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第455話「油断はしないし、臆しもしない」
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フォルミーカ迷宮地下120階層小ホール……
食事を終えたリオネル達は明日降りる、
地下121階層から149階層の『すり合わせ』を行っている。
今まで10階層分のすり合わせを変更したのは理由がある。
出現パターンこそ違えど、地下101階層から120階層は同じ敵……魔物が出現した。
しかし地下121階層から先149階層までは、全く違う魔物が出現する上、
迷宮の構造自体もガラリと変わるのだ。
そして、この地下121階層から149階層が、
人間族が何とか踏破した『150階』へ降りる最大の難関となっているのだ。
そう……
最大の難関というのは、出現する魔物がとても強大であり、一気に強くなるからだ。
これまで出現した魔物以上に、人間など歯牙にもかけず矮小な存在、
『単なる餌』のひとつとしてしか見ていない。
すり合わせに参加しているのは、
ケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟、火竜ファイアドレイク、凍竜フロストドレイク、鳥の王ジズ、妖精ピクシーのジャンだ。
2,600体のゴーレムは居らず、アスプは400体のうち、たった20体だけ。
……しかし、この狭い小ホールですり合わせに参加するには充分なメンバーである。
いつもの通り、リオネルは肉声、念話の両方で同時に話す。
「地下121階層から149階層は、邪竜と人喰い巨人の領域だ」
「…………………………」
仲間達はいつものように無言であったが、ファイアドレイク、フロストドレイクは、
俺達はよこしまな邪竜とは違うと、波動を送って来た。
分かっていると、リオネルは頷き、話を続ける。
「そして、迷宮の仕様も大きく変わる。これまでの、石壁が続く通路と部屋という殺風景な趣きから、ガラリと変わるのさ」
「…………………………」
「迷宮とは名ばかりかもしれない。地下121階層から149階層は、ワンフロアが天井まで100m以上もある巨大洞窟のような広い空間に変わるんだ」
「…………………………」
「どのような仕組みだか不明だが……洞窟は天井から、日光のような高魔力の暖かな明るい光がふりそそぎ、さわやかな風が吹き込む。地上は大木がうっそうと生い茂った深い密林……」
「…………………………」
「水もたっぷりあり……川に沼。また峡谷のような岩場や荒涼な砂漠も混在した、複雑で不可思議な地下庭園という趣きなんだ」
「…………………………」
「地下庭園だから、俺達が今居る小ホールのような小部屋は存在せず、空地のような場所があちこちにある。そこでこのようにキャンプを張り、休息する事になるだろう」
「…………………………」
「そして、下層への階段があるのは同じ。そこまでたどり着き、次の階層へ降りる事となる」
「…………………………」
「地図を持っているから、階段の位置は分かる。しかし植物の成長で地形や景観は変わるだろう。だから地図をあてにはしすぎない」
「…………………………」
「そして出現する邪竜だが……」
「…………………………」
「ノーマルタイプのドラゴン、飛竜ワイバーン、南方の動物ワニのようなタラスクス、両頭のレッドドラゴンであるアンフィスバエナ、9つの頭を持つ、巨大毒竜ヒュドラだ」
「…………………………」
「ドラゴンが不死化した、ドラゴンゾンビも出現するという事だから気をつけよう」
リオネルは、ここまで説明すると、ふうと軽く息を吐いたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
仲間達は、黙ってリオネルの話に聞き入っている。
「次に人喰い巨人だが……既に戦ったオーガの上位種オーガキング、妖精の成れの果てと言われるトロル、獣頭の巨人フォモール、北の大巨人ヨートゥン、身長は3mから15m。特に大巨人と恐れられ、身長15mに達するヨートゥンのパワーは桁外れだ」
「…………………………」
「さて、こいつらとの戦い方だが、基本スタンスは変えない。但し、ゴーレムのように『捕獲』とかはナシだから、手加減は一切しない。お前達も遠慮しないでくれ」
「…………………………」
「俺は習得した魔法、スキルを使い、容赦なく敵を攻撃する。更に戦いに加えるのは、天井が高い分、使用可能であろう飛翔魔法だ」
「…………………………」
「基礎訓練しかしていないから、地上に戻って以降、お前達とじっくりと連携訓練しようと思っていた飛翔魔法だが、今回の実戦で使う。転移魔法と組み合わせれば、相乗効果が素晴らしく上がると思う」
「…………………………」
「そして、このフロアでもアスプ達には『伏せ勢』として活躍して貰う。常に相手を捕捉し、先手を取ってアドバンテージを取るんだ」
「…………………………」
仲間達から、確認、質問は一切なかった。
竜に巨人……
敵は段違いに強くなるが、これまで積んで来た実戦経験がある。
そして全員、余力を持って戦っている。
つまり、本気を出していない。
油断はしないし、臆しもしない。
リオネルは、頼もしい仲間達に守られながら、その夜ぐっすりと眠ったのである。
食事を終えたリオネル達は明日降りる、
地下121階層から149階層の『すり合わせ』を行っている。
今まで10階層分のすり合わせを変更したのは理由がある。
出現パターンこそ違えど、地下101階層から120階層は同じ敵……魔物が出現した。
しかし地下121階層から先149階層までは、全く違う魔物が出現する上、
迷宮の構造自体もガラリと変わるのだ。
そして、この地下121階層から149階層が、
人間族が何とか踏破した『150階』へ降りる最大の難関となっているのだ。
そう……
最大の難関というのは、出現する魔物がとても強大であり、一気に強くなるからだ。
これまで出現した魔物以上に、人間など歯牙にもかけず矮小な存在、
『単なる餌』のひとつとしてしか見ていない。
すり合わせに参加しているのは、
ケルベロス、オルトロスの魔獣兄弟、火竜ファイアドレイク、凍竜フロストドレイク、鳥の王ジズ、妖精ピクシーのジャンだ。
2,600体のゴーレムは居らず、アスプは400体のうち、たった20体だけ。
……しかし、この狭い小ホールですり合わせに参加するには充分なメンバーである。
いつもの通り、リオネルは肉声、念話の両方で同時に話す。
「地下121階層から149階層は、邪竜と人喰い巨人の領域だ」
「…………………………」
仲間達はいつものように無言であったが、ファイアドレイク、フロストドレイクは、
俺達はよこしまな邪竜とは違うと、波動を送って来た。
分かっていると、リオネルは頷き、話を続ける。
「そして、迷宮の仕様も大きく変わる。これまでの、石壁が続く通路と部屋という殺風景な趣きから、ガラリと変わるのさ」
「…………………………」
「迷宮とは名ばかりかもしれない。地下121階層から149階層は、ワンフロアが天井まで100m以上もある巨大洞窟のような広い空間に変わるんだ」
「…………………………」
「どのような仕組みだか不明だが……洞窟は天井から、日光のような高魔力の暖かな明るい光がふりそそぎ、さわやかな風が吹き込む。地上は大木がうっそうと生い茂った深い密林……」
「…………………………」
「水もたっぷりあり……川に沼。また峡谷のような岩場や荒涼な砂漠も混在した、複雑で不可思議な地下庭園という趣きなんだ」
「…………………………」
「地下庭園だから、俺達が今居る小ホールのような小部屋は存在せず、空地のような場所があちこちにある。そこでこのようにキャンプを張り、休息する事になるだろう」
「…………………………」
「そして、下層への階段があるのは同じ。そこまでたどり着き、次の階層へ降りる事となる」
「…………………………」
「地図を持っているから、階段の位置は分かる。しかし植物の成長で地形や景観は変わるだろう。だから地図をあてにはしすぎない」
「…………………………」
「そして出現する邪竜だが……」
「…………………………」
「ノーマルタイプのドラゴン、飛竜ワイバーン、南方の動物ワニのようなタラスクス、両頭のレッドドラゴンであるアンフィスバエナ、9つの頭を持つ、巨大毒竜ヒュドラだ」
「…………………………」
「ドラゴンが不死化した、ドラゴンゾンビも出現するという事だから気をつけよう」
リオネルは、ここまで説明すると、ふうと軽く息を吐いたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
仲間達は、黙ってリオネルの話に聞き入っている。
「次に人喰い巨人だが……既に戦ったオーガの上位種オーガキング、妖精の成れの果てと言われるトロル、獣頭の巨人フォモール、北の大巨人ヨートゥン、身長は3mから15m。特に大巨人と恐れられ、身長15mに達するヨートゥンのパワーは桁外れだ」
「…………………………」
「さて、こいつらとの戦い方だが、基本スタンスは変えない。但し、ゴーレムのように『捕獲』とかはナシだから、手加減は一切しない。お前達も遠慮しないでくれ」
「…………………………」
「俺は習得した魔法、スキルを使い、容赦なく敵を攻撃する。更に戦いに加えるのは、天井が高い分、使用可能であろう飛翔魔法だ」
「…………………………」
「基礎訓練しかしていないから、地上に戻って以降、お前達とじっくりと連携訓練しようと思っていた飛翔魔法だが、今回の実戦で使う。転移魔法と組み合わせれば、相乗効果が素晴らしく上がると思う」
「…………………………」
「そして、このフロアでもアスプ達には『伏せ勢』として活躍して貰う。常に相手を捕捉し、先手を取ってアドバンテージを取るんだ」
「…………………………」
仲間達から、確認、質問は一切なかった。
竜に巨人……
敵は段違いに強くなるが、これまで積んで来た実戦経験がある。
そして全員、余力を持って戦っている。
つまり、本気を出していない。
油断はしないし、臆しもしない。
リオネルは、頼もしい仲間達に守られながら、その夜ぐっすりと眠ったのである。
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