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第485話「ああ、自信を持て! ジャンは、しっかりと俺の役に立ってるよ!」

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リオネルが、ノーマルタイプドラゴンを倒し、死骸を収納の腕輪へ搬入しても、

『あ、あう、あううううう……』

……妖精ピクシーのジャンはまだ泣き続けていた。

リオネルにドラゴンから救って貰って嬉しいだけでなく、
彼にとっては大ショックな事が起きたからだ。

ドラゴンが現れた場所に、ジャンが見つけた、
アールヴの魔法使い、イェレミアスの魔力残滓が続いていたのである。

それがドラゴンの発する魔力でめちゃくちゃに荒らされた上、
リオネルの放った強力な魔法で、消し飛んでしまったのだ。

先に見つけたものよりは、はっきりしていたとはいえ、
残っていたイェレミアスの魔力残滓はもう消えてしまっているだろう。

ドラゴンに襲われた自分を守る為、リオネルは魔法を行使した。

それは仕方がない。
というか、絶体絶命の危機を救ってくれた、
自分の命を守ってくれたリオネルに深く感謝はしている。

否!
感謝してもしきれない。

長い間、魔法の宝箱に閉じ込められた自分を解放。

面倒をみてくれ、美味しいお菓子もくれる。
何か欲しいものがあれば、不満があれば、どんどん言ってくれと言う。

そして、命をも助けてくれた!

リオネルに一生ついて行こう!
懸命に尽くしたい!
そう思う。

悲しく情けなく許せないのは、ジャン自身の方だ。

あの時、自分さえ注意して上手く立ち回れば、事前にドラゴンを発見してさえいれば、イェレミアスの魔力残滓は消えず、痕跡をたどれたかもしれない。

そう思うと、ひどく悲しくやるせない……

『リオネル様! ご、ごめんなさあい! お、おいらがドジ踏んだばっかりに……う、ううう……』

大粒の涙を流し、泣きじゃくるジャンを見て、リオネルは言う。

『おいおい、泣くな、ジャン。お前は全然悪くない。いつも一生懸命、やってくれている』

『で、でも!』

『いやいや! 命が助かったのが、何よりも良かった。イェレミアスさんの行方より、そして! ボトヴィッドさんとの約束を果たすよりも、ジャン、お前の命が大事だ!』

リオネルの言う事は、心からの言葉だ。
伝わる波動でジャンには分かる。

『あ、あうう! リ、リオネル様ああ!』

そこへ、フロストドレイク、アスプ達が駆けつけて来た。
仲間の誰もが、ジャンがドラゴンに襲われ、リオネルが救った事を波動で知っていた。

『み、みんなあ!! 心配して来てくれたんだあ!! ううううう……』

感極まり、今度はうれし泣きするジャン。

『よし、適当な場所を探して、ちょっち休憩しようか。ジャンには焼き菓子と温かい紅茶を出してやるからな』

リオネルの優しい言葉を聞き、

『はいっ!』

元気を取り戻したジャンは、大きく頷いていたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

転移魔法で、全員と一緒に跳ぶ。

リオネルが休憩場所に選んだのは、高さが50mほどもある大きな岩山の上。

飛翔魔法で探索した時に、見つけておいた場所である。

広さは、小さな町の広場ほど。

岩山の上でも岩石がむきだしではなく、土が溜まり、草が生えていた。
生えている草がクッショッンとなり、座っても痛くはない。

そこに、リオネル、フロストドレイク、アスプ20体、そしてジャンが座っていた。

リオネルはフロストドレイク、アスプ20体へ肉塊を与え、ジャンには約束通り、
魔導水筒からカップへ温かい紅茶を注ぎ、焼き菓子を与えている。

リオネル自身も自分のカップへ注いだ紅茶を飲みながら、景色を眺める。

敵襲に関しては、『大鷲の目』で遠くまで視認が可能なのと、当然索敵、魔力感知も張り巡らせている。

相変わらず見える風景は変わらない。

天井まで100m以上もある巨大洞窟のような広い空間が広がっている。

その天井から、日光のような高魔力の暖かな明るい光がふりそそぎ、
さわやかな風が吹き込む。

地上は大木が「うっそう」と生い茂った深い密林が殆ど。

ところどころ、川に沼があり、峡谷のような岩場や荒涼な原野、砂漠も混在して見える。

複雑で不可思議な地下庭園という趣きである。

紅茶の香りを楽しんでいると、ジャンが話しかけて来る。

顔つきが暗い。
どうやら落ち込んでいるようだ。

『ねえ、リオネル様』

『おう、何だい、ジャン』

『おいらって……役立たずだなあって……時々、嫌になるんだ』

『そうか? 俺は全然そう思わないけどな。どうしてそう思うんだ?』

『だって! おいら戦えないし、さっきみたいに失敗するし、食べて寝てばかりだし……なんの取柄もない。……本当に役立たずだよ』

『はははは、全然役立たずじゃない。適材適所だよ』

『……適材適所』

『ああ、適材適所だ。正面切って戦うより、お前の才能を活かす場があるじゃないか』

『正面切って戦うより、おいらの才能を活かす場がある……』

『おう! お前はすばしっこいし、機転もきく。普通の人間の目には見えない。偵察、情報収集能力に優れていると俺は思う』
 
『おいらは、すばしっこいし、機転もきく……偵察、情報収集能力に優れている』

『そうさ! 俺はいずれ迷宮をクリアし、地上へ戻る。今だってそうだが、人間の町や村なら、偵察、情報収集は更にお前の独断場だ。他の仲間だと、やけに目立つし、不自然だろ?』

『確かに!』

『それにさ、お前とこうやって話すのが、探索の良い息抜きになってるよ』

『おいらと話すのが、探索の良い息抜き……おいら! リオネル様のお役にたってるんだ!』

『ああ、自信を持て! ジャンは、しっかりと俺の役に立ってるよ!』

リオネルがきっぱり言えば、

『ありがと! リオネル様! おいら、気合が入って来た! 頑張るよ! これからも宜しくね!』

決意を語るジャンは、晴れやかな笑顔で、リオネルをじっと見つめた。

……今回の一件で、リオネルとジャンの心の距離は縮まり、
絆は改めて固く結ばれたのである。
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