネルは苦笑した。
そんなリオネルへ、ジャンは、
『大丈夫! ノープロブレム! リオネル様が無事に戻ってさ、ヒルデガルド様は、安堵のあまりの嬉し泣きだよ』
『はあ? 安堵のあまりの嬉し泣き?』
『うん! おいら、話し相手になっていたんだけどさ。ヒルデガルド様は、ず~っと、ず~っと、出撃したリオネル様の身を案じていたんだよお』
『そ、そうなのか?』
『そうだよお! ヒルデガルド様はさ、何かにつけてリオネル様、リオネル様って、リオネル様の話ばっかりだし、何かといろいろ聞きたがる。だからおいら、口止めされている事以外、いろいろ話していたんだ』
『そうか、フォローしてくれて、ありがとうな』
『あはは! どういたしまして! お安い御用さあ!』
という会話をジャンと交わしつつ、
リオネルはしがみついたままのヒルデガルドへ言う。
「ヒルデガルドさん」
「…………………………………………」
呼びかけたが、ヒルデガルドは、リオネルの胸へ顔を埋めたまま無反応。
なのでリオネルは話を続ける。
「ご心配をおかけしました。現在、作戦は順調に進んでいます。とりあえず占領地域からはオークどもを追い出しました」
「…………………………………………」
「アスプたちが眠らせ、行動不能にしたオークどもは、とどめを刺しました。討伐の証拠として空間魔法で死骸を数体キープしてあります」
「…………………………………………」
「既に指示を出したので、ケルベロスはジズ、アスプたちを率い、空と陸から奴らの巣を特定すべく、魔境内へ追撃を開始しています」
占領地域の現状を聞き、ヒルデガルドは口を開く。
「…………あ、ありがとうございます。わ、私……情けないですわ。今まで、この地域で、傍若無人にふるまうオークどもに対し、何も出来ませんでしたから」
対して、リオネルは柔らかく微笑む。
「いいえ、ヒルデガルドさんがご自身を卑下する事はありません」
「…………………………………………」
「発想を変えましょう」
「…………………………………………」
「縁あるいろいろな相手の助けを借り、目的を達成するのもひとつのやり方です」
「…………………………………………」
「自分ひとりで全てをやりとげようとせず、もっと部下の方々を、そして戻って来たイェレミアスさん、助っ人の俺を頼ってください」
「…………………………………………」
「全員で力を合わせ、困難を克服し、目的を達成するのも、結構気持ち良いものですよ」
「は、はいっ!」
リオネルの言葉が心に響いたのだろう。
ヒルデガルドは涙まみれの顔を上げ、元気よく返事をしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
今泣いた烏がもう笑う。
台風一過。
……ではないが、ヒルデガルドの機嫌が一変した。
リオネルが無事に戻っただけではなく、優しく励まして貰ったから。
にこにこにこと、明るくなった。
ここに日頃仕えている事務官、武官が居たら、大きなギャップに驚くに違いない。
普段のヒルデガルドは沈着冷静な、クールビューティーという雰囲気で、
淡々と指示を出し、滅多に感情を表に出さないのだから。
「では、作戦は次の段階へ移ります。魔境との国境付近へ行き、地属性魔法で防護壁を造るんです。これでオークどもが侵入しにくくなるはずです」
「はいっ!」
「転移魔法で、一気に跳びますが、まずは先にオルトロス、フロストドレイク、ゴーレムを現場へ送り込みます。俺たちの安全確保の為です」
リオネルはそう言うと、
「さあ! 準備は良いな? お前たち先に行け。安全の確認が出来たら報告を頼む」
の言葉とともに、転移魔法を発動した。
瞬間、オルトロス、ゴーレム20体、そして10m頭上を舞い、
護衛していたフロストドレイクは、煙のように消え失せた。
しばし経ち……
『オークどもは見当たらず、安全が確保出来た』と、
オルトロスから、念話連絡があった。
「今、オルトロスから連絡がありました。安全が確認出来たので、移動します。ヒルデガルドさん、ジャン、俺のそばへ」
「はいっ!」
『了解だよ! リオネル様』
ヒルデガルドがお約束とばかりに、ひし!とリオネルへしがみつき、
ジャンもリオネルの肩に腰かけた瞬間、転移魔法が発動。
リオネルたちの姿も、煙のように消え失せたのである。
あっさり排除したリオネル。
占領地域に、オークどもの気配がない事を再び確認すると、
転移魔法で、待機するヒルデガルドたちの下へ帰還した。
「ただいま、戻りましたあ!」
片手を挙げ、声を張り上げて、帰還報告をするリオネルを見て、
ヒルデガルドは思い切り大きく目を見開き、
「よ、よくぞ、ご無事でえ!!」
感極まったように叫び、そのまま猛ダッシュ。
リオネルに、ひしっ!としがみついた。
そして無事を確かめるように、ぎゅ!ぎゅ!と、何度もリオネルを抱きしめ、
ぶるぶると身体を震わせる。
ううううと、小さな嗚咽も発していた。
心配しているとは思っていたが、想像以上のヒルデガルドの取り乱しように、
リオネルはびっくりした。
作戦を一から十まで説明し、
こちらの戦力と、リスクの少なさを、彼女には充分周知させたはずなのに。
と、そこへ笑顔のジャンが飛んでやって来た。
『あはは! リオネル様! お帰りなさあい! お疲れ様ああ!』
そして、リオネルにしがみつき、しゃくりあげるヒルデガルドを見て、
『あ~あ、ひで~や。リオネル様が、泣かせちゃったあ!』
と、人聞きが悪い事を言う。
おいおいおいと、リオネルは苦笑した。
そんなリオネルへ、ジャンは、
『大丈夫! ノープロブレム! リオネル様が無事に戻ってさ、ヒルデガルド様は、安堵のあまりの嬉し泣きだよ』
『はあ? 安堵のあまりの嬉し泣き?』
『うん! おいら、話し相手になっていたんだけどさ。ヒルデガルド様は、ず~っと、ず~っと、出撃したリオネル様の身を案じていたんだよお』
『そ、そうなのか?』
『そうだよお! ヒルデガルド様はさ、何かにつけてリオネル様、リオネル様って、リオネル様の話ばっかりだし、何かといろいろ聞きたがる。だからおいら、口止めされている事以外、いろいろ話していたんだ』
『そうか、フォローしてくれて、ありがとうな』
『あはは! どういたしまして! お安い御用さあ!』
という会話をジャンと交わしつつ、
リオネルはしがみついたままのヒルデガルドへ言う。
「ヒルデガルドさん」
「…………………………………………」
呼びかけたが、ヒルデガルドは、リオネルの胸へ顔を埋めたまま無反応。
なのでリオネルは話を続ける。
「ご心配をおかけしました。現在、作戦は順調に進んでいます。とりあえず占領地域からはオークどもを追い出しました」
「…………………………………………」
「アスプたちが眠らせ、行動不能にしたオークどもは、とどめを刺しました。討伐の証拠として空間魔法で死骸を数体キープしてあります」
「…………………………………………」
「既に指示を出したので、ケルベロスはジズ、アスプたちを率い、空と陸から奴らの巣を特定すべく、魔境内へ追撃を開始しています」
占領地域の現状を聞き、ヒルデガルドは口を開く。
「…………あ、ありがとうございます。わ、私……情けないですわ。今まで、この地域で、傍若無人にふるまうオークどもに対し、何も出来ませんでしたから」
対して、リオネルは柔らかく微笑む。
「いいえ、ヒルデガルドさんがご自身を卑下する事はありません」
「…………………………………………」
「発想を変えましょう」
「…………………………………………」
「縁あるいろいろな相手の助けを借り、目的を達成するのもひとつのやり方です」
「…………………………………………」
「自分ひとりで全てをやりとげようとせず、もっと部下の方々を、そして戻って来たイェレミアスさん、助っ人の俺を頼ってください」
「…………………………………………」
「全員で力を合わせ、困難を克服し、目的を達成するのも、結構気持ち良いものですよ」
「は、はいっ!」
リオネルの言葉が心に響いたのだろう。
ヒルデガルドは涙まみれの顔を上げ、元気よく返事をしたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
今泣いた烏がもう笑う。
台風一過。
……ではないが、ヒルデガルドの機嫌が一変した。
リオネルが無事に戻っただけではなく、優しく励まして貰ったから。
にこにこにこと、明るくなった。
ここに日頃仕えている事務官、武官が居たら、大きなギャップに驚くに違いない。
普段のヒルデガルドは沈着冷静な、クールビューティーという雰囲気で、
淡々と指示を出し、滅多に感情を表に出さないのだから。
「では、作戦は次の段階へ移ります。魔境との国境付近へ行き、地属性魔法で防護壁を造るんです。これでオークどもが侵入しにくくなるはずです」
「はいっ!」
「転移魔法で、一気に跳びますが、まずは先にオルトロス、フロストドレイク、ゴーレムを現場へ送り込みます。俺たちの安全確保の為です」
リオネルはそう言うと、
「さあ! 準備は良いな? お前たち先に行け。安全の確認が出来たら報告を頼む」
の言葉とともに、転移魔法を発動した。
瞬間、オルトロス、ゴーレム20体、そして10m頭上を舞い、
護衛していたフロストドレイクは、煙のように消え失せた。
しばし経ち……
『オークどもは見当たらず、安全が確保出来た』と、
オルトロスから、念話連絡があった。
「今、オルトロスから連絡がありました。安全が確認出来たので、移動します。ヒルデガルドさん、ジャン、俺のそばへ」
「はいっ!」
『了解だよ! リオネル様』
ヒルデガルドがお約束とばかりに、ひし!とリオネルへしがみつき、
ジャンもリオネルの肩に腰かけた瞬間、転移魔法が発動。
リオネルたちの姿も、煙のように消え失せたのである。
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