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第407話「リオネル・ロートレックよ。汝こそ、我の主にふさわしいのだ」
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「指輪にはきっぱり言われたが……意地になって、その後も、何度も何度も、数えきれないくらい……指輪の呪いを解こうともしていた。そういう経緯さ。くくくく」
ボトヴィッドは、そういうと、シニカルに笑った。
「しかし、リオネル・ロートレック! 40年経った今日、お前が現れ、この指輪は認めたんだ。お前こそが、自分の主にふさわしいとな!」
「…………………」
「…………………」
しばし、沈黙が店の中に満ちた。
先に口を開いたのはリオネルである。
「ボトヴィッドさん」
「おう、何だ」
「あの……質問しても宜しい?」でしょうか」
「おお、良いぜ」
ボトヴィッドの言葉を聞き、軽く息を吐くリオネル。
「この指輪の効能効果は、ボトヴィッドさんにも全くと言っていいほど分からない。ただ入手した経緯と、魔法使いの勘で、40年間、凄いお宝だと思っているだけなんですよね?」
「ああ、そうだ。でもリオネル。お前だってそうだろうよ。呪われているいくつかの品の中から、いきなりこの指輪を選んだんだからな!」
「まあ、……確かにそうです」
「俺はよ、お前の域には到底及ばない魔法使いだが……そういう勘は、同じ。そう思うぜ」
「…………………」
「うん! 論より証拠だ、リオネル。呪いを解呪したお前が、あっさり指輪を装着出来たなら、この指輪……インテリジェンスリングが認めたって事だぞ」
「分かりました。やってみます」
リオネルの右手人差し指には回復の指輪が装着されている。
その右手で、リオネルは指輪をつかみ、左手の中指へ……
すると!
なんということでしょう!
40年間、ボトヴィッドを頑なに拒んで来た指輪が、
すすすっ、とあっさり!
リオネルの左中指へ装着されたのである。
「おおおおおっ!!! や、や、や、やっぱりかあ!!! す、すっげえええ!!!」
先ほどの解呪同様、驚愕し、のけぞるボトヴィッド。
無理もない。
約40年間も指輪『番』をやって来たのだ。
万感胸に迫る思いがあるのかもしれない。
もしくは40年の呪縛から解き放たれた『解放感』だろうか。
何か吹っ切れたように、ボトヴィッドは、晴れやかな笑みを浮かべる。
「うん、俺は本当にすっきりした。お前に指輪を託し、未練も、思い残すもないし、後は好きな魔道具に囲まれて生きて行くさ」
しみじみとボトヴィッドが言った瞬間。
リオネルの心に聞き覚えのない声が聞こえて来た。
内なる声とは全く違う、感情のない無機質な声であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ボトヴィッドの言う通り、内なる声とは、自身の心の声。
淡々と事象を伝えて来るが、レベルアップや能力向上や獲得の際には、
喜びの波動を帯びている。
危険を察知し、回避を命じる際は、警戒、怯え、恐怖などを。
しかし、リオネルが今聞いている声は、重々しいのみで、
一切の感情がないのだ。
『全属性魔法使用者であり、地、風、水、火……世界の根幹を為す4大精霊より加護を受けた偉大なる魔法使い……』
『…………………』
『リオネル・ロートレックよ。汝こそ、我の主にふさわしいのだ』
リオネルは、ボトヴィッドの話を聞き、
この指輪が何らかのアプローチをして来るのでは?
と予想はしていた。
話しかけ、言葉が返って来るだろうか?と思いながら、リオネルは問う。
『ええっと、貴方はこの指輪ですか?』
リオネルが尋ねると、指輪は即座に正体を明かす。
『そうだ。我は、ゼバオトの指輪なり』
『え!? えええ!!?? ゼ、ゼバオトの指輪……って、ま、ま、まさか!』
ゼバオトの指輪!!!???
……リオネルは様々な書物、記録で、『ゼバオトの指輪』について、
目にした事がある。
ゼバオトの指輪は、古代の王が創世神の配下たる、
天界の天使長から与えられたという至宝、伝説中の伝説たる指輪である。
装着すれば、創世神の使徒に準ずる、
無限に近い絶大な、魔力、精神力、身体能力、攻撃力、防御力を得るという。
また指輪の素材は真鍮と鉄でできており、天界と通じるだけでなく、
世界数多の精霊、妖精、悪魔、悪霊などを使役する権威を与えると伝えられている。
その後、古代の王が亡くなり、凄まじい能力を発揮したゼバオトの指輪は、
いずこもなく、消えたと古文書には記載されていた。
ボトヴィッドが告げた言葉は、ずばり当たっていたのだ。
「俺は大が付く満足だった。魔法使いの勘が言っていたんだ。こいつは世界の至宝、とんでもない逸品だと」
つらつらと考えるリオネルへ指輪は告げる。
『我が主リオネル・ロートレックよ、聞くが良い』
『はいっ!』
『汝は我の装着により、最高の能力を得るとともに、我が真鍮の力にて、天界の使徒と深くよしみを通じ、我が鉄の力にて、世界の善悪たる霊を、ことごとく従えるであろう』
指輪の言葉は、伝承と一緒だ。
人間の仲間を伴わず、これからフォルミーカの迷宮へ挑むリオネルにとっては、
大きなアドバンテージとなるだろう。
また、この指輪が新たなる出会いを呼ぶかもしれない。
これから、どうなるのだろう?
そう思うとリオネルは、わくわくする。
『但し、我がゼバオトの指輪である事は誰にも告げてはならぬ。誓うか?』
最後に指輪は、自身の正体を秘する事を求めて来た。
当然リオネルは、誰にも言うつもりはない。
申し訳ないが、番人であったボトヴィッドへも。
『誓います! ゼバオトの指輪よ! 秘した貴方の力を得て、俺は更に自分を鍛え、精進します。数多の人々と出会い、支え、己の人生を全う致します!』
目を輝かせたリオネルは、左手の中指へ装着した指輪へ、
新たなる決意を語っていたのである。
ボトヴィッドは、そういうと、シニカルに笑った。
「しかし、リオネル・ロートレック! 40年経った今日、お前が現れ、この指輪は認めたんだ。お前こそが、自分の主にふさわしいとな!」
「…………………」
「…………………」
しばし、沈黙が店の中に満ちた。
先に口を開いたのはリオネルである。
「ボトヴィッドさん」
「おう、何だ」
「あの……質問しても宜しい?」でしょうか」
「おお、良いぜ」
ボトヴィッドの言葉を聞き、軽く息を吐くリオネル。
「この指輪の効能効果は、ボトヴィッドさんにも全くと言っていいほど分からない。ただ入手した経緯と、魔法使いの勘で、40年間、凄いお宝だと思っているだけなんですよね?」
「ああ、そうだ。でもリオネル。お前だってそうだろうよ。呪われているいくつかの品の中から、いきなりこの指輪を選んだんだからな!」
「まあ、……確かにそうです」
「俺はよ、お前の域には到底及ばない魔法使いだが……そういう勘は、同じ。そう思うぜ」
「…………………」
「うん! 論より証拠だ、リオネル。呪いを解呪したお前が、あっさり指輪を装着出来たなら、この指輪……インテリジェンスリングが認めたって事だぞ」
「分かりました。やってみます」
リオネルの右手人差し指には回復の指輪が装着されている。
その右手で、リオネルは指輪をつかみ、左手の中指へ……
すると!
なんということでしょう!
40年間、ボトヴィッドを頑なに拒んで来た指輪が、
すすすっ、とあっさり!
リオネルの左中指へ装着されたのである。
「おおおおおっ!!! や、や、や、やっぱりかあ!!! す、すっげえええ!!!」
先ほどの解呪同様、驚愕し、のけぞるボトヴィッド。
無理もない。
約40年間も指輪『番』をやって来たのだ。
万感胸に迫る思いがあるのかもしれない。
もしくは40年の呪縛から解き放たれた『解放感』だろうか。
何か吹っ切れたように、ボトヴィッドは、晴れやかな笑みを浮かべる。
「うん、俺は本当にすっきりした。お前に指輪を託し、未練も、思い残すもないし、後は好きな魔道具に囲まれて生きて行くさ」
しみじみとボトヴィッドが言った瞬間。
リオネルの心に聞き覚えのない声が聞こえて来た。
内なる声とは全く違う、感情のない無機質な声であった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ボトヴィッドの言う通り、内なる声とは、自身の心の声。
淡々と事象を伝えて来るが、レベルアップや能力向上や獲得の際には、
喜びの波動を帯びている。
危険を察知し、回避を命じる際は、警戒、怯え、恐怖などを。
しかし、リオネルが今聞いている声は、重々しいのみで、
一切の感情がないのだ。
『全属性魔法使用者であり、地、風、水、火……世界の根幹を為す4大精霊より加護を受けた偉大なる魔法使い……』
『…………………』
『リオネル・ロートレックよ。汝こそ、我の主にふさわしいのだ』
リオネルは、ボトヴィッドの話を聞き、
この指輪が何らかのアプローチをして来るのでは?
と予想はしていた。
話しかけ、言葉が返って来るだろうか?と思いながら、リオネルは問う。
『ええっと、貴方はこの指輪ですか?』
リオネルが尋ねると、指輪は即座に正体を明かす。
『そうだ。我は、ゼバオトの指輪なり』
『え!? えええ!!?? ゼ、ゼバオトの指輪……って、ま、ま、まさか!』
ゼバオトの指輪!!!???
……リオネルは様々な書物、記録で、『ゼバオトの指輪』について、
目にした事がある。
ゼバオトの指輪は、古代の王が創世神の配下たる、
天界の天使長から与えられたという至宝、伝説中の伝説たる指輪である。
装着すれば、創世神の使徒に準ずる、
無限に近い絶大な、魔力、精神力、身体能力、攻撃力、防御力を得るという。
また指輪の素材は真鍮と鉄でできており、天界と通じるだけでなく、
世界数多の精霊、妖精、悪魔、悪霊などを使役する権威を与えると伝えられている。
その後、古代の王が亡くなり、凄まじい能力を発揮したゼバオトの指輪は、
いずこもなく、消えたと古文書には記載されていた。
ボトヴィッドが告げた言葉は、ずばり当たっていたのだ。
「俺は大が付く満足だった。魔法使いの勘が言っていたんだ。こいつは世界の至宝、とんでもない逸品だと」
つらつらと考えるリオネルへ指輪は告げる。
『我が主リオネル・ロートレックよ、聞くが良い』
『はいっ!』
『汝は我の装着により、最高の能力を得るとともに、我が真鍮の力にて、天界の使徒と深くよしみを通じ、我が鉄の力にて、世界の善悪たる霊を、ことごとく従えるであろう』
指輪の言葉は、伝承と一緒だ。
人間の仲間を伴わず、これからフォルミーカの迷宮へ挑むリオネルにとっては、
大きなアドバンテージとなるだろう。
また、この指輪が新たなる出会いを呼ぶかもしれない。
これから、どうなるのだろう?
そう思うとリオネルは、わくわくする。
『但し、我がゼバオトの指輪である事は誰にも告げてはならぬ。誓うか?』
最後に指輪は、自身の正体を秘する事を求めて来た。
当然リオネルは、誰にも言うつもりはない。
申し訳ないが、番人であったボトヴィッドへも。
『誓います! ゼバオトの指輪よ! 秘した貴方の力を得て、俺は更に自分を鍛え、精進します。数多の人々と出会い、支え、己の人生を全う致します!』
目を輝かせたリオネルは、左手の中指へ装着した指輪へ、
新たなる決意を語っていたのである。
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