上 下
481 / 689

第481話「これは、間違いなくアールヴ、イェレミアスの魔力だ」

しおりを挟む
『……リオネル様が再起動させたゴーレムと同じ魔力の残滓! 造ったアールヴ、イェレミアスとかいう人の魔力残滓だよ!』 

妖精ピクシーのジャンはそう言うと、「ふふふ」と面白そうに笑った。

面白そうに笑うジャンの言葉を聞き……リオネルの記憶が鮮やかに甦る。

フォルミーカ地下街の片隅ににある古い造りの地味な魔道具店 クピディタース。
その店の店長で、元冒険者の魔法使いボトヴィッド・エウレニウス。

リオネルが入店した際、最初はひどく頑固で、取っ付きにくかったが、
買い物をしたりして、何回かのやりとりの末、打ち解けた。

そして、ボトヴィッドはリオネルへ、
世界の至宝『ゼバオトの指輪』を譲ってくれた恩人だ。

そのボトヴィッドが現役の冒険者であった頃、尽くした友情の証として……
自動人形オートマタに近い精巧なゴーレム『アートス』を贈ったのが、
フォルミーカ迷宮の深層に棲むアールヴ、イェレミアスという魔法使い。

リオネルは原因不明で機能停止していたアートスを『ゼバオトの指輪』から授かった叡智の応援もあり……魂修復の秘術を行った。

魂修復の秘術……
リオネルが得意とする最上位級の回復魔法『全快』
そして究極防御魔法『破邪霊鎧』の魔力を練り、魂を穢す邪気を払い、
清めて行く方法で、ゴーレム『アートス』を復活させたのである。

ジャンの報告によれば……
ゴーレム『アートス』を、ボトヴィッドへ贈ったイェレミアスの魔法残滓を、
この地下123階層のある場所で認識したという。

更に詳しい場所を聞けば、このキャンプから東へ約1km離れた地点である。
このキャンプ地と似た地形らしい。

転移魔法を習得したリオネルからすれば、造作もない距離だ。

瞬時に行って、確認し、戻って来る事が可能だろう。

ぱぱぱぱぱぱぱ!とリオネルは考える。

よし!
決めた!
発見者のジャンは勿論、ジズとアスプ10体を連れて護衛と探索役で連れて行こう。

『ジャン、現場へ案内してくれ! ジズ、アスプは同行。転移魔法で一緒に行く! フロストドレイク、アスプ10体はこのまま留守番、外敵からキャンプを守れ!』

リオネルの指示を聞き、仲間達は即座に動いた。

ジャン、ジズ、アスプ10体は同行の為、リオネルにぴたっと寄り添う。フロストドレイクはそのまま周囲へにらみをきかせ、残りのアスプ10体はキャンプの周囲を固めた。

その様子を見たリオネル。

転移トランジション!』

転移魔法を発動し、ジャン、ジズ、アスプ10体とともに、目的地へ向かったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ジャンの記憶は確かである。
そしてリオネルの行使した転移魔法の制御も完璧である。

リオネル、ジャン、ジズ、アスプ10体は瞬時に目的の場所へ現れた。

やはりキャンプ地と酷似した空き地である。

すかさず、リオネルの指示が飛ぶ。

『よし! 全員配置へつけ! 外敵に注意だ! ジズは上空から偵察! アスプ10体は周囲に展開! 近づく奴が居たら、各自念話で報せ、且つ牽制しろ!』

対して、ジズは急速上昇で舞い上がり、アスプ10体は、飛ぶように地を走り、散開した。

『OK! 全員迅速で何よりだ』

大きく頷いたリオネル。

続いて、ジャンへ言う。

『ジャン、魔力残滓の反応はひどく弱いようだ。お前が残滓を感じた場所へ案内してくれないか』

『了解! おいらが気付いた時よりもだいぶ弱くなってるね! こっちだよ! リオネル様!』

ジャンはリオネルを魔力残滓のあった場所へ連れて行った。

……ほんのわずか魔力が残っていた。
アートスを再起動したリオネルには分かる。

これは、間違いなくアールヴ、イェレミアスの魔力だ。

多分、この場でイェレミアスは、何か魔法を使ったのだろう。

しかし、痕跡はどんどん薄くなっており、追跡も困難そうだ。

実はリオネル、ボトヴィッドから、イェレミアス宛の手紙を預かっており、
機会があれば渡して欲しいと頼まれていた。

ボトヴィッドには『ゼバオトの指輪』を譲って貰った恩がある。

当然リオネルは、快く引き受けた。

イェレミアスと巡り合えば、ぜひ渡したいと考えているが、
念の為、もしも会えたらという条件付きで。

ボトヴィッド曰はく手紙は『生存報告』らしい。

……そのイェレミアスの手掛かりが遂に見つかったのだ。

リオネルは、この場で急きょ魔獣兄弟ケルベロス、オルトロスを呼び出し、
念の為、魔力残滓の特徴を覚えて貰った。

ちなみに休憩を中断し、呼び戻した事について、
いたわり、詫びた事はいうまでもなかったのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...