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第531話「ああ、当然だ。代金はちゃんと払うよ」
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皆様、あけましておめでとうございます!
いつもご愛読応援いただきありがとうございます。
本年も宜しくお願い致します。
新連載を開始しました!
『冒険者クラン新人選択希望会議でドラフト1位指名された無名最底辺の俺が、最強への道を歩みだす話!』
本日1/1は、3話更新致します。
ぜひぜひ読んでみてください!
こちらも応援を宜しくお願い致します。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
茶をすすった後、イェレミアスの話は更に続く。
リオネルも引き続き、無言で聞いている。
「私が眠っていた……機能停止していたゴーレムを修理し、復活させた理由は明確だ。当然、リオネル君には分かるよな?」
尋ねるイェレミアスの口調は完全に柔らかく、フレンドリーになっていた。
柔らかな笑みも浮かべており、リオネルに対する警戒心はだいぶ薄れたようである。
お茶と焼き菓子のプレゼントも大きかったかもしれない。
質問に対して、こちらも笑顔のリオネルは即答する。
「はい、分かります。労働力の確保……ですよね?」
「うむ、ご名答。その通りだ、リオネル君。君ほどの魔法使いなら十分、理解しているだろうが、魔法はイコールなんでも叶う万能な奇跡ではない」
「です!」
「まあ、ゴーレムを復活させたのは魔法だから、全く関係ないとは言わないが、ぱぱぱと手品のように魔法で楽に片づけられるわけではないからな」
「はい」
「うむ、私はいつも自分にも言い聞かせている。魔法は決して神の力のように全知全能ではないと。何でもかんでも、全ての願いを叶えるものではないのだ」
「はい、イェレミアスさんのおっしゃる事は、大いに納得します。俺もその通りだと思いますね」
「うむ、荒れ果てた広大な古代遺跡の片付けなど、物理的に大量で、そして、細かく注意を要する作業なのだ。このような作業に、魔法は不向きだ。どうしても地道で丁寧なマンパワーが必要だからな」
「ええ、地道で丁寧な作業なら尚更ですね」
「うむ、そうだな。だいぶ回り道をしたが……話を戻そう」
「はい、お願いします」
「うむ、私はまず数十体のゴーレムを復活させ、遺跡の破損にだけは注意しながら、荒れた古代都市の修理と復元、そして復興に努めた」
「古代都市の修理と復元、そして復興ですか」
「ああ、まあ、数十体のゴーレムといっても、これだけ広い古代都市だ。一気に短時間では到底無理だった。最初はワンフロアの片付けレベルだったよ」
「ええ。千里の道も一歩よりって感じですね」
「うむ、リオネル君、そのことわざ通りだ。ゴーレム達に私が細かな指示を出し、丁寧に片づけをさせながら、壊れたものを直し、復元して行った」
ここで、イェレミアスは軽く息を吐き、話を続ける。
「うむ、私は更に、機能を停止していた多くのゴーレム達を修理し、復活させた。片付けの手が増えれば、当然ながら作業はよりはかどるからな。その繰り返し繰り返しで、まずはある程度の数のフロアを片付けると、次には何とか、管理フロアへ入り、都市機能を徐々に復活させた」
ざっくりと簡単に古代都市復活の経緯を告げたイェレミアス。
そのシーンを想像、思い浮かべながら、リオネルは言う。
「成る程。やはりひたすら地道な作業になりますね」
「だろう? まあ、私に時間はたっぷりあったから、更にこつこつと繰り返しを続けてな、最終的には、この都市全ての機能を復活させたよ」
リオネルへ同意を求め、笑顔で誇らしげに言うイェレミアス。
完全にリオネルに気を許しているようだ。
「それは相当大変でしたね。でも……」
対して、同意したリオネルだが、少し口ごもった。
「でも? 何だい? リオネル君」
「はい、ひどく地道で大変でも、俺は全く苦になりません。性に合っているというか、むしろ作業が楽しくなって来るかなと」
「おお、リオネル君もそうか! 私も確かにそうだったよ。分かるかい?」
「はい! もしも自分がイェレミアスさんだったら、面白く夢中になって、ガンガン都市機能を復活させたと思います」
「はははは! そうか! 本当に気が合うな、リオネル君!」
「ですね! まあ内容にもよりますし、出来る範囲内なのですが、もしも現状で何か俺にお手伝い出来る事があれば、お気軽に遠慮なくおっしゃってください」
遂にイェレミアスに気に入られたリオネル。
主ならきっとうまくやる。
ケルベロスの『予言』は見事当たったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
会話がひと通り、終わり……
ここでイェレミアスはボトヴィッドからの手紙に目を通した。
懐かしそうに、目を細める。
ここでリオネルは、ひとつ提案をする事にした。
相手次第ではあるが、あらかじめリオネルが決めていた事である。
「あの、イェレミアスさん」
「何だい、リオネル君」
「はい、宜しければ、なんですが」
「うむ」
「ボトヴィッドさんからお聞きしましたが……ボトヴィッドさん、こちらへ様々な生活物資等々を運んでいたそうですね?」
「ああ、そうだな。さすがにこの屋敷まで案内はしなかったが……ボトヴィッドには謝礼を支払い、迷宮の途中まで、生活物資を有償で運んで貰っていたぞ……ゴーレムを彼の下へ赴かせ、待ち合わせして引き取らせていたよ! 懐かしいな!」
「それで、ボトヴィッドさんが冒険者を引退する際、お世話になった感謝の気持ちを込め、ゴーレムのアートス君を送ったのですね」
「ああ、その通りだ。リオネル君が機能停止していたアートスをレストアしてくれたのだな」
「はい、という事で、話を戻しますと、今後俺が、こちらへ伺えるかどうか分かりませんが、生活物資等の余分がありますから、有償で少しお譲りしましょうか?」
リオネルの提案を聞き、イェレミアスは驚いた。
「な、何い!? 有償で生活物資等の余分だとお!? 私へ譲ってくれるのか?」
「はい、先ほどのお茶は無償で差し上げますけど、こちらは申し訳ありませんが、有償でお譲りします」
「ああ、当然だ。商取引として、代金はちゃんと払うよ」
「了解です。生活物資等々は、空間魔法で仕舞ってあります。もし俺を倉庫まで案内して頂ければ、その場で必要な物資をイェレミアスさんに御覧になって頂き、気に入って頂けたら即、納品しますよ。いかがでしょうか?」
「おお、助かる! 大歓迎だ! あとで倉庫へ案内しよう!」
思いがけないリオネルの提案を聞き、
イェレミアスは嬉しそうににっこりと笑ったのである。
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茶をすすった後、イェレミアスの話は更に続く。
リオネルも引き続き、無言で聞いている。
「私が眠っていた……機能停止していたゴーレムを修理し、復活させた理由は明確だ。当然、リオネル君には分かるよな?」
尋ねるイェレミアスの口調は完全に柔らかく、フレンドリーになっていた。
柔らかな笑みも浮かべており、リオネルに対する警戒心はだいぶ薄れたようである。
お茶と焼き菓子のプレゼントも大きかったかもしれない。
質問に対して、こちらも笑顔のリオネルは即答する。
「はい、分かります。労働力の確保……ですよね?」
「うむ、ご名答。その通りだ、リオネル君。君ほどの魔法使いなら十分、理解しているだろうが、魔法はイコールなんでも叶う万能な奇跡ではない」
「です!」
「まあ、ゴーレムを復活させたのは魔法だから、全く関係ないとは言わないが、ぱぱぱと手品のように魔法で楽に片づけられるわけではないからな」
「はい」
「うむ、私はいつも自分にも言い聞かせている。魔法は決して神の力のように全知全能ではないと。何でもかんでも、全ての願いを叶えるものではないのだ」
「はい、イェレミアスさんのおっしゃる事は、大いに納得します。俺もその通りだと思いますね」
「うむ、荒れ果てた広大な古代遺跡の片付けなど、物理的に大量で、そして、細かく注意を要する作業なのだ。このような作業に、魔法は不向きだ。どうしても地道で丁寧なマンパワーが必要だからな」
「ええ、地道で丁寧な作業なら尚更ですね」
「うむ、そうだな。だいぶ回り道をしたが……話を戻そう」
「はい、お願いします」
「うむ、私はまず数十体のゴーレムを復活させ、遺跡の破損にだけは注意しながら、荒れた古代都市の修理と復元、そして復興に努めた」
「古代都市の修理と復元、そして復興ですか」
「ああ、まあ、数十体のゴーレムといっても、これだけ広い古代都市だ。一気に短時間では到底無理だった。最初はワンフロアの片付けレベルだったよ」
「ええ。千里の道も一歩よりって感じですね」
「うむ、リオネル君、そのことわざ通りだ。ゴーレム達に私が細かな指示を出し、丁寧に片づけをさせながら、壊れたものを直し、復元して行った」
ここで、イェレミアスは軽く息を吐き、話を続ける。
「うむ、私は更に、機能を停止していた多くのゴーレム達を修理し、復活させた。片付けの手が増えれば、当然ながら作業はよりはかどるからな。その繰り返し繰り返しで、まずはある程度の数のフロアを片付けると、次には何とか、管理フロアへ入り、都市機能を徐々に復活させた」
ざっくりと簡単に古代都市復活の経緯を告げたイェレミアス。
そのシーンを想像、思い浮かべながら、リオネルは言う。
「成る程。やはりひたすら地道な作業になりますね」
「だろう? まあ、私に時間はたっぷりあったから、更にこつこつと繰り返しを続けてな、最終的には、この都市全ての機能を復活させたよ」
リオネルへ同意を求め、笑顔で誇らしげに言うイェレミアス。
完全にリオネルに気を許しているようだ。
「それは相当大変でしたね。でも……」
対して、同意したリオネルだが、少し口ごもった。
「でも? 何だい? リオネル君」
「はい、ひどく地道で大変でも、俺は全く苦になりません。性に合っているというか、むしろ作業が楽しくなって来るかなと」
「おお、リオネル君もそうか! 私も確かにそうだったよ。分かるかい?」
「はい! もしも自分がイェレミアスさんだったら、面白く夢中になって、ガンガン都市機能を復活させたと思います」
「はははは! そうか! 本当に気が合うな、リオネル君!」
「ですね! まあ内容にもよりますし、出来る範囲内なのですが、もしも現状で何か俺にお手伝い出来る事があれば、お気軽に遠慮なくおっしゃってください」
遂にイェレミアスに気に入られたリオネル。
主ならきっとうまくやる。
ケルベロスの『予言』は見事当たったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
会話がひと通り、終わり……
ここでイェレミアスはボトヴィッドからの手紙に目を通した。
懐かしそうに、目を細める。
ここでリオネルは、ひとつ提案をする事にした。
相手次第ではあるが、あらかじめリオネルが決めていた事である。
「あの、イェレミアスさん」
「何だい、リオネル君」
「はい、宜しければ、なんですが」
「うむ」
「ボトヴィッドさんからお聞きしましたが……ボトヴィッドさん、こちらへ様々な生活物資等々を運んでいたそうですね?」
「ああ、そうだな。さすがにこの屋敷まで案内はしなかったが……ボトヴィッドには謝礼を支払い、迷宮の途中まで、生活物資を有償で運んで貰っていたぞ……ゴーレムを彼の下へ赴かせ、待ち合わせして引き取らせていたよ! 懐かしいな!」
「それで、ボトヴィッドさんが冒険者を引退する際、お世話になった感謝の気持ちを込め、ゴーレムのアートス君を送ったのですね」
「ああ、その通りだ。リオネル君が機能停止していたアートスをレストアしてくれたのだな」
「はい、という事で、話を戻しますと、今後俺が、こちらへ伺えるかどうか分かりませんが、生活物資等の余分がありますから、有償で少しお譲りしましょうか?」
リオネルの提案を聞き、イェレミアスは驚いた。
「な、何い!? 有償で生活物資等の余分だとお!? 私へ譲ってくれるのか?」
「はい、先ほどのお茶は無償で差し上げますけど、こちらは申し訳ありませんが、有償でお譲りします」
「ああ、当然だ。商取引として、代金はちゃんと払うよ」
「了解です。生活物資等々は、空間魔法で仕舞ってあります。もし俺を倉庫まで案内して頂ければ、その場で必要な物資をイェレミアスさんに御覧になって頂き、気に入って頂けたら即、納品しますよ。いかがでしょうか?」
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※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
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