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第461話「竜……ドラゴンめ。お前らが蔑んだ人間のパワーって奴を見せてやるよ。死をもって見届けな」

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リオネルが狙った通り!
3体いるうち、たった1体の火竜だけが、ガラスが割れるような音をさせ、
あっさりと砕け散っていた。

まず1体!
残りの竜――ドラゴンは2体!

宙に浮いたまま、リオネルは第2撃を放つつもりだ。

今度放つのは、空気界王オリエンスから授かった風の最上位魔法のひとつ、
『竜巻』である。

この『竜巻』で、リオネルは『ひとつの試み』を行おうとしていた。

そもそも、竜巻とは積乱雲の発達に伴い生じる、高速な渦巻き状の上昇気流だ。
突風の一種であり、規模が小さく寿命が短い割に、猛烈な風を伴う。
地上と上空の気温差が大きくなると発生しやすくなると言われている。

魔法『竜巻』は、風の魔力でこの上昇気流を人為的に生み出し、
術者がこの苛烈な風力で、敵へ大きな物理的ダメージを与えるものだ。

今回、リオネルの課題は3つ。

まず魔法『竜巻』を完璧に制御し、広範囲ではなく。
目標の竜へ、ピンポイントに発生させる事。

ふたつめが、『竜巻』の風のパワーを変幻自在に変える事。

3つめが、『貫通撃』を織り交ぜ、攻撃力を格段に上げる事だ。

仲間をあっという間に屠られた竜は、真上を飛翔するリオネルを威嚇。

かああっつと口を開き「燃え尽きろ!」とばかりに、
火の息――灼熱の火炎を何度も吐き出した。

しかし!
竜どもの思念は、心の波動として、リオネルの心へはっきりと伝わって来る。

一部の種族、個体を除き、知性はそう高くない竜。

良く言えばシンプルな肉体派。悪く言えば単純な脳キン。

ノーマルタイプ火竜の攻撃ならば、かわすのは児戯に等しい。

更に、先ほどの仲間達への攻撃で、リオネルは竜の攻撃、防御の際の効能効果、
動き、癖等々を、大体見切っていた。

当然、火炎攻撃の仕様も見切っている。

案の定、すいすいっ、すいすいっと躱したリオネル。

すかさず反撃に移る。

火炎を避けながらも、リオネルの視線は標的となる竜を完璧にロックオンしていた。

よし!

『竜巻!』

リオネルは心で念じ、竜巻を発動した。

いつものように無詠唱、神速発動である。

丁度、狙った竜の頭上へ、竜と同じくらいの大きさだろうか、風の渦巻が現れる。

ごおおおおおおおおおおおおおおおおおっっっっっ!!!!!

最初の課題クリア!

リオネルは、ふっと指を動かした。

制御された風の渦巻は、ひと回り、ふた回りと大きくなり、竜を完全に包んだ。
パワーアップした風の渦巻は、楽々と竜を宙に浮かばせる。

いくら底知れぬ竜のパワーでも、大自然の脅威ともいえる巨大な竜巻には、
到底敵わない。

身動きが全く出来ない。

さあ、3つめの課題。
とどめを刺してやろう。

リオネルは、竜を捕らえた巨大な渦巻へ、貫通撃を込めた魔力をいくつも放った!

放った貫通撃は、巨大な渦巻と融合!

どしゅ! どしゅ! どしゅ! どしゅ! どしゅ! どしゅ!

3つめの課題をクリア!

融合した魔力は、凄まじいパワーを誇る『風弾』となり、
囚われた竜の身体を容赦なく貫いていたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

残る竜は1体。

圧倒的な魔法で仲間を倒されても、竜はリオネルを怖れてはいない。

たがが、力の無い、ちっぽけな人間。

踏み潰し、喰らってやる!
という種族的ともいえる、根拠のない自信をふりかざしているからだ。

ぐはあああああああっっっっ!!!!!

宙に浮かぶリオネルへ、竜は怒りの咆哮を放つ。

地上へ降りて来い! 貧弱な! 卑怯者の虫けらめ! 

対して、リオネルは微笑む。

『分かったよ』

と、念話を送る。

竜の誘いに応じてやるつもりなのだ。

す~っと、下降し、すたっと地上へ降りたリオネル。

そこへ、ずしん! ずしん! ずしん! ずしん!と竜が突進した。

一方、リオネルは腕組みをし、立っているだけだ。

リオネルと竜の距離。

100m、50m、30m……竜は巨大な口を開け、飲み込もうとした。

『おいおい、話が違うぞ、俺を踏み潰してから、喰うんじゃなかったのか?』

念話で竜へ語りかけたリオネルは、ふっと姿がかき消えた。

瞬時に、転移魔法を使ったのだ。

その転移先は、竜の顔、額の前。

竜のこめかみは、腹以上に、誰も知らない隠された弱点だと、
リオネルは仲間の竜、ファイアドレイク、フロストドレイクから聞いている。
但し、強烈な力を使い、ピンポイントで撃ち抜かないと効果がないとも言われていた。

自身の弱点を教えて貰うほど、リオネルは仲間の信頼を得ていたのだ。

『竜……ドラゴンめ。お前らが蔑んだ人間のパワーって奴を見せてやるよ。死をもって見届けな』

冷たく言い放ったリオネルは、極大の貫通撃を込めた破邪聖煌拳はじゃせいこうけんの拳を、

どがががががんんんん!!!!!

と。こめかみにまっすぐ!思い切り、ぶち込んでいたのである。
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