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第564話「は、は、はいっ!! よ、喜んでぇぇ!!」
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官邸の大広間へ到着すると、そこにはイェレミアスが既に着席し、待っていた。
愛孫ヒルデガルドとリオネルが仲良く?並んで歩くのを見て、
満面の笑みを浮かべる。
とても上機嫌のようだ。
大きく声を張り上げる。
「おはようございます! リオネル様! さあ! こちらへ来て座ってください!」
祖父の言葉を聞き、ヒルデガルドも追随。
「うふふふ♡ リオネル様。おじいさまもああ、おっしゃっております。一緒に座りましょう!」
「はあ……イェレミアスさん、おはようございます」
生返事?をしたリオネルだが驚いた。
何と何と何と!
ヒルデガルドがいきなり手を伸ばして、リオネルの手をがっしとつかみ、
強引に座らせたのだ。
それも何と!
イェレミアスの『上座』にである。
「あのお……これって……」
イエーラ国民から崇拝されていた前ソウェルよりも上位の席次。
『序列』として、まずいのでは?と言いかけるリオネルをさえぎり、
ヒルデガルドは言う。
「全然! 構いませんっ! リオネル様は我がイエーラにとって、国賓ともいえるお方ですから!」
対して、リオネルは困惑気味。
「いや、俺、国賓なんかじゃなく、イェレミアスさんに雇われた、単なる助っ人冒険者ですから」
「ふふふ♡ 細かい事は良いではありませんか。うだうだしていると、時間を無駄にしますわ。とりあえずお座りください」
「……分かりました」
やはりヒルデガルドは強引である。
笑顔でリオネルをイェレミアスの上座に座らせると、
自分はリオネルの対面に座った。
「まずは、食事を済ませましょう。本題は食事の終了後で……食事中は仕事抜きの、歓談タイムに致します。さあ! 料理と飲み物を運んで頂戴!」
ヒルデガルドは、パン!と手を打ち鳴らし、
夜明け前の早い朝食が始まった。
食事開始の合図とともに、官邸の使用人たちが次々に料理と飲み物を運んで来る。
「私たちを気にせず、リオネル様、先に召し上がってくださいな」
「分かりました、じゃあ、遠慮なく」
料理は、アールヴ族が好むハーブをふんだんに使ったもの、
鶏、卵中心の、胃に負担がかからないような調理がされていた。
味付けは独特であったが、リオネルは気にしない。
ちなみに飲み物は、ハーブティーである。
「いただきます」
と言い、食事を始めたリオネル。
食感も良く、がつがつとたいらげる。
そんなリオネルを、対面から見つめていたヒルデガルド。
嬉しそうに微笑む。
「うふふ♡ 良い食べっぷりですね」
「はい、俺、食べられる時に、食べておけというモットーなので。それと料理と飲み物、とても美味しいですよ。担当の方にそうお伝えください」
リオネルの言葉を聞き、イェレミアスと目くばせし、
ヒルデガルドも食事を開始したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そんなこんなで、食事がひと通り済み……
お茶を飲みながら、ヒルデガルドが話しかける。
「リオネル様は、ソヴァール王国のご出身だそうですが……どういう生い立ちで、どのように修行し、ここまでの魔法使いにおなりになったのですか?」
……リオネルに興味津々のヒルデガルド。
しかし、生い立ちからこれまでの人生を語ると、とんでもない時間を要してしまう。
かといって、完全スルーするわけにもいかない、
ヒルデガルドは、折角、上機嫌なのだ。
敢えて損ねる事もあるまい。
そこでリオネルは、
「詳しいことは時間がある時に……簡単に言えば、魔法学校を出て、冒険者となり、良き師匠と出会い、旅をしながら、魔法の腕を磨きました。フォルミーカへ行く事は最初から決めていましたが、イェレミアスさんと出会い、仲良くさせて頂き、その結果、イエーラへ来たという次第です」
「うふふ♡ 短い! ずいぶん、はしょってらっしゃいますね。でもこれから出撃なさいますし、詳しい事は時間のある時においおいと。人間族の魔法学校では、当然、首席で卒業されたのですよね?」
ヒルデガルドの問いに対し、リオネルは、カミングアウト。
今や、黒歴史も遠い過去。
笑って話せるモノとなっているからだ。
「いえ、俺、とんでもなく劣等生で、魔法学校で、成績は一番下でした」
「え!? う、嘘!?」
「いえ、ほんとです。同級生のみんなからは、思い切り馬鹿にされていましたから」
「そ、そんな!?」
「今、考えれば、情けないの極致ですが、魔物を見るだけでも凄く怖くて、最初は、スライムばかり、恐る恐るこつこつと倒していました」
「ス、スライム!? 恐る恐るこつこつと倒していた!?」
「はい、ギルドの依頼である薬草採集とともに、地道にやって、報奨金を稼いでいましたよ」
4大精霊の加護を受けた全属性魔法使用者たるリオネルが、
最初は薬草採集とスライム討伐!?
それから、ここまで強く、底知れなくなるまで……
一体どんなドラマがあったのだろう?
ヒルデガルドの興味は、ますます、ますます、ふくらんだ。
しかしリオネルが、
「ははは、やっぱり話が長くなるので、とりあえずここまでとします。続きはいずれまた別の機会で」
「え~~~!!??」
「それより、ヒルデガルドさん、これから行うオーク討伐について、具体的な打合せをしましょうか」
「は、は、はいっ!! よ、喜んでぇぇ!!」
リオネルの身の上話の続きを、別の機会にと言われ、
まるで、おもちゃを取り上げられた子供のような表情のヒルデガルドであったが……
いよいよ、リオネルとともに出撃すると実感したのか、
一転、晴れやかな笑顔となったのである。
愛孫ヒルデガルドとリオネルが仲良く?並んで歩くのを見て、
満面の笑みを浮かべる。
とても上機嫌のようだ。
大きく声を張り上げる。
「おはようございます! リオネル様! さあ! こちらへ来て座ってください!」
祖父の言葉を聞き、ヒルデガルドも追随。
「うふふふ♡ リオネル様。おじいさまもああ、おっしゃっております。一緒に座りましょう!」
「はあ……イェレミアスさん、おはようございます」
生返事?をしたリオネルだが驚いた。
何と何と何と!
ヒルデガルドがいきなり手を伸ばして、リオネルの手をがっしとつかみ、
強引に座らせたのだ。
それも何と!
イェレミアスの『上座』にである。
「あのお……これって……」
イエーラ国民から崇拝されていた前ソウェルよりも上位の席次。
『序列』として、まずいのでは?と言いかけるリオネルをさえぎり、
ヒルデガルドは言う。
「全然! 構いませんっ! リオネル様は我がイエーラにとって、国賓ともいえるお方ですから!」
対して、リオネルは困惑気味。
「いや、俺、国賓なんかじゃなく、イェレミアスさんに雇われた、単なる助っ人冒険者ですから」
「ふふふ♡ 細かい事は良いではありませんか。うだうだしていると、時間を無駄にしますわ。とりあえずお座りください」
「……分かりました」
やはりヒルデガルドは強引である。
笑顔でリオネルをイェレミアスの上座に座らせると、
自分はリオネルの対面に座った。
「まずは、食事を済ませましょう。本題は食事の終了後で……食事中は仕事抜きの、歓談タイムに致します。さあ! 料理と飲み物を運んで頂戴!」
ヒルデガルドは、パン!と手を打ち鳴らし、
夜明け前の早い朝食が始まった。
食事開始の合図とともに、官邸の使用人たちが次々に料理と飲み物を運んで来る。
「私たちを気にせず、リオネル様、先に召し上がってくださいな」
「分かりました、じゃあ、遠慮なく」
料理は、アールヴ族が好むハーブをふんだんに使ったもの、
鶏、卵中心の、胃に負担がかからないような調理がされていた。
味付けは独特であったが、リオネルは気にしない。
ちなみに飲み物は、ハーブティーである。
「いただきます」
と言い、食事を始めたリオネル。
食感も良く、がつがつとたいらげる。
そんなリオネルを、対面から見つめていたヒルデガルド。
嬉しそうに微笑む。
「うふふ♡ 良い食べっぷりですね」
「はい、俺、食べられる時に、食べておけというモットーなので。それと料理と飲み物、とても美味しいですよ。担当の方にそうお伝えください」
リオネルの言葉を聞き、イェレミアスと目くばせし、
ヒルデガルドも食事を開始したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そんなこんなで、食事がひと通り済み……
お茶を飲みながら、ヒルデガルドが話しかける。
「リオネル様は、ソヴァール王国のご出身だそうですが……どういう生い立ちで、どのように修行し、ここまでの魔法使いにおなりになったのですか?」
……リオネルに興味津々のヒルデガルド。
しかし、生い立ちからこれまでの人生を語ると、とんでもない時間を要してしまう。
かといって、完全スルーするわけにもいかない、
ヒルデガルドは、折角、上機嫌なのだ。
敢えて損ねる事もあるまい。
そこでリオネルは、
「詳しいことは時間がある時に……簡単に言えば、魔法学校を出て、冒険者となり、良き師匠と出会い、旅をしながら、魔法の腕を磨きました。フォルミーカへ行く事は最初から決めていましたが、イェレミアスさんと出会い、仲良くさせて頂き、その結果、イエーラへ来たという次第です」
「うふふ♡ 短い! ずいぶん、はしょってらっしゃいますね。でもこれから出撃なさいますし、詳しい事は時間のある時においおいと。人間族の魔法学校では、当然、首席で卒業されたのですよね?」
ヒルデガルドの問いに対し、リオネルは、カミングアウト。
今や、黒歴史も遠い過去。
笑って話せるモノとなっているからだ。
「いえ、俺、とんでもなく劣等生で、魔法学校で、成績は一番下でした」
「え!? う、嘘!?」
「いえ、ほんとです。同級生のみんなからは、思い切り馬鹿にされていましたから」
「そ、そんな!?」
「今、考えれば、情けないの極致ですが、魔物を見るだけでも凄く怖くて、最初は、スライムばかり、恐る恐るこつこつと倒していました」
「ス、スライム!? 恐る恐るこつこつと倒していた!?」
「はい、ギルドの依頼である薬草採集とともに、地道にやって、報奨金を稼いでいましたよ」
4大精霊の加護を受けた全属性魔法使用者たるリオネルが、
最初は薬草採集とスライム討伐!?
それから、ここまで強く、底知れなくなるまで……
一体どんなドラマがあったのだろう?
ヒルデガルドの興味は、ますます、ますます、ふくらんだ。
しかしリオネルが、
「ははは、やっぱり話が長くなるので、とりあえずここまでとします。続きはいずれまた別の機会で」
「え~~~!!??」
「それより、ヒルデガルドさん、これから行うオーク討伐について、具体的な打合せをしましょうか」
「は、は、はいっ!! よ、喜んでぇぇ!!」
リオネルの身の上話の続きを、別の機会にと言われ、
まるで、おもちゃを取り上げられた子供のような表情のヒルデガルドであったが……
いよいよ、リオネルとともに出撃すると実感したのか、
一転、晴れやかな笑顔となったのである。
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