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第546話「私の推すリオネル・ロートレック君をよろしく頼むとな」
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エミリアが大絶叫するのも無理はない。
彼女が所属登録証をかざし、魔導精算機に示された討伐データの内容は凄まじく、
それに伴う討伐報奨金の額は『とんでもない数字』だったからだ。
一方のリオネルはいとえば、飄々としていた。
昔と違い、かさばる現金の支払いではなく、所属登録証へ記録し、入金。
そのままプールしておけるから、ありがたいと、のんびり考えていた。
「どうでしょう? エミリアさん」
リオネルがしれっと尋ねると、エミリアの顔色はショックで完全に変わっていた。
討伐の実績も素晴らしいものだが、問題は支払う討伐報奨金である。
「ど、ど、どうでしょう?じゃないですよ、リオネル様っ!!! それなりにって、なんですかっ!!!」
「ええっと……」
「た、確か!! リ、リオネル様が迷宮へ入る前はレベルが24!! それが今や倍以上の50じゃないですかっ!」
「レベル50……はあ、まあ、そうみたいですね」
「そうみたいですねじゃ、ありません!! そ、そして!! こ、この物凄い金額!! さ、さすがにわ、私だけでは!! しょ、処理しきれません!! 上司の承認が必要です!!」
「そうですか。まあ、魔物の討伐数は、確かに多いかもしれませんね。迷宮へ入ってから、地道にコツコツ倒しましたから」
「な、何、言ってるんですか!! ぜんぜんっ!! 地道にコツコツじゃあ、ありませんっ!! 急いで直属の上司を!! い、いえ! ギルドマスターを呼んで来ますねっ!! ちょっと待っててくださいっ!!」
大きく噛みながら、エミリアはそう言うと、バタバタと慌ただしく、
特別応接室を出て行ってしまった。
おおごとになりそうかな?
……仕方ないと思いながら、リオネルは待つ事にした。
この間に、妖精ピクシーのジャンを腕輪から出しておく。
地上への移動中、もしもはぐれたらとか、危険に巻き込まれないよう、
腕輪の中に待機して貰っていたのだ。
当然、常人にはジャンの姿が見えないような仕様であり、会話は念話である。
『ふ~。リオネル様、やっとおいらを外へ出してくれたね!』
『ああ、これからはジャンにもガンガン働いて貰うよ』
『うん! おいらに任せといて! で、これから、どうするの?』
『ああ、皆へ事前に伝えていた通りさ。フォルミーカへ3日間滞在し、用事を済ませてから、その後はイェレミアスさんとともにアールヴ族の国イエーラへ行く。イエーラの都フェフ正門前でティエラ様と待ち合わせだよ』
『その後は、現ソウェルのヒルデガルド・エテラヴオリに会うんだよね?』
『ああ、イェレミアスとさんと一緒に、ヒルデガルドさんに会う。いくらイェレミアスさんが一緒だといっても、いきなり訪問は、よろしくないから、イェレミアスさんから魔法鳩便を出して貰い、事前にスケジュール調整を行って貰うよ』
『了解! な~んかさ、おいら、ここまでの話を聞く限り、ヒルデガルドは高飛車なわがまま娘っていうイメージしか湧かないわ』
『う~ん、どうだろう? まあとりあえず、彼女に会ってみてから考えるよ』
そんな会話をしているうち、まだ興奮状態のエミリアに連れられ……
彼女の直属の上司のサブマスターが、
そしてフォルミーカ支部のギルドマスター、アウグスト・ブラードと、
秘書のイクセル・ベックが現れたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
途中から来た一行は、リオネルとあいさつを交わした。
そして、再度の討伐内容の確認を求めたのは、
エミリアの上司にあたるサブマスターである。
「エミリア、もう1度 、リオネルさんの討伐内容の確認をしてみたまえ。私とギルドマスターも確認をさせて貰う」
「はっ、はい! かしこまりました! サブマスター!」
直属の上司から命じられ、エミリアは慌てて、所属登録証を魔導精算機にかざした。
ぴぴぴぴ!
と音がし、魔導精算機の水晶部分に、
改めてリオネルの討伐データが浮かび上がった。
文字、数字が混在した討伐データをまじまじと見て、
「ああ!」
「おお!」
「ま、まさか!」
「これは!」
エミリア、上司のサブマスター、秘書のイクセル、
そしてギルドマスターのアウグストは、驚きの声を発した。
その驚きの度合いがやや抑えめなのは、
前もって、エミリアから報告が伝わっているからだろう。
またエミリアの報告内容が正しいのも間違いはないようだ。
やはり、そうなのかという納得の感情も、こもっていた。
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
しばし、沈黙が部屋に満ちた。
最初に口を開いたのは、フォルミーカ支部の長たるギルドマスターのアウグストだ。
「リオネル君」
「はい」
「エミリアから報告を聞いた……さすがに最下層地下150階まで行くと、出現する魔物も凄まじいな」
「はい、まあ」
「迷宮では最強のドラゴン、巨人族を数多倒し、ゴーレム、オーガ、オーク、不死者などなど、迷宮中の魔物を何でもござれだ。それも、各々がとんでもない討伐数だね、本当に素晴らしいよ」
「恐れ入ります。ギルドマスターにお褒め頂き、光栄です」
「うむ、依頼が完遂出来なかったのは残念だが、今回の討伐報奨金総額は金貨1,300万枚を楽々と超える。早速、所属登録証へ振込手続きをしておくが、余裕で一生遊んで暮らせる金額だ」
リオネルは笑顔で頷く。
金貨1,300万枚と聞いて、素直に嬉しい。
だが、ティエラの強権発動により、イェレミアスからゲットした契約金、
金貨1億枚には遠く及ばない。
なので、リオネルは冷静でいられた。
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
「うむ、そして、これから報告、申請をした後に、ワレバットから総ギルドマスターのご返事を頂き、正式決定するのだが……ここまで勇者級の実績を残せば、リオネル君、君はランクSとなるのが確定だろう」
ランクアップを告げるアウグストの言葉を聞き、さすがにリオネルは驚く。
「え? 俺が? 依頼を完遂していないのに、ランクS……ですか?」
「ああ、この実績を見たら、反対する者などは皆無だろう。文句なしにランクSさ。この所属登録証に内蔵された討伐確認装置は嘘をつかないからな。ただただ、事実のみを示している」
「ただただ、事実のみ……」
「うむ、改めて納得したよ、リオネル・ロートレック君、君の底知れない実力にね」
「ありがとうございます」
「それに、ワレバッドの総ギルドマスター、ソヴァール王国貴族でもある、ローランド・コルドウェル伯爵からもご指示を頂いているからな」
「え? ローランド様から?」
「ああ、リオネル君が迷宮へ出発してからすぐ、魔法鳩便で私宛にご連絡を頂いた。アウグスト・ブラード君、私の推すリオネル・ロートレック君をよろしく頼むとな。実績を上げたら、すぐ私へ連絡をくれ。ランクアップを考える。わざわざ、そうおっしゃって来たのだよ」
慇懃無礼かつ、冷徹な態度を変えなかったアウグストが、丁寧な対応をするのは、
今回の討伐内容だけが原因ではなかった。
あのローランドから、書状を受け取り、
しっかりと上司命令も受けていたからである。
彼女が所属登録証をかざし、魔導精算機に示された討伐データの内容は凄まじく、
それに伴う討伐報奨金の額は『とんでもない数字』だったからだ。
一方のリオネルはいとえば、飄々としていた。
昔と違い、かさばる現金の支払いではなく、所属登録証へ記録し、入金。
そのままプールしておけるから、ありがたいと、のんびり考えていた。
「どうでしょう? エミリアさん」
リオネルがしれっと尋ねると、エミリアの顔色はショックで完全に変わっていた。
討伐の実績も素晴らしいものだが、問題は支払う討伐報奨金である。
「ど、ど、どうでしょう?じゃないですよ、リオネル様っ!!! それなりにって、なんですかっ!!!」
「ええっと……」
「た、確か!! リ、リオネル様が迷宮へ入る前はレベルが24!! それが今や倍以上の50じゃないですかっ!」
「レベル50……はあ、まあ、そうみたいですね」
「そうみたいですねじゃ、ありません!! そ、そして!! こ、この物凄い金額!! さ、さすがにわ、私だけでは!! しょ、処理しきれません!! 上司の承認が必要です!!」
「そうですか。まあ、魔物の討伐数は、確かに多いかもしれませんね。迷宮へ入ってから、地道にコツコツ倒しましたから」
「な、何、言ってるんですか!! ぜんぜんっ!! 地道にコツコツじゃあ、ありませんっ!! 急いで直属の上司を!! い、いえ! ギルドマスターを呼んで来ますねっ!! ちょっと待っててくださいっ!!」
大きく噛みながら、エミリアはそう言うと、バタバタと慌ただしく、
特別応接室を出て行ってしまった。
おおごとになりそうかな?
……仕方ないと思いながら、リオネルは待つ事にした。
この間に、妖精ピクシーのジャンを腕輪から出しておく。
地上への移動中、もしもはぐれたらとか、危険に巻き込まれないよう、
腕輪の中に待機して貰っていたのだ。
当然、常人にはジャンの姿が見えないような仕様であり、会話は念話である。
『ふ~。リオネル様、やっとおいらを外へ出してくれたね!』
『ああ、これからはジャンにもガンガン働いて貰うよ』
『うん! おいらに任せといて! で、これから、どうするの?』
『ああ、皆へ事前に伝えていた通りさ。フォルミーカへ3日間滞在し、用事を済ませてから、その後はイェレミアスさんとともにアールヴ族の国イエーラへ行く。イエーラの都フェフ正門前でティエラ様と待ち合わせだよ』
『その後は、現ソウェルのヒルデガルド・エテラヴオリに会うんだよね?』
『ああ、イェレミアスとさんと一緒に、ヒルデガルドさんに会う。いくらイェレミアスさんが一緒だといっても、いきなり訪問は、よろしくないから、イェレミアスさんから魔法鳩便を出して貰い、事前にスケジュール調整を行って貰うよ』
『了解! な~んかさ、おいら、ここまでの話を聞く限り、ヒルデガルドは高飛車なわがまま娘っていうイメージしか湧かないわ』
『う~ん、どうだろう? まあとりあえず、彼女に会ってみてから考えるよ』
そんな会話をしているうち、まだ興奮状態のエミリアに連れられ……
彼女の直属の上司のサブマスターが、
そしてフォルミーカ支部のギルドマスター、アウグスト・ブラードと、
秘書のイクセル・ベックが現れたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
途中から来た一行は、リオネルとあいさつを交わした。
そして、再度の討伐内容の確認を求めたのは、
エミリアの上司にあたるサブマスターである。
「エミリア、もう1度 、リオネルさんの討伐内容の確認をしてみたまえ。私とギルドマスターも確認をさせて貰う」
「はっ、はい! かしこまりました! サブマスター!」
直属の上司から命じられ、エミリアは慌てて、所属登録証を魔導精算機にかざした。
ぴぴぴぴ!
と音がし、魔導精算機の水晶部分に、
改めてリオネルの討伐データが浮かび上がった。
文字、数字が混在した討伐データをまじまじと見て、
「ああ!」
「おお!」
「ま、まさか!」
「これは!」
エミリア、上司のサブマスター、秘書のイクセル、
そしてギルドマスターのアウグストは、驚きの声を発した。
その驚きの度合いがやや抑えめなのは、
前もって、エミリアから報告が伝わっているからだろう。
またエミリアの報告内容が正しいのも間違いはないようだ。
やはり、そうなのかという納得の感情も、こもっていた。
「………………………………」
「………………………………」
「………………………………」
しばし、沈黙が部屋に満ちた。
最初に口を開いたのは、フォルミーカ支部の長たるギルドマスターのアウグストだ。
「リオネル君」
「はい」
「エミリアから報告を聞いた……さすがに最下層地下150階まで行くと、出現する魔物も凄まじいな」
「はい、まあ」
「迷宮では最強のドラゴン、巨人族を数多倒し、ゴーレム、オーガ、オーク、不死者などなど、迷宮中の魔物を何でもござれだ。それも、各々がとんでもない討伐数だね、本当に素晴らしいよ」
「恐れ入ります。ギルドマスターにお褒め頂き、光栄です」
「うむ、依頼が完遂出来なかったのは残念だが、今回の討伐報奨金総額は金貨1,300万枚を楽々と超える。早速、所属登録証へ振込手続きをしておくが、余裕で一生遊んで暮らせる金額だ」
リオネルは笑顔で頷く。
金貨1,300万枚と聞いて、素直に嬉しい。
だが、ティエラの強権発動により、イェレミアスからゲットした契約金、
金貨1億枚には遠く及ばない。
なので、リオネルは冷静でいられた。
「ありがとうございます。とても嬉しいです」
「うむ、そして、これから報告、申請をした後に、ワレバットから総ギルドマスターのご返事を頂き、正式決定するのだが……ここまで勇者級の実績を残せば、リオネル君、君はランクSとなるのが確定だろう」
ランクアップを告げるアウグストの言葉を聞き、さすがにリオネルは驚く。
「え? 俺が? 依頼を完遂していないのに、ランクS……ですか?」
「ああ、この実績を見たら、反対する者などは皆無だろう。文句なしにランクSさ。この所属登録証に内蔵された討伐確認装置は嘘をつかないからな。ただただ、事実のみを示している」
「ただただ、事実のみ……」
「うむ、改めて納得したよ、リオネル・ロートレック君、君の底知れない実力にね」
「ありがとうございます」
「それに、ワレバッドの総ギルドマスター、ソヴァール王国貴族でもある、ローランド・コルドウェル伯爵からもご指示を頂いているからな」
「え? ローランド様から?」
「ああ、リオネル君が迷宮へ出発してからすぐ、魔法鳩便で私宛にご連絡を頂いた。アウグスト・ブラード君、私の推すリオネル・ロートレック君をよろしく頼むとな。実績を上げたら、すぐ私へ連絡をくれ。ランクアップを考える。わざわざ、そうおっしゃって来たのだよ」
慇懃無礼かつ、冷徹な態度を変えなかったアウグストが、丁寧な対応をするのは、
今回の討伐内容だけが原因ではなかった。
あのローランドから、書状を受け取り、
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