上 下
517 / 680

第517話「基本的に攻撃は最大の防御で行く!」

しおりを挟む
……翌朝も、リオネルは早めに起床した。

手早く身支度をし、魔獣オルトロス以下の仲間達と共に食事をし、
キャンプをたたみ、出発する事に。

立てた本日の目標は、残っている地下146階層へ降り、

その146階層を、更に147階層を抜け、148階層クリアまで、まずは3階層クリアを目指す。

「まずは」というのは、「所詮、予定は未定だ」という、
ぶれないリオネルのポリシーから来る。

これまで学び得た知識、重ねて来た経験則に基づく事実と推測、及び、
冒険者ギルドの地図、古文書、資料等々で得た情報こそある。

それゆえある程度のシミュレーションは可能なものの、
この先、未知の領域へ足を踏み入れるのに、何が起こるのかなんて、
100%完璧に分からないからだ。

探索と確認は直近の146階層で、たった1階層のみのクリアで終わるかもしれないし、何の妨害もなく順調ならば、一気に予定以上のフロアをクリアし、
地下150階層まで到達出来るかもしれない。

ケースバイケース、臨機応変に対応しようと、リオネルは考えている。

基本的に探索のペース、パターンは変えず、無理はせず、いつもの通りで。

リオネルはシーフ職スキルを駆使し、
『隠形』『忍び足』で、すっ、すっ、すっ、と空気の如く進む。

もしも障害物があれば、転移、飛翔の失われた魔法、

ジャンプ、幅跳び、高所からの落下、木登りし樹上にての軽業など、

確信を得た超人的な身体能力を行使し、楽々と進んで行く。

索敵――魔力感知を最大範囲で張り巡らせ、外敵への警戒も怠らない。

さてさて!
地下121階層から戦って来て、ドラゴン族、巨人族の対処にも慣れた。
油断はしないが、両種族の動きは完全に見切っていた。
様々な手立てを使い、あっさりと屠って行く。

120階層より上層に出現した敵なら、尚更に討伐難度は低い。

このフォルミーカ迷宮に現れる敵は、地上の敵とは同等以上。
もはやリオネルは地上最強レベルに到達している。

今のリオネルにとって、強敵となるのは未対戦たる高位の悪魔族、
もしくは界王級の最高位精霊であろう。

そんなリオネルでも、ためらう修行はある。

それは耐性、耐久力の修行、及び実証である。

特に致命的な破壊力を持つ属性攻撃、または魔法攻撃に対する、
耐性、耐久力の実証は勇気が必要だ。

例えば、リオネルは火界王パイモンから、火の加護だけではなく、
『爆炎』『火炎全無効』という極大魔法をも授けられた。

攻撃魔法、攻撃的なスキルはほとんど問題はない。
敵に向かって容赦なく、行使すれば効能効果の確認は可能だ。

しかし、防御魔法、防御的なスキルの実証は違う。
例えば、パイモンお墨付きの『爆炎』をも退けるという『火炎全無効』を、
無防備の状態で身をもって確認するのは、大いにためらわれる。

もしも、万が一、『火炎全無効』が作用しなければ、リオネルの心身は一瞬にして、
爆炎の威力により、消滅してしまうに違いないから。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

リオネルは習得した最高位の防御魔法、破邪霊鎧はじゃれいがいの実証を、
ようやく終えたばかりだ。

リオネルがまだ遭遇し、戦った事がない行為の存在など、
相手のレベルにより強弱はあるから、100%断言は出来ないが、
毒、瘴気、麻痺、混乱、睡眠、石化、呪い等は全て無効だ。

これらの実証もリオネルが、数多の戦いで身をもって証明したものだ。
簡単に証明とは言うが、無防備で受けるのは大いなる勇気があったのは当然の事である。

そもそも、リオネルは相手の攻撃を受けないようにする事をまず考える。

「いろいろな手立てを講じ、防ぐ事」を優先する。

例えば、パイモンから、ファイアドレイクと戦うように試された際には、
究極の防御魔法、破邪霊鎧を発動。加えて、複合属性精霊魔法も発動!

身にまとう聖なる風へ、超低温の冷気を加え、炎を寄せつけぬ強固な盾として、
ファイアドレイクの吐く凄まじい火の息を、完全に防いだのだ。

またリオネルは、「攻撃は最大の防御だ!」というスタンスも徹底していた。

身体能力の俊敏さも、魔法行使の迅速さも敵よりも遥かに勝るリオネルは、
先手必勝とばかりに、敵へ攻撃する時間を全く与えず、絶対的なアドバンテージを持ち、戦っていたのである。

う~ん。
火の息大幅パワーダウン攻撃は、ファイアドレイクへお願いして試してみたけど……
「ちょっと、熱いな」と感じるくらいで、何とか大丈夫だった。

そもそも人間の肉体は魔物に比べて、とても脆弱。
数千、数万度の高熱を発するMAXレベルの炎を受けるのは、
さすがに勇気が出ないや……

苦笑したリオネルだが、考え直した。
破邪霊鎧を始め、『火炎全無効』などは、『保険』のようなものだと。

まずは敵の、状況の情報収集と分析!
敵を知り己を知れば百戦危うからずと、聞いた事がある。

更に!
戦う際は、まともに攻撃を浴びないよう、防ぐ!

それ以前に先手必勝!!

基本的に攻撃は最大の防御で行く!

改めて気を引き締めたリオネルは、地下146階層の探索を続けたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

地下アイドルの変わった罰ゲーム

氷室ゆうり
恋愛
さてさて、今回は入れ替わりモノを作ってみましたので投稿します。若干アイドルの子がかわいそうな気もしますが、別にバットエンドって程でもないので、そこはご安心ください。 周りの面々もなかなかいいひとみたいですし。ああ、r18なのでご注意を。 それでは!

(完)なにも死ぬことないでしょう?

青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。 悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。 若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。 『亭主、元気で留守がいい』ということを。 だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。 ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。 昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。

【R-18】何度だって君の所に行くよ【BL完結済】

今野ひなた
BL
美大四年生の黒川肇は親友の緑谷時乃が相手の淫夢に悩まされていた。ある日、時乃と居酒屋で飲んでいると彼から「過去に戻れる」と言う時計を譲られるが、彼はその直後、時乃は自殺してしまう。遺書には「ずっと好きだった」と時乃の本心が書かれていた。ショックで精神を病んでしまった肇は「時乃が自殺する直前に戻りたい」と半信半疑で時計に願う。そうして気が付けば、大学一年の時まで時間が戻っていた。時乃には自殺してほしくない、でも自分は相応しくない。肇は他に良い人がいると紹介し、交際寸前まで持ち込ませるが、ひょんなことから時乃と関係を持ってしまい…!? 公募落ち供養なので完結保障(全十五話)です。しょっぱなからエロ(エロシーンは★マークがついています) 小説家になろうさんでも公開中。

人生の『皮』る服(少女たちの皮を操って身体も心も支配する話)

ドライパイン
大衆娯楽
んごんご様主催「DARK SKINSUIT合同」にて寄稿させて頂きました作品です。 挿絵もございますため、よろしければPixiv版でもご一読いただけますと幸いです。

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

幼なじみに毎晩寝込みを襲われています

西 美月
BL
恭介の特技は『一度寝ると全然起きない』こと、 『どこでも眠れる』こと。 幼なじみとルームシェアを始めて1ヶ月。 ある日目覚めるとお尻の穴が痛くて──!? ♡♡小柄美系攻×平凡受♡♡ ▷三人称表記です ▷過激表現ご注意下さい

忍びの青年は苛烈な性拷問に喘ぎ鳴く

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。

ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの? ……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。 彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ? 婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。 お幸せに、婚約者様。 私も私で、幸せになりますので。

処理中です...