422 / 689
第422話「ちょうど良いタイミングだ」
しおりを挟む
青年は一本取られたというような顔となり、
「すまん! 俺は、ダーグ。 ダーグ・アムレアン。戦士で盾役。クラン・デンテスのリーダーだ」
と笑顔で名乗った。
筋を通して貰えば何の問題もない。
魔物が跋扈する弱肉強食で無秩序な迷宮の深層だからこそ、
人間は礼儀を重んじた方が良いというのが、リオネルの考え方だ。
ダーグの笑顔に応えるが如く、リオネルも微笑む。
「ダーグ・アムレアンさんですか、初めまして。俺はソヴァール王国出身の冒険者リオネル・ロートレックです。魔法使いですが、剣、格闘技も使います」
はきはきと名乗り、簡単な自己紹介をしたリオネル。
最初に絡んで来たクラン・デンテスメンバーの男女は、
自分達のリーダーとリオネルのやりとりを聞き、ばつが悪そうな顔つきをしていた。
場の雰囲気で、ダーグは全てを認識したらしい。
「うむ、こちらこそ、初めましてだ。……どうやら、ウチのメンバーの行儀がなってなかったようだ。済まないな、ふたりに代わり、君へ謝罪しよう」
「いえいえ、そんな、分かって頂ければ」
リオネルの言葉を聞き、わだかまりはないと判断したようだ。
ダーグは、笑顔で親し気に話しかけて来る。
「ありがとう。リオネル・ロートレック君というのか。俺は25歳だが、君は?」
「18歳です」
「ほう、18歳か。俺は冒険者ギルド、ランクBのランカーだが、君は?」
「ランクAです」
「え、えええっ!? ラ、ラ、ランクA!? たった!? じゅ、18歳でかあ!?」
驚き、声がひどく大きくなったダーグ。
そんなダーグの声を聞き……
敷物の上に座り休んでいた法衣を着た魔法使いが立ち上がり、
ゆっくり歩み寄って来た。
中肉中背、年齢は50代半ば、ベテランという趣きだ。
魔法使いは、リオネルを見て微笑む。
「ダーグよ、悪いが横から失礼するぞ」
「え!? えええ!? マグナスさん」
割り込んで来た魔法使い……マグナスに驚くダーグ。
やはりふたりは顔見知りのようだ。
若きリオネルが超一流冒険者のランクA、突如乱入したマグナス。
戸惑うダーグをよそに、魔法使いマグナスはリオネルと対峙する。
「リオネル・ロートレック君。私はマグヌス・ブラント。クラン、アルゲントゥムのリーダーでランクBの魔法使いだ」
「初めまして、マグヌスさん。俺はリオネル・ロートレックです」
「ふむ、宜しくな、リオネル君。会う事が出来て大変光栄だ。私は、君が名乗るのを聞いて、おお!と思ったよ」
「あ、会う事が出来て大変光栄!? ど、どういう事ですか? マグヌスさん!」
傍らに立つダーグは、マグナスの物言いを聞き、驚いた。
対して、マグナスは頷き、
「ふむ、ダーグ。我がクランはな、先日受けた依頼遂行の為、ソヴァール王国ワレバットへ出張した。その際、リオネル君の噂を何度も何度も聞いたのだよ」
そう、はっきりと言い放ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「俺の噂をソヴァール王国でお聞きになったのですか?」
リオネルが尋ねれば、マグナスは再び頷く。
「ああ、リオネル・ロートレック君。風の属性魔法を始め、いくつもの高位魔法を使いこなし、たくましい魔獣を従える18歳の若きランクA冒険者。君のいろいろな噂を何回も聞いた」
「そうですか」
「うむ、リオネル君のふたつ名は荒くれぼっち、または疾風の弾丸。仲間とともに、難儀する数多の町村を救った事。怖ろしい魔物の大群を次々に打ち破った事。依頼を完遂して帰国する際、道すがら君が救った町や村のいくつかへ行き、そこの住民達から直接聞いたから間違いはない」
「成る程」
「住民は皆、救ってくれた君に感謝していた。中には英雄視する者も居た」
「はあ、俺は、やれる事をやっただけなんで」
「ふむ……そんな君が今、他国であるこのフォルミーカの迷宮に居る。それも単独で。荒くれぼっちのふたつ名通り、この迷宮へ修行でもしに来たのかね?」
「ええ、そんなところです」
……いつの間にか、リオネル、ダーグとクランメンバーの男女。
マグナスの周囲には、ふたつのクランメンバー全員が集まり、
リオネルを見ながら興味深そうに、しっかりと聞き耳を立てていた。
誰もが、単独で迷宮を探索するリオネルが登場し、気になっていたようである。
正直、マグナスが乱入し、突っ込みをしたのはとてもありがたいものであった。
目の前に居るダーグが尋ねて来たであろう、
いくつもの質問に対する回答をする手間が省けたからだ。
と、ここでリオネルの腹が空腹を報せるように「ぐうううう」と鳴った。
ちょうど良いタイミングだ。
「いろいろ誤解があったみたいですが、俺は気にしません。腹減ったんでメシを食って良いですか」
笑顔のリオネルは、山猫亭の弁当と水筒を持ち上げ、
夕食を摂りたいとアピールしたのである。
「すまん! 俺は、ダーグ。 ダーグ・アムレアン。戦士で盾役。クラン・デンテスのリーダーだ」
と笑顔で名乗った。
筋を通して貰えば何の問題もない。
魔物が跋扈する弱肉強食で無秩序な迷宮の深層だからこそ、
人間は礼儀を重んじた方が良いというのが、リオネルの考え方だ。
ダーグの笑顔に応えるが如く、リオネルも微笑む。
「ダーグ・アムレアンさんですか、初めまして。俺はソヴァール王国出身の冒険者リオネル・ロートレックです。魔法使いですが、剣、格闘技も使います」
はきはきと名乗り、簡単な自己紹介をしたリオネル。
最初に絡んで来たクラン・デンテスメンバーの男女は、
自分達のリーダーとリオネルのやりとりを聞き、ばつが悪そうな顔つきをしていた。
場の雰囲気で、ダーグは全てを認識したらしい。
「うむ、こちらこそ、初めましてだ。……どうやら、ウチのメンバーの行儀がなってなかったようだ。済まないな、ふたりに代わり、君へ謝罪しよう」
「いえいえ、そんな、分かって頂ければ」
リオネルの言葉を聞き、わだかまりはないと判断したようだ。
ダーグは、笑顔で親し気に話しかけて来る。
「ありがとう。リオネル・ロートレック君というのか。俺は25歳だが、君は?」
「18歳です」
「ほう、18歳か。俺は冒険者ギルド、ランクBのランカーだが、君は?」
「ランクAです」
「え、えええっ!? ラ、ラ、ランクA!? たった!? じゅ、18歳でかあ!?」
驚き、声がひどく大きくなったダーグ。
そんなダーグの声を聞き……
敷物の上に座り休んでいた法衣を着た魔法使いが立ち上がり、
ゆっくり歩み寄って来た。
中肉中背、年齢は50代半ば、ベテランという趣きだ。
魔法使いは、リオネルを見て微笑む。
「ダーグよ、悪いが横から失礼するぞ」
「え!? えええ!? マグナスさん」
割り込んで来た魔法使い……マグナスに驚くダーグ。
やはりふたりは顔見知りのようだ。
若きリオネルが超一流冒険者のランクA、突如乱入したマグナス。
戸惑うダーグをよそに、魔法使いマグナスはリオネルと対峙する。
「リオネル・ロートレック君。私はマグヌス・ブラント。クラン、アルゲントゥムのリーダーでランクBの魔法使いだ」
「初めまして、マグヌスさん。俺はリオネル・ロートレックです」
「ふむ、宜しくな、リオネル君。会う事が出来て大変光栄だ。私は、君が名乗るのを聞いて、おお!と思ったよ」
「あ、会う事が出来て大変光栄!? ど、どういう事ですか? マグヌスさん!」
傍らに立つダーグは、マグナスの物言いを聞き、驚いた。
対して、マグナスは頷き、
「ふむ、ダーグ。我がクランはな、先日受けた依頼遂行の為、ソヴァール王国ワレバットへ出張した。その際、リオネル君の噂を何度も何度も聞いたのだよ」
そう、はっきりと言い放ったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「俺の噂をソヴァール王国でお聞きになったのですか?」
リオネルが尋ねれば、マグナスは再び頷く。
「ああ、リオネル・ロートレック君。風の属性魔法を始め、いくつもの高位魔法を使いこなし、たくましい魔獣を従える18歳の若きランクA冒険者。君のいろいろな噂を何回も聞いた」
「そうですか」
「うむ、リオネル君のふたつ名は荒くれぼっち、または疾風の弾丸。仲間とともに、難儀する数多の町村を救った事。怖ろしい魔物の大群を次々に打ち破った事。依頼を完遂して帰国する際、道すがら君が救った町や村のいくつかへ行き、そこの住民達から直接聞いたから間違いはない」
「成る程」
「住民は皆、救ってくれた君に感謝していた。中には英雄視する者も居た」
「はあ、俺は、やれる事をやっただけなんで」
「ふむ……そんな君が今、他国であるこのフォルミーカの迷宮に居る。それも単独で。荒くれぼっちのふたつ名通り、この迷宮へ修行でもしに来たのかね?」
「ええ、そんなところです」
……いつの間にか、リオネル、ダーグとクランメンバーの男女。
マグナスの周囲には、ふたつのクランメンバー全員が集まり、
リオネルを見ながら興味深そうに、しっかりと聞き耳を立てていた。
誰もが、単独で迷宮を探索するリオネルが登場し、気になっていたようである。
正直、マグナスが乱入し、突っ込みをしたのはとてもありがたいものであった。
目の前に居るダーグが尋ねて来たであろう、
いくつもの質問に対する回答をする手間が省けたからだ。
と、ここでリオネルの腹が空腹を報せるように「ぐうううう」と鳴った。
ちょうど良いタイミングだ。
「いろいろ誤解があったみたいですが、俺は気にしません。腹減ったんでメシを食って良いですか」
笑顔のリオネルは、山猫亭の弁当と水筒を持ち上げ、
夕食を摂りたいとアピールしたのである。
0
お気に入りに追加
330
あなたにおすすめの小説
婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな
カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界
魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた
「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね?
それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」
小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く
塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう
一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが……
◇◇◇
親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります
(『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です)
◇◇◇
ようやく一区切りへの目処がついてきました
拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです
5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
異世界ライフは山あり谷あり
常盤今
ファンタジー
会社員の川端努は交通事故で死亡後に超常的存在から異世界に行くことを提案される。これは『魔法の才能』というチートぽくないスキルを手に入れたツトムが15歳に若返り異世界で年上ハーレムを目指し、冒険者として魔物と戦ったり対人バトルしたりするお話です。
※ヒロインは10話から登場します。
※火曜日と土曜日の8時30分頃更新
※小説家になろう(運営非公開措置)・カクヨムにも掲載しています。
【無断転載禁止】
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
魔拳のデイドリーマー
osho
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生した少年・ミナト。ちょっと物騒な大自然の中で、優しくて美人でエキセントリックなお母さんに育てられた彼が、我流の魔法と鍛えた肉体を武器に、常識とか色々ぶっちぎりつつもあくまで気ままに過ごしていくお話。
主人公最強系の転生ファンタジーになります。未熟者の書いた、自己満足が執筆方針の拙い文ですが、お暇な方、よろしければどうぞ見ていってください。感想などいただけると嬉しいです。
土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~
にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。
「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。
主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。
勇者召喚に巻き込まれた俺はのんびりと生活したいがいろいろと巻き込まれていった
九曜
ファンタジー
俺は勇者召喚に巻き込まれた
勇者ではなかった俺は王国からお金だけを貰って他の国に行った
だが、俺には特別なスキルを授かったがそのお陰かいろいろな事件に巻き込まれといった
この物語は主人公がほのぼのと生活するがいろいろと巻き込まれていく物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる