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第434話「おお! 目標は伝説の地下300階層か!」

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「たったひとりで、ここまで来て、この先も行くと言うお前は、本当に凄いぞ!」

単身でこの地下80階層まで来たリオネルを、ドヴェルグ達はリスペクト、
初対面で、異民族の人間でも、好意的に接してくれた。

好意的なドヴェルグ達に対し表向きの自分の素性を隠す事はない。
そう、リオネルは思った。

さすがに、全属性魔法使用者オールラウンダーであるとか、
失われた転移、飛翔魔法を使いこなすとか、
己が持つ能力を全公開するわけにはいかないが。

リオネルとドヴェルグ達は、出会った当初、
お互いに『その場限り』と考えていたのだろう。

まあ、大抵はそうである。
人生、数多の者と出会うが、その殆どは、何のつながりもない、
単に行きかうだけの見知らぬ赤の他人である。

しかし、良くある言葉で波長が合えばという。
気が合うという言葉と同義である。

リオネルとドヴェルグ達は、放つ魔力が共感し合ったに違いない。
それゆえ話してみて、互いに興味を持ち、一歩、二歩進んだ間柄となった。

さてさて!
リオネルは先に名乗り、身分を明かす事にする。

「申し訳ありません。ここまで話し込んで今更ですが、改めてあいさつと自己紹介をさせて頂いて構いませんか?」

「ああ、構わんよ」

リオネルの申し出をドヴェルグのリーダーは快く受けてくれた。

1,000年以上生きるアールヴ族ほどではないが、ドヴェルグ族も人間よりは、
遥かに長命である。
200年から250年を生きると言われている。

目の前に居るリーダー以下の10人は、
どう転んでも、リオネルより年上なのは間違いない。

「皆さん! 改めまして! 人間族のリオネル・ロートレックと申します! ソヴァール王国王都オルドル出身の18歳。ランクAの冒険者です!」

リオネルは、はきはきとあいさつし、冒険者ギルドの所属登録証を、
ドヴェルグ達へ見せた。

リオネルの所属登録証に煌くランクAの文字。
超が付く一流冒険者のあかしである。

弱冠18歳の少年が、ランクAの冒険者!!??

様々な場所、様々な人々が驚いたのと全く同じ反応をドヴェルグ達も見せた。

人間社会と交わり、冒険者という生業に就き、
ランクの価値、そして意味を理解したドヴェルグ達は、
リオネルの底知れぬ『凄さ』を改めて認識したのだ。

自分達が10人がかりで訪れた地下80階層を、
「たったひとりで来た」というのにも大いに納得する。

ドヴェルグ達は、頭をかき、リオネルに対し、申し訳なさそうな表情をする。

仲間の様子を見て、リーダーは苦笑し、

「リオネル・ロートレック君。冒険者ギルドの所属登録証を見て、態度を変えるというのもいかがなものかと思うが、こちらも礼を尽くし、あいさつさせて貰おう」

軽く息を吐くリーダー。
姿勢を正し、一礼した。

「ワシは、バルトロメイ・アンドルリーク。ドヴェルグ族、族長ブラーズダ・バルヴィーン様の命を受け、人間社会の冒険者となり、このフォルミーカ迷宮でゴーレム捕獲部隊を率いる長をしておる。ランクはBだ」

「アンドルリークさんですか。今後とも宜しくお願い致します」

「ははは、硬いな。ファーストネームのバルトロメイと呼んで構わんよ。その代わり、こちらもリオネル君と呼ばせて貰う」

「分かりました、バルトロメイさん」

リーダー、バルトロメイがリオネルへあいさつすると、
残る9人も、次々とあいさつをしたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

更に打ち解けたリオネルとバルトロメイ達ドヴェルグ族。

ドヴェルグ族は魔法の発動能力はそこそこ、魔法にあまり興味はない。
彼らは物造りが最も好きな種族なのだ。
しかし、物造りの筆頭である『鍛冶』と同じくらい、
魔法薬の調合、ポーションの開発には力を入れている。
体力回復、けがの治療は勿論、
睡眠誘因、毒、石化……全ての特殊攻撃に対応する薬、ポーションを用意していた。

それゆえ、魔物達に対し、アドバンテージを持ち戦える。

ドヴェルグ族が使う魔法薬、ポーション等の話題は、
当然、好奇心旺盛なリオネルにとって興味のある話題だ。

リオネルも自身の持つ魔法薬、ポーションの知識を基に、
バルトロメイ達と議論を交わした。

ちなみに、ドヴェルグ族は大の酒好きだが、飲み過ぎて迷宮で前後不覚になる事は、
死に直結するリスクを負う。
その為、バルトロメイはメンバーへ迷宮内における禁酒を徹底していた。
という事で、酒盛りが行われなかった。

気が付けば、夜もふけ……日付が変わる。

バルトロメイが言う。

「リオネル君」

「はい」

「明日はどうするんだ?」

「はい、使い魔を召喚し、クランを組み、探索を続けます。明日の到達目標は地下90階層です」

「じゃあ、良かったら、ワシ達と一緒に探索しようか? あと数日探索したら、地上へ戻るつもりなんだが」

「申し訳ありません。今回は修行を兼ね、ひとりで探索すると決めていますので」

「成る程なあ。修行か」

「ええ、もし行けるようでしたら、このフォルミーカ迷宮の真の最下層、地下300階層まで行くつもりです」

「おお! 目標は伝説の地下300階層か! 先ほども言ったが、ワシらにはその階層にどんな魔物が出て来るのか、想像もつかない。しかし君ならそいつらを打ち破り、到達出来るかもしれないな」

「頑張ります!」

「ああ、くれぐれも命は大事に……無理は禁物だ。もし地上へ戻って気が向いたら、ドヴェルグ族の国、ロッシュへ遊びに来てくれ。歓迎するぞ」

「ありがとうございます!」

「ふむ、いつかまた会おう。頑張れよ! リオネル君に、高貴なる地界王アマイモン様のご加護よ、あれ!」

いきなり送られたバルトロメイのエール。
それもティエラ様の父アマイモン様の加護とは。

地に棲むドヴェルグ族達は、
大地を統括する地界王アマイモン崇拝していると聞いた事はあったが……

リオネルは『この出会い』も、アマイモンの愛娘ティエラの加護かもしれないと、
ふと思ったのである。
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