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第439話「ドヴェルグ族の国、ロッシュで歓迎の宴を催したい!」

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地下87階層でバルトロメイ達ドヴェルグ10人を救ったリオネルは、
念話でケルベロスとオルトロスを呼び戻し、先行させた。

魔獣兄弟は、襲って来た各種ゴーレム、ガーゴイルを排除。
結果、リオネル達は、無事地下80階層へ戻り、小ホールへイン。
引き続き、リオネルは、魔獣兄弟に周囲を巡回させ、警備に当たらせる。

当然、バルトロメイには伝えていない。

ここで、心の平穏の為、伝えておいた方が良いだろう。

「バルトロメイさん。この地下80階層フロアへ戻ったからといって絶対に安全ではないですが、とりあえずは落ち着きましょう。態勢を立て直すんです」

「あ、ああ……そ、そうだな」

「はい、でも一応は安心してください。召喚した俺の仲間を巡回させていますから、敵は容易には近寄れません」

「え!? な、仲間!? そ、そうか……そういえば、リオネル君は、使い魔を仲間にしているとか聞いたな」

驚いたバルトロメイ。

昨夜、雑談中に話していたが、失念していたらしい。

「ええ、索敵……魔力感知を張り巡らしてますし、近づいて来たらすぐ分かります。それに万が一、敵が来たら俺も戦いますよ」

ここでリオネルは、地下87階層で倒し、収納の腕輪へ仕舞っていた銀製ゴーレム10体を出した。

「バルトロメイさん。俺、夕食の支度をしますから、その間にゴーレム10体を、そちらの魔道具へ収納してください」

「わ、分かった! こっちの収納は時間がかかるからな。リオネル君の好意に甘えるよ」

「はい、夕食の準備は任せてください」

「も、申し訳ない」

「いえいえ! 俺が作るのは、ソヴァール王国とアクィラ王国の料理で、お口に合うかどうか、分かりませんが、ご容赦ください。食器とカップだけは人数分ないですから、皆さんのを、お借りしますよ」

「ああ、ワシから皆へ出しておくように言おう」

という事でリオネルは、約束通り……
魔導コンロを始め、料理道具一式を出した。
氷結魔法で冷凍してあった食材各種も出す。

夕食の支度にとりかかる。

軽快な包丁さばきが、さえわたる。

とんとんとんとん! とんとんとんとん!

大きな鉄製フライパンも軽々と使う。

じゃじゃじゃっ! じゃじゃじゃっ!

じゅ~ううう! じゅ~ううう!

じゅわわわぁ! じゅわわわぁ!

「!!!???」

「………………」

一見、平々凡々とした普通の少年。

それが超の付く一流の冒険者。
またプロ並みの腕を持つ料理人でもある。

しかも!
それだけではなく、数多の底知れぬ能力を持つ超人。

誰もが目の当たりにして、リオネルのギャップに驚く。
異民族のドヴェルグ達も例外ではなかった。

バルトロメイ達ドヴェルグ10人は、大きく目を見開き、
呆然としていたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

やがて……
料理は時間をかけず完成。

数種の野菜炒め、ミートボール、コンソメスープにパンというシンプルメニュー。

「簡単な料理で申し訳ないです」

「いやいや、とんでもない! ありがたい! じゃあ、リオネル君、遠慮なく馳走になるぞ。でも10人分だと君の備蓄を大きく減らしてしまった……本当に、何から何まで申し訳ない!」

「大丈夫です、バルトロメイさん。いろいろな物、俺、多めに持っていますから」

リオネルは、これくらい食料を提供しても全く問題はない。
食料、調味料、水などを樽単位で、全て5年分以上確保してある。
武器防具、魔導ポーションなども一緒。

これまでの旅で、時間を作ってはこまめに購入し、収納の腕輪へ仕舞ってあるのだ。

そして料理の方はといえば……

「凄く美味い!」
「このアクィラ王国へ来て、一番美味い!」
「生き返る!」
「最高だ!」
「お代わりしていいかい!」

などと大好評。

食事をしながら、バルトロメイが尋ねる。

「リオネル君」

「はい」

「もしやこの料理、昨夜話したワシ達の味の好みを反映させてないか?」

「ええ、少しだけ」

「うむう。君は本当に気配り上手だ」

「いえいえ」

「この度の事は、ドヴェルグ族、族長ブラーズダ・バルヴィーン様にしかとご報告する。君はドヴェルグ族の大恩人だ」

「いえいえ、大恩人なんて、そんな事ないですよ」

「い~や! 大恩人だ! 地上へ戻ったら、ぜひワシへ連絡をくれ。魔法鳩便を飛ばしてくれ! すぐに君を迎えに行こう。ドヴェルグ族の国、ロッシュで歓迎の宴を催したい!」

「じゃあ、都合がついたら、こちらから遊びに行きますね」

「分かった! 待ってるぞ! 必ず来てくれ!」

という会話もあり、リオネルとバルトロメイ達は更に仲良くなった。

そんなこんなで夕食は大好評のうちに終了。

それから、しばし雑談をした後、バルトロメイ達は明日の朝、
「撤収し、地上へ戻る」事を告げて来た。
食料、水、魔導ポーション等も残り少なくなったからだという。

「そうですか、じゃあバルトロメイさん、今から仲間を呼びますね。ケルという狼犬です」

「お、狼犬!? そ、そうか」

リオネルは思う所があり、魔獣兄弟のうち、ケルベロスを呼んだ。
当然、念話連絡である。

まもなく、ケルベロスが小ホールに現れる。

体長2m、体高1mの巨大灰色狼風、鋭い目つきのケルベロスを見て、
バルトロメイ達は、おそれおののく。

「「「「「!!!!!」」」」」

「ははは、大丈夫です。彼が俺の仲間です」

そうリオネルは、笑顔で言いつつ、

「ケル! この10人の方達を、『ご希望する上層の安全な領域』までお送りするんだ」

と命じた。

対して「心得た!」とばかりに、
ケルベロスは、「わう!」と応えたのである。
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