上 下
499 / 689

第499話「ドラゴンどもの生命反応は消えてはいない。 殺されてはいない」

しおりを挟む
「うんうん」と納得したように頷くリオネルは、再び探索を開始した。

アールヴの魔法使い、イェレミアス・エテラヴオリとの接触が成功。

自動人形オートマタの如く、作動し、会話が可能な高性能ゴーレムを使役し、
地下141階層から現れる『庭園』において、食料、資材を収集。

謎めいた古代遺跡を、倉庫や休憩所?等に利用していると思われるイェレミアス。
……そのイェレミアスと、地下150階層で会う約束をし、
ボトヴィッドから託された手紙を届ける目途はついた。

それゆえ、リオネルは改めて、いくつかの課題を立てる事が出来たのである。

基本ベースとなる修行、ドラゴン族、巨人族などの魔物を討伐し、
魔法、武技の熟練度を上げつつ……
スキルと修行で得た、超が付く人間離れした身体能力を活かし、
あらゆる地形をクリアして行くのは変わらない。

まずは古代遺跡の謎の解明……
宝物の出現等もあるが、特に気になるのはストーンサークルの機能の解明だ。

リオネルは、ストーンサークルのマークポイントを起点にして、
隠された方法で起動させれば、迷宮内の様々な場所、秘密の場所へ行けるのでは? 
と推測していた。

何か機会があれば、もしくは、更に解明が出来れば、
ぜひ試してみたいと思う。

いつものように、リオネルはケルベルスの弟魔獣オルトロス、
ミニマム竜に擬態したフロストドレイク、魔獣アスプ20体を先行させ、
少し離れた場所を軽快に走って行く。

30分弱ほど走り、リオネルの索敵……魔力感知に反応があった。

これって……!?

捉えた相手の……複数の魔力反応を感じ、リオネルは驚いた。

複数のうち、魔物の反応は……ノーマルタイプのドラゴンが3体である。

そしてリオネルが驚いた原因、ドラゴンの近くから感じた別の魔力反応は、
間違いなく、先ほど出会ったモノ。

この魔力反応は……イェレミアスが使役するゴーレム。
果実を収穫していた、自動人形の如き少年少女ゴーレム4体であった。

これって……さっき会ったのと全く同じゴーレムか、それとも別の同型か?

もしも前者ならば、リオネルの推測が当たっている可能性もある。

ゴーレム達が階段を降りた気配は感じられず、
リオネルを追い越した様子もないからだ。

もしかしたら、この先のどこかに、ストーンサークル付きの、
同じタイプの古代遺跡があるのかもしれない。

そして地下123階層で出会ったーレムが、
ストーンサークルのマークポイントを起点にして、
隠された方法で起動させ、俺の居る階下の地下124階層に現れた……
……と考えれば辻褄が合う。

まあ、良い。

どちらにしても、ドラゴンどもがゴーレムを破壊する前に、駆けつけよう。

リオネルは駆けて、移動しながら、オルトロス以下、仲間へ指示を入れたのである

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

リオネルが仲間へ入れた指示とは……

『お前達! ドラゴンどもとは絶対に戦うな! 牽制して、遠回しにし、距離を取るんだ!』

という指示。

下手に仲間を、現場に突入させたら、乱戦となり、
イェレミアスのゴーレムが破壊されると考えたからだ。

オルトロスの咆哮でドラゴンども麻痺させるという手も考えたが、
それは最後の手段。

咆哮が通用しない可能性もある。

ちなみに、転移魔法を使わないのは、現場の状況が充分に分からないからだ。

地形に完全に慣れたリオネルの俊足は、すぐに現場へ到着した。

木陰からリオネルは、様子をうかがう。

仲間達も指示を守り、距離を取り、控えていた。

果たして!

ノーマルタイプのドラゴン3体と対峙する
自動人形の如き少年少女ゴーレム4体は、
リーダーの少年ゴーレム以下の風体、装備している魔法杖から、
先ほど出会ったものだと分かる。

決定的なのは、リーダーの少年ゴーレムの右足にある銀貨大の『へこみ』

1km先を見通す『大鷲の視線』を習得したリオネルは、
その『へこみ』をはっきりと確認していたのだ。

そう!
間違いなく、イェレミアスが使役するゴーレムである。

ゴーレム4体と、ドラゴンども3体の距離は約20m。

よし!
スキル『威圧』か、『フリーズハイ』で、ドラゴンどもを行動不能とするか!
ダメだったら、地の魔法『大地の束縛』だ!

行動不能の間に、ゴーレム達に撤収して貰おう。

リオネルがスキルを行使しようとした瞬間。

リーダーの少年ゴーレムがおもむろに魔法杖を抜き放ち、

ぼしゅ! ぼしゅ! ぼしゅ!

魔力の塊を発射した。

すると!

ゴーレム達へ襲いかかろうとしていたドラゴンどもは3体全て、
ぴくぴくと身体を震わせ、動かなくなってしまった。

ドラゴンどもの生命反応は消えてはいない。
殺されてはいない。

魔法杖には、麻痺の魔法か何かが込められていたに違いない。

動かなくなったドラゴンどもを見たリーダーの少年ゴーレムは手を挙げ合図。

ゴーレム4体は素早く、「さささっ」と走り、森の奥へ消えてしまったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神
ファンタジー
主人公『リデック・ゼルハイト』は子爵家の長男として産まれたが、検査によって『魔法適性が一切無い』と判明したため父親である当主の判断で孤児院に預けられた。 『魔法適性』とは読んで字のごとく魔法を扱う適性である。 魔力を持つ人間には差はあれど基本的にみんな生まれつき様々な属性の魔法適性が備わっている。 しかし例外というのはどの世界にも存在し、魔力を持つ人間の中にもごく稀に魔法適性が全くない状態で産まれてくる人も… そんな主人公、リデックが5歳になったある日…ふと前世の記憶を思い出し、魔法適性に関係の無い変化魔法に目をつける。 しかしその魔法は『魔物に変身する』というもので人々からはあまり好意的に思われていない魔法だった。 …はたして主人公の運命やいかに…

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

処理中です...