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第470話「リオネルの身体は、かつて、つけられたふたつ名『疾風の弾丸』の如く、 凄まじい速度で、進んでいた」

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飛翔体の正体は、すぐ誰の目にも明らかとなる。

リオネル達を襲おうと迫って来たのは、
体長が10mに達する飛竜、ワイバーン5体の群れだった。

補足しよう。

ワイバーンは、ノーマルタイプドラゴンに比べてやや小型で、
体長は10m前後。

飛竜と呼ばれ、大空を自在に飛び回る……ドラゴンの一種である。

攻撃的な性格であり、肉食。
人間や家畜、動物を襲い、捕食する。

タラスクス同様、ワニのような長い顔をしており、
口には、長く鋭い歯がたくさん生えている。

また前肢と一体化した翼、鷲のような二本の後肢を持ち、
長い尾の先に鋭いとげを持つ。

ワイバーンは貴族の紋章に良く使われ、
その性格同様『強い敵意』を示すといわれている。

竜族の中では卓越した飛行能力を持つワイバーンであるが、
攻撃力自体はそれほどでもない。

口による噛み砕き、爪によるひっかき。
尾による薙ぎ払いと、尾の先のとげの毒くらい。

既にリオネルが倒したノーマルドラゴンの火竜タイプのように、
口から火の息……灼熱の火炎を吐いたりはしない。

ここでリオネルは、ぱぱぱぱぱぱぱ!と考える。

当然、加勢に来た仲間達と、どう協力し、戦うかだ。

ワイバーン5体、飛翔魔法、転移魔法等々を使えば、
自分ひとりで戦えない事もない。

しかし、敵襲を察知し、駆けつけてくれた仲間の好意を無にしたくない。

作戦は決まった。

リオネルは念話で、各自へ指示を出す。

『ケルベロス! オルトロス! その場から、火のブレスだ! 5体のワイバーンどもを威嚇し、分散させろ! 但し! 絶対当てないように! 強く吐きすぎて、天井を焦がすな!』

『ファイアドレイク! ジズ! 連携して3体を倒せ! ファイアドレイクは、分散したワイバーンどもを火のブレスで牽制しろ! 絶対当てないようにな! とどめはジズの風魔法で順次切り刻め!』

『そして! 残りの2体は俺が倒す! 以上! 後は状況に応じ、指示を出す!』

ツーといえばカー。
阿吽の呼吸。

各自はリオネルの指示を受け、即、配置につく。

その間、ワイバーン5体は、リオネル達へ接近する!

ささっと、ファイアドレイク、ジズはそれぞれ左右へ。

リオネルは、体内魔力を上げて行く。

ここでケルベロス、オルトロスが猛炎をそれぞれ吐く。

命中しないよう、わざと当たりをずらしてだ。
当然、天井を焦がさぬよう放射距離も調整済みだ。

ごおおおおおおおおおおおおお!!!!!
ごおおおおおおおおおおおおお!!!!!

魔獣兄弟の猛炎を受け、ワイバーンが火だるまとなって、森林に落ちたら、
大火災となってしまう。

リオネルはそれを危惧したのだ。

しかし!

ケルベロス、オルトロスが吐いた火の息は、威嚇には充分であった。

予想外の猛炎に泡を食ったワイバーン5体は、炎を避ける為、分散した。

その様子を見て、ファイアドレイク、ジズは、
1体のワイバーンへ襲いかかったのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

火の精霊サラマンダーへ擬態したファイアドレイクは、命中しないよう炎を吐き、
ジズは、はばたき、強力な風の魔法、『風斬』を放つ。

鋭利な風の刃がワイバーンを容赦なく、斬り捨てる。

ず、ばばばばばばっっっっっっ!!!!

胴体からまっぷたつにされたワイバーンは即死し、
生い茂った密林へ向かい、落下して行く。

まずは1体!

残りの2体もすぐ倒す!と言わんばかりに、ファイアドレイク、ジズは、
次のワイバーンへ、襲いかかったのである。

俺の担当、2体のワイバーンを倒す頃合いだろう。

リオネルは心で言霊を念じる。

飛翔フライト!』

リオネルの周囲を取り巻く聖なる風が、
「ふわわっ」と優しくリオネルを持ち上げた。

行っくぞお!

瞬間!

しゅおおおおおおおおおおっっっっっっ!!!!

リオネルの身体は、かつて、つけられたふたつ名『疾風の弾丸』の如く、
凄まじい速度で、進んでいた。

ワイバーンに、リオネルの動きは全く捉えられない。

更に特異スキル、修行の結果、
進化した『フリーズハイ』レベル補正プラス60も発動されていたから、
身動きも出来なくなる。

重力の自由落下で落ちようとするワイバーン。

その時。

ワイバーンへ肉薄したリオネルは、至近距離の3mから、
『貫通撃』を加えた『風弾』を放つ。

どしゅおおおおおおっっっっっっ!!!!!

風弾は、ワイバーンの急所を貫き大穴を開け、あっさりと絶命させた。

そのまま死骸となって地上へ落ちていくワイバーンを見送ったリオネル。

残るは1体。

仲間が倒され、固まったワイバーンだったが……
たかが人間『餌』のリオネルを認識し、生意気だ!と、怒りを露わにし、咆哮する。

ぐはあああああああああああああ!!!!!

しかし!

リオネルは騒ぐな!とばかりに不敵に笑う。

憤怒のワイバーンに対し、無造作に飛翔し、近づいて行く。

大音声で威嚇するワイバーンだが、リオネルは全く臆さない。

両者が3mの距離まで近づき、ワイバーンが噛みつこうとした瞬間!

しゅばっ!

更に踏み込み、ワイバーンに近づいたリオネルは、
常人では、到底目に見えぬ速さで、愛用のスクラマサクスをいきなり抜刀。

ずばばばばっっっっっ!!!!!

ぎえええっ!!!!!

短い悲鳴をあげたワイバーンは胴体をなぎ払われ、
まっぷたつにされ、絶命した。

こちらも死骸となって地上へ落ちていく……

……ワイバーン5体の反応は、完全に消えていた。

ファイアドレイク、ジズは自分達の『ノルマ』3体をクリアしたようだ。

宙に浮いたまま、リオネルは「ふう」と息を吐く。

……落ちたワイバーン5体の死骸を葬送魔法で塵にすれば、終わりだな。
ケルベロス、オルトロスにも協力して貰うか。

そう考えたリオネルは、満足そうに笑う。

よし! 
地上だけでなく、飛翔しながらでも『居合』が使えた!

もっともっと鍛錬して、いずれはあらゆる場所で使えるようになってやる!

剣さばきはまだまだ、ワレバット冒険者ギルド総本部サブマスター、
剣聖ブレーズ・シャリエの域には及ばない。

だがリオネルは、これまた修行の末、ブレーズが使った東方の剣技、
『居合』の流れを組む、特異な抜刀術を習得しつつあったのである。
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