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第553話「は!? ま、魔法!? ど、どういう事でしょうか!?」

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「うふふふ、OK! OK! リオのアイディア通りに行いましょう」

リオネル、ティエラを完全に舐め腐ったヒルデガルドの傲岸不遜な態度、
無礼な言動にぶち切れ、不機嫌極まりない憤怒状態だったティエラ。

しかし、リオネルの『提案』を聞くと、あっさり機嫌を直した。

念の為、補足すると、リオネルの提案とは、

「はい、まずは鎮静の魔法でこの場の全員を落ち着かせ、その上で改めてティエラ様と俺で自己紹介しませんか」

というもの。

そして、自己紹介の後に、リオネルも魔法を披露するという話になっている。

すっかり機嫌が直り、にっこり微笑むティエラの表情は晴れやか。
まさに台風一過の快晴、青い大空が広がったピーカンという趣きである。

そのあまりの変貌ぶりに、硬直しながらもイェレミアスとヒルデガルドは呆然。
護衛、事務官等々、周囲のアールヴたちも硬直し、動けない。

否、この官邸全体のアールヴ族が、ティエラの怒りの波動を受けて固まり、
身動きが取れなくなってしまっていただろう。

リオネルは言う。

「では、ティエラ様。広範囲鎮静魔法の行使をお願い致します」

「オッケ~! ほいほいっと!」

ティエラはにっこり笑うと、「ぱちん!」と指を鳴らした。

と同時に!
ティエラから強大な魔力が発せられ、全身がまばゆい白光に包まれる。
そして魔力をまとう白光は、あっという間に周囲へ広がって行く。

無詠唱、そして神速発動。

さすが、まもなく地母神になろうかという最高位たる精霊の力。

発動された広範囲鎮静魔法は劇的な効果を表した。

すぐ傍らに立っていたリオネルも白光に包まれ、温かさと安堵感に包まれる。
縛られていた心は解かれ、強張っていた身体はほぐれて行く……
若干体力も戻っている。

やがて、官邸中へ白光が満ちると……

「よし! これくらいで充分でしょ! お~い、イェレミアス、貴方、通常運転に戻った?」

「は、は、はい! も、戻りました!」

「OK! じゃあ、小娘はどう?」

小娘はどう?

相変わらずティエラはヒルデガルドを名前で呼ばない。
まだまだ手綱を緩めないという雰囲気だ。

「は、は、はいいい~~!! も、も、戻りましたあ!!」

「よろしい! 反省もしているみたいだし、ようやくまともに話せそうね」

とティエラは言い、リオネルへ向き直る。

「じゃあ次はリオの番よ」

「はい、分かりました」

「うふふ、リオがどんな魔法を見せてくれるのか、楽しみ~♡ ああ、ちなみに私の自己紹介はその後でリオと一緒にやるからね」

「重ね重ね分かりました、いつもながら凄いですね、ティエラ様」

「うふふ♡ まあね、これくらいやれなきゃ、お父様にこっぴどく怒られるわ、そう思わない? リオ」

父アマイモンに怒られる……と言われてもリオネルはリアクションに困ってしまう。

「ええっと……次は俺が魔法を使う番ですが、今日は天気も良いし、とりあえず外へ行きましょうか?」

「うふふ、大賛成! 良いわね、外!」

と、笑顔でリオネルへVサインを送ったティエラ。

そして彼女は、イェレミアスへ向き直ったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ねえ、ねえイェレミアス、確かこの官邸にはさ、緑の芝生たっぷりの広い中庭があったよね?」

「はっ、はい! あります!」

「だってさ、リオ。そこへ行こう! 中庭へ移動して、皆で軽くお散歩をして、美味しいお茶でも飲みましょ! 決定!」

リオネルは官邸へ通される途中、見かけた中庭を思い出す。
大丈夫……この執務室の全員が一度に転移可能だ。

「了解っす。じゃあ、この執務室の全員、中庭へ移動します」

リオネルの言葉を聞き、ヒルデガルドは配下たちへ移動を命じるべく、
動こうとする。

しかし、リオネルが手を突き出し、その動きを制した。

「あ、ヒルデガルドさん。このままで大丈夫っす」

「え!? えええ!? こ、このままって、ど、ど、どういう事!? な、中庭へ移動するんですよね?」

驚くヒルデガルド。
あれだけ見下していたリオネルに対し、まずいと思ったのか、敬語を使っている。

「はい、お約束通り、魔法を使います。少し不可思議な感覚に捉われますが、我慢をしてくださいね」

「は!? ま、魔法!? ど、どういう事でしょうか!?」

「そのまま、深呼吸でもしてリラックスしてください」

リオネルは言い、護衛、事務官たちへも、

「皆さんもです。深呼吸でもしてリラックスしてください。少し不可思議な感覚に捉われますが、我慢をしてください」

と言い、更にいきなりショックを与えないよう、猶予を与える。

「皆さん、よろしいですか? カウントダウンを行います。5、4、3、2、1、ゼロ!」

リオネルがゼロ!と告げたのと同時に、周囲の景色が一瞬にして変わり、

執務室に居た全員が、中庭の芝生の上に立っていたのである。
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