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第412話「はあ、俺、いつもこんな感じなんで」
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リオネルはボトヴィッドと完全に意気投合。
ふたりは夕方遅くまで、魔法談議に花を咲かせた。
まずは改めて、それぞれの経歴を話す。
リオネルは、ソヴァール王国の魔法学校に通い、卒業。
実家を出て、王都オルドルでしばし修行し、冒険者の街ワレバットで更に修行。
このフォルミーカへ来たと。
ボトヴィッドもアクィラ王国の魔法学校に通い、卒業。
生活の糧を得る為、すぐ冒険者となり、世界各地を冒険した後、
故国へ戻り、フォルミーカの迷宮を探索。
35歳で引退、魔道具店・クピディタースを開店し、現在に至ると。
だが……
リオネルとボトヴィッドは、いくら仲良くなっても……
術者の常識として、お互いに『全ての能力』を明かして話す事はなかった。
但し……
経歴の情報交換をして、ふたりとも共通点が多いと実感。
少年の頃から修行を積んだ魔法使いであり、生活の為に冒険者になった事は、
はっきりしているからだ。
また今回のやりとりだけでも、
リオネルとボトヴィッドともマルチな能力を持つ事が判明し、
更に親近感を持った。
それゆえふたりの話は盛り上がる。
魔法の基礎、応用。
属性、攻防支援。
知識、実践、実体験。
いくらやりとりしても話題は尽きない。
終いにはボトヴィッドが、
「リオネル!」
「はい!」
「お前はよお、やっぱすげえ魔法使いだ! 持てる全てが俺より遥かに上だしな!」
「いえいえ、そんな」
「謙遜するな! それによ! 更に話も上手いとくりゃ、魔道具店の店主が天職だ! がっぽり稼いで冒険者やめたらよ、この店で働け! 3年働いてくれたら俺は店を譲って隠居するから、後を継いでくれ」
と、かつての王都宿屋店主アンセルムのような事を言って来た。
リオネルは、しばし考え言う。
「あはは、考えておきますけど、その魔力のみなぎり方なら、ボトヴィッドさんは後10年くらいは平気だと思いますよ」
宿屋、魔道具店の店主も悪くはないが、自分にはやりたい事がまだまだ、
たくさんある。
ボトヴィッドが不快にならぬよう、角が立たないよう、言葉を選ぶしかない。
「分かった! ありがとよ! お前の言葉を励みにして、俺は後、10年は頑張る。迷宮探索がひと区切りついたら、また来てくれよ」
「はい、また伺いますよ。失礼致します」
つい長居をしてしまったが、リオネルは魔道具店・クピディタースを辞去。
地上の街へ……
「ただいま、戻りましたあ」
「お疲れ様。リオネルさん、お帰りなさい!」
「お帰りなさあい! お疲れ様あ! リオネルさん!」
宿泊している宿屋・山猫亭へ戻り、
相変わらずバタバタと多忙なダニエラとブレンダの手伝いをし、夕食を摂り、
「この日の活動は終了した」のである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝、山猫亭の手伝いをし、朝食を摂り、
リオネルは、冒険者ギルドへ。
1階の受付へ話を入れると、
すぐに専任業務担当者のエミリア・オースルンドが降りて来た。
相変わらずの笑顔。
少したれ目気味の目が、笑うと更に細くなっている。
「リオネル様! おはようございまあすっ!」
「おはようございます! エミリアさん」
「朝早くから、お疲れ様でえす! ご案内致します! さあ! 参りましょう!」
「今日も天気が良い」とか「体調はいかがですか?」とか、
当たり障りのない話をしながら、ふたりは3階へ。
先日同様、ランクA以上専用の特別応接室へ入る。
長椅子に座り、向かい合う。
エミリアは「にまっ」と可愛く笑う。
「リオネル様!」
「はい」
「いきなりですが、リオネル様って、とんでもないですね!」
「俺が? とんでもないですか?」
「はあい、私、ギルドのデータベースで、リオネル様の戦歴を拝見してびっくりしましたよお! スライムから始まって、ゴブリン、オーク、それらの上位種。虫系に不死者。ゴーレムみたいな疑似生命体。オーガ、ミノタウロス、マンティコアまで倒してるんですものお!」
「はあ、まあ、振り返れば、そんな感じです」
淡々と返すリオネル。
そんなリオネルを見て、思わずエミリアは黙り込む。
「…………………」
「ええっと、エミリアさん、どうか、しました?」
するとエミリアは苦笑。
「もう! 振り返ればって? リオネル様は、おやりになった事が凄すぎるのにい、当たり前のように、しれっと言って沸点低いでっすよねえ」
「はあ、俺、いつもこんな感じなんで」
「うふふ♡ まあ、良いでえす。ご存知でしょうが念の為。これまでにリオネル様が倒した魔物は全て、討伐依頼を出してありますからねえ。どんどん倒して、がっつり稼いでくださいねえ」
「はい、ありがとうございます。助かります」
「あ、そうそう! 私がピックアップした依頼をお見せする前に! リオネル様から頼まれていた、当支部発行のフォルミーカ迷宮の地図と街のガイドブックの最新版をお渡ししておきますねえ♡」
「ありがとうございます! 後でじっくり読み込みます」
「はあい! ぜひ有効活用してくださあい! 他で発行しているものと違い、当支部オリジナルの情報も入っていますからあ」
「フォルミーカ支部オリジナルの情報? 成る程、それは助かりますね」
「はあい! いろいろ役立つ情報がてんこ盛りですよお! そして! 当支部では、他にも有用な書籍を販売していますので、購入して、どうぞご活用くださあい!」
さすが、百戦錬磨のフォルミーカのマスター、アウグスト・ブラードが指名した
業務担当者。
ここぞとばかり、営業活動もガンガン来る。
無邪気な顔に似合わず、しっかりしたエミリアはそう言うと、
またも「にこにこっ」と笑ったのである。
ふたりは夕方遅くまで、魔法談議に花を咲かせた。
まずは改めて、それぞれの経歴を話す。
リオネルは、ソヴァール王国の魔法学校に通い、卒業。
実家を出て、王都オルドルでしばし修行し、冒険者の街ワレバットで更に修行。
このフォルミーカへ来たと。
ボトヴィッドもアクィラ王国の魔法学校に通い、卒業。
生活の糧を得る為、すぐ冒険者となり、世界各地を冒険した後、
故国へ戻り、フォルミーカの迷宮を探索。
35歳で引退、魔道具店・クピディタースを開店し、現在に至ると。
だが……
リオネルとボトヴィッドは、いくら仲良くなっても……
術者の常識として、お互いに『全ての能力』を明かして話す事はなかった。
但し……
経歴の情報交換をして、ふたりとも共通点が多いと実感。
少年の頃から修行を積んだ魔法使いであり、生活の為に冒険者になった事は、
はっきりしているからだ。
また今回のやりとりだけでも、
リオネルとボトヴィッドともマルチな能力を持つ事が判明し、
更に親近感を持った。
それゆえふたりの話は盛り上がる。
魔法の基礎、応用。
属性、攻防支援。
知識、実践、実体験。
いくらやりとりしても話題は尽きない。
終いにはボトヴィッドが、
「リオネル!」
「はい!」
「お前はよお、やっぱすげえ魔法使いだ! 持てる全てが俺より遥かに上だしな!」
「いえいえ、そんな」
「謙遜するな! それによ! 更に話も上手いとくりゃ、魔道具店の店主が天職だ! がっぽり稼いで冒険者やめたらよ、この店で働け! 3年働いてくれたら俺は店を譲って隠居するから、後を継いでくれ」
と、かつての王都宿屋店主アンセルムのような事を言って来た。
リオネルは、しばし考え言う。
「あはは、考えておきますけど、その魔力のみなぎり方なら、ボトヴィッドさんは後10年くらいは平気だと思いますよ」
宿屋、魔道具店の店主も悪くはないが、自分にはやりたい事がまだまだ、
たくさんある。
ボトヴィッドが不快にならぬよう、角が立たないよう、言葉を選ぶしかない。
「分かった! ありがとよ! お前の言葉を励みにして、俺は後、10年は頑張る。迷宮探索がひと区切りついたら、また来てくれよ」
「はい、また伺いますよ。失礼致します」
つい長居をしてしまったが、リオネルは魔道具店・クピディタースを辞去。
地上の街へ……
「ただいま、戻りましたあ」
「お疲れ様。リオネルさん、お帰りなさい!」
「お帰りなさあい! お疲れ様あ! リオネルさん!」
宿泊している宿屋・山猫亭へ戻り、
相変わらずバタバタと多忙なダニエラとブレンダの手伝いをし、夕食を摂り、
「この日の活動は終了した」のである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝、山猫亭の手伝いをし、朝食を摂り、
リオネルは、冒険者ギルドへ。
1階の受付へ話を入れると、
すぐに専任業務担当者のエミリア・オースルンドが降りて来た。
相変わらずの笑顔。
少したれ目気味の目が、笑うと更に細くなっている。
「リオネル様! おはようございまあすっ!」
「おはようございます! エミリアさん」
「朝早くから、お疲れ様でえす! ご案内致します! さあ! 参りましょう!」
「今日も天気が良い」とか「体調はいかがですか?」とか、
当たり障りのない話をしながら、ふたりは3階へ。
先日同様、ランクA以上専用の特別応接室へ入る。
長椅子に座り、向かい合う。
エミリアは「にまっ」と可愛く笑う。
「リオネル様!」
「はい」
「いきなりですが、リオネル様って、とんでもないですね!」
「俺が? とんでもないですか?」
「はあい、私、ギルドのデータベースで、リオネル様の戦歴を拝見してびっくりしましたよお! スライムから始まって、ゴブリン、オーク、それらの上位種。虫系に不死者。ゴーレムみたいな疑似生命体。オーガ、ミノタウロス、マンティコアまで倒してるんですものお!」
「はあ、まあ、振り返れば、そんな感じです」
淡々と返すリオネル。
そんなリオネルを見て、思わずエミリアは黙り込む。
「…………………」
「ええっと、エミリアさん、どうか、しました?」
するとエミリアは苦笑。
「もう! 振り返ればって? リオネル様は、おやりになった事が凄すぎるのにい、当たり前のように、しれっと言って沸点低いでっすよねえ」
「はあ、俺、いつもこんな感じなんで」
「うふふ♡ まあ、良いでえす。ご存知でしょうが念の為。これまでにリオネル様が倒した魔物は全て、討伐依頼を出してありますからねえ。どんどん倒して、がっつり稼いでくださいねえ」
「はい、ありがとうございます。助かります」
「あ、そうそう! 私がピックアップした依頼をお見せする前に! リオネル様から頼まれていた、当支部発行のフォルミーカ迷宮の地図と街のガイドブックの最新版をお渡ししておきますねえ♡」
「ありがとうございます! 後でじっくり読み込みます」
「はあい! ぜひ有効活用してくださあい! 他で発行しているものと違い、当支部オリジナルの情報も入っていますからあ」
「フォルミーカ支部オリジナルの情報? 成る程、それは助かりますね」
「はあい! いろいろ役立つ情報がてんこ盛りですよお! そして! 当支部では、他にも有用な書籍を販売していますので、購入して、どうぞご活用くださあい!」
さすが、百戦錬磨のフォルミーカのマスター、アウグスト・ブラードが指名した
業務担当者。
ここぞとばかり、営業活動もガンガン来る。
無邪気な顔に似合わず、しっかりしたエミリアはそう言うと、
またも「にこにこっ」と笑ったのである。
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