上 下
484 / 680

第484話「男は背中で語る!と、どこかの誰かが言ったらしい」

しおりを挟む
「よし! 爆炎に続き、絶対零度も上手く制御出来た。周囲に影響を与えず、標的の範囲内での発動が完璧だな!」

満足感にあふれたリオネルは、独り肉声でつぶやく。

尾の先に、もうひとつの頭のついている双頭の竜……蛇に近いドラゴン、
アンフィスバエナをあっさりと倒したリオネル。

ギフトスキル『ドラゴンスレイヤー、竜殺し』のスキルが後押ししたのは間違いない。

そして『爆炎』『絶対零度』とも、 
魔法の制御が完璧だったのは、自身の魔法発動能力だけではなく、
至宝『ゼバオトの指輪』の、絶大な力の加護もあると思われる。

やはり意思を持つ『ゼバオトの指輪』はリオネルを認めつつあるのだ。

そんなこんなで、リオネルは地下123階層の探索をクリア、階段を下り、
地下124階層へ入る。

リオネルは、どのような道でも、道なき道でも、
シーフの王の如く、影のように目立たず、静かに、敵に気づかれず、進む。
且つ獣のような身体能力で、軽快に走り、ジャンプする。

そして、川でも沼でも、高い崖でも、熟練度を増した転移魔法で瞬時に移動し、
飛翔魔法で高く華麗に舞い飛びクリアする。

地形でもリオネルを阻む物は、どこにもなく、魔物でも、何者も不可能である。

そんなリオネルとともに、モチベーションあげあげな仲間達の息もぴったり。

迷宮内の洞窟が如くの空間。
なので、『空』という言葉は微妙だが、
凍竜フロストドレイク、妖精ピクシーのジャンは自在に飛び、
魔獣アスプも地を飛ぶように走るのだ。

同時に、フォルミーカ迷宮の深層に棲むアールヴ、イェレミアスの捜索も心掛ける。

ボトヴィッドからの手紙を渡すだけでなく、イェレミアス個人にも大いに興味があったし、特にゴーレムについて、聞いてみたいと考えていた。

そんな期待も込め、イェレミアスを捜す。

皆で探索中、妖精ピクシーのジャンから念話で連絡が入った。

『リオネル様! おいらまた、イェレミアスさんの魔力残滓を見つけたよお! この前よりも新しいぜ。ずっと続いているんだ! これで行方を突き止められる!』

ジャンはまたも、イェレミアスの魔力残滓を発見したらしい。
それも、新しく追跡が可能だという。

『おう! じゃあ、すぐ行く。周囲には、気を付けろよ』

リオネルが返事を戻した瞬間である。

『ふんふんふん、了解っす! ……え!? う、うわ~ああっっ!!??』

やはり返事を戻した鼻歌まじりのジャンであったが、
何があったのか、いきなり大きな悲鳴をあげたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

大きな悲鳴を上げた理由は明確だ。

ジャンの身にとんでもない危険が迫ったのだ。

その危険の正体もリオネルは索敵……魔力感知の波動で分かった。

ぐずぐずしてはいられない!

波動により……ジャンの位置も把握した。

即座にリオネルは転移魔法を発動する。

転移トランジション!』

瞬時にリオネルの姿は消え失せ、ジャンの前へ、背を向ける形で現れた。

『リ、リオネル様あ!! あ、あああああ……』

いきなり目の前に現れたリオネルを見て、ジャンは驚き、一気に脱力した。

ジャンが悲鳴を上げた原因……
それは、体長が20mほどある、巨大なノーマルタイプ、ドラゴンである。

鋭い牙がたくさん生えた大きな口を開け、ジャンに迫っていたところだ。

魔力に満ちたジャンを、『おやつ代わり』に喰らおうとしたらしい。

イェレミアスの魔力残滓追跡に夢中となったジャンは、
またもあるじに褒められるであろう嬉しさのあまりか、頭が空っぽになり、
たまたま岩陰に居たドラゴンの気配に気づかなかったのだ。

リオネルは、両手を左右に広げ、ジャンを守るよう立ちはだかった。

……ドラゴンとリオネルの距離は10mもない。

男は背中で語る!と、どこかの誰かが言ったらしい。

ジャンの目には、俺に任せろ! 
というリオネルの心の文字がはっきりと見えていた。

転移魔法発動前に、ドラゴン……竜の存在をはっきりと認識していたリオネル。
泰然自若、冷静沈着、堂々とし、全く臆していなかった。

特異スキル『フリーズハイ』レベル補正プラス60!
ノーマルタイプ、ドラゴンのレベルは80オーバーだと思われる。

リオネルのレベルは現在『31』
レベル『90』の敵まで行動不能にする事が可能だ。

『!!!!!!!!????????』

悲鳴も上げられず、ノーマルタイプ、ドラゴンは行動不能となった。

自分の魔法が、力がどれくらい通用するのか、
何体か、粉々にしたり、斬り捨てもした。

だが、今回はあまり傷をつけず、倒したい。
燃やすなど、勿体ない、もってのほか。

ドラゴンの各部位は、2次使用可能、部位によっては高値で取引されるからだ。

『風弾! 貫通撃!』

どしゅっ! どしゅっ! どしゅっ!

放たれた貫通撃!の魔力をまとった風弾が3発、ドラゴンの急所を全て貫く。

どしゅるっ! どしゅる! どしゅるっ!

正確に急所を貫いた風弾で、文字通り風穴が開き、ドラゴンは絶命した。

そんな主リオネルの戦いぶりを見ていたジャン。

『あ、あう、あううううう……』

主が! 身体を張って自分を守ってくれた!

命が助かった安堵、そしてあまりの興奮と嬉しさで、
感極まり、言葉にならなかったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

異世界転移した俺は異世界ライフを満喫する事にした

森崎駿
ファンタジー
『異世界転移』 それは男子高校生の誰しもが夢見た事だろう この物語は神様によって半ば強制的に異世界転移させられた男がせっかくなので異世界ライフを満喫する話です ★印は途中や最後に挿絵あり

異世界召喚されたら無能と言われ追い出されました。~この世界は俺にとってイージーモードでした~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 1~8巻好評発売中です!  ※2022年7月12日に本編は完結しました。  ◇ ◇ ◇  ある日突然、クラスまるごと異世界に勇者召喚された高校生、結城晴人。  ステータスを確認したところ、勇者に与えられる特典のギフトどころか、勇者の称号すらも無いことが判明する。  晴人たちを召喚した王女は「無能がいては足手纏いになる」と、彼のことを追い出してしまった。  しかも街を出て早々、王女が差し向けた騎士によって、晴人は殺されかける。  胸を刺され意識を失った彼は、気がつくと神様の前にいた。  そしてギフトを与え忘れたお詫びとして、望むスキルを作れるスキルをはじめとしたチート能力を手に入れるのであった──  ハードモードな異世界生活も、やりすぎなくらいスキルを作って一発逆転イージーモード!?  前代未聞の難易度激甘ファンタジー、開幕!

彼女をイケメンに取られた俺が異世界帰り

あおアンドあお
ファンタジー
俺...光野朔夜(こうのさくや)には、大好きな彼女がいた。 しかし親の都合で遠くへと転校してしまった。 だが今は遠くの人と通信が出来る手段は多々ある。 その通信手段を使い、彼女と毎日連絡を取り合っていた。 ―――そんな恋愛関係が続くこと、数ヶ月。 いつものように朝食を食べていると、母が母友から聞いたという話を 俺に教えてきた。 ―――それは俺の彼女...海川恵美(うみかわめぐみ)の浮気情報だった。 「――――は!?」 俺は思わず、嘘だろうという声が口から洩れてしまう。 あいつが浮気してをいたなんて信じたくなかった。 だが残念ながら、母友の集まりで流れる情報はガセがない事で 有名だった。 恵美の浮気にショックを受けた俺は、未練が残らないようにと、 あいつとの連絡手段の全て絶ち切った。 恵美の浮気を聞かされ、一体どれだけの月日が流れただろうか? 時が経てば、少しずつあいつの事を忘れていくものだと思っていた。 ―――だが、現実は厳しかった。 幾ら時が過ぎろうとも、未だに恵美の裏切りを忘れる事なんて 出来ずにいた。 ......そんな日々が幾ばくか過ぎ去った、とある日。 ―――――俺はトラックに跳ねられてしまった。 今度こそ良い人生を願いつつ、薄れゆく意識と共にまぶたを閉じていく。 ......が、その瞬間、 突如と聞こえてくる大きな声にて、俺の消え入った意識は無理やり 引き戻されてしまう。 俺は目を開け、声の聞こえた方向を見ると、そこには美しい女性が 立っていた。 その女性にここはどこだと訊ねてみると、ニコッとした微笑みで こう告げてくる。 ―――ここは天国に近い場所、天界です。 そしてその女性は俺の顔を見て、続け様にこう言った。 ―――ようこそ、天界に勇者様。 ...と。 どうやら俺は、この女性...女神メリアーナの管轄する異世界に蔓延る 魔族の王、魔王を打ち倒す勇者として選ばれたらしい。 んなもん、無理無理と最初は断った。 だが、俺はふと考える。 「勇者となって使命に没頭すれば、恵美の事を忘れられるのでは!?」 そう思った俺は、女神様の嘆願を快く受諾する。 こうして俺は魔王の討伐の為、異世界へと旅立って行く。 ―――それから、五年と数ヶ月後が流れた。 幾度の艱難辛苦を乗り越えた俺は、女神様の願いであった魔王の討伐に 見事成功し、女神様からの恩恵...『勇者』の力を保持したまま元の世界へと 帰還するのだった。 ※小説家になろう様とツギクル様でも掲載中です。

天才ですが何か?~異世界召喚された俺、クラスが勇者じゃないからハズレと放逐されてしまう~いずれ彼らは知るだろう。逃がした魚が竜だった事を

榊与一
ファンタジー
俺の名は御剣那由多(みつるぎなゆた)。 16歳。 ある日目覚めたらそこは異世界で、しかも召喚した奴らは俺のクラスが勇者じゃないからとハズレ扱いしてきた。 しかも元の世界に戻す事無く、小銭だけ渡して異世界に適当に放棄されるしまつ。 まったくふざけた話である。 まあだが別にいいさ。 何故なら―― 俺は超学習能力が高い天才だから。 異世界だろうが何だろうが、この才能で適応して生き延びてやる。 そして自分の力で元の世界に帰ってやろうじゃないか。 これはハズレ召喚だと思われた御剣那由多が、持ち前の才能を生かして異世界で無双する物語。

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

幼馴染達にフラれた俺は、それに耐えられず他の学園へと転校する

あおアンドあお
ファンタジー
俺には二人の幼馴染がいた。 俺の幼馴染達は所謂エリートと呼ばれる人種だが、俺はそんな才能なんて まるでない、凡愚で普通の人種だった。 そんな幼馴染達に並び立つべく、努力もしたし、特訓もした。 だがどう頑張っても、どうあがいてもエリート達には才能の無いこの俺が 勝てる訳も道理もなく、いつの日か二人を追い駆けるのを諦めた。 自尊心が砕ける前に幼馴染達から離れる事も考えたけど、しかし結局、ぬるま湯の 関係から抜け出せず、別れずくっつかずの関係を続けていたが、そんな俺の下に 衝撃な展開が舞い込んできた。 そう...幼馴染の二人に彼氏ができたらしい。 ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...