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第384話「自分の一挙手一投足が、地、風、水、火の4大精霊達には、 全て把握されている」

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リオネルは頷き、冷気で眠っている?ファイアドレイクへ、

ばしゅ! ばしゅ!

と、気付けの炎弾を撃ち込んだ。

ぐは!?

鋼鉄の鎧ともいえる、重装甲の皮膚に覆われた体躯にとって、
軽度の炎弾など、撫でるようなレベルの接触に過ぎない。

ファイアドレイクは、気が付き、目をゆっくり開けた。

意識を取り戻したファイアドレイクへ、パイモンは言う。

『目覚めたか、我が眷属よ。勝負はあった。もし手加減されねば、お前は、あっさりと倒されていただろう』

『…………………』

パイモンの言葉をファイアドレイクは、じっと聞いていた。

ふっと、面白そうに笑うパイモン。

『このリオネル・ロートレックはな、お前の新たなあるじにふさわしい。今後、忠実に付き従え』

心より敬愛する一族の長、主パイモンがリオネルの実力を認め、命じるのだ。

当の眷属ファイアドレイクも、手玉に取られたことを、身をもって知ってもいる。
それゆえ、異論はない。

ファイアドレイクは、改めて咆哮する。

ぐはあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!

これまでのように『威嚇』ではない。
敢えて言うのなら『歓声』である。
ファイアドレイクは、新たな主に仕え、戦う旅に出る喜びに打ち震えているのだ。

『このファイアドレイクを他の従士同様、召喚にて呼び出し、使役が済めば異界へ帰還させればよかろう』

ここでリオネルが口をはさむ。

『あの、パイモン様。つきましてはお願いが……』

『うむ、分かっておる! 私はお前達の従士が供をする際、人間に脅威を感じさせない為、普段本体を見せぬ擬態である事は知っておるぞ!』

パイモンの言う通り、リオネルが率いる仲間達は、
『本来の姿』を見せてはいない。

体長15m以上ある魔獣ケルベロス、オルトロスの兄弟。
同じく体長20m以上の凍竜フロストドレイク
鳥の王ジズに至っては、大空を覆うほどの超巨体だ。

『しかし、凍竜と同じく、小さな飛竜に変化では芸がない』

パイモンは「にやっ」と笑い、ファイアドレイクへ呼びかける

『我が眷属よ! 火の精霊となり、リオネル・ロートレックに付き従え! リオネルの命により、飛竜でも本来の姿たる火竜でも、その大きさも含め、千変万化の対応をするが良い!』 

ぐはあああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!

了解致しました!!!

と応えるが如く、ファイアドレイクは大きく咆哮。

ぶるぶるぶる! と身体を震わせると、

ぱっと! 体長50cmほどの『火に包まれたとかげの姿』となった。
火の精霊……サラマンダーである。

ファイアドレイクが擬態したサラマンダーは、すいすいっと軽快に周囲を飛び回り、

しゃ~うっ!

と独特な声で咆哮。

ごは~~っっっっ!!!

と、天へ向かい、灼熱の炎を吐いたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

火の精霊、サラマンダーに擬態したファイアドレイクを見て、
パイモンは満足そうに笑みを浮かべる。

『どうだ、リオネル。これならばフォルミーカの迷宮でも、思う存分使う事が出来るだろうよ』

『はい、ありがとうございます!』

リオネルは素直に礼を述べたが、内心、苦笑した。
自分の一挙手一投足が、地、風、水、火の4大精霊達には、
全て把握されていると感じたからだ。

気分が良くなったのか、パイモンは更に饒舌となる。

『リオネルよ』

『はい』

『お前には、我が火の魔法を一層使って貰いたい』

『はい、心がけます』

『極大攻撃魔法「爆炎」は狭い迷宮においては、使うケースが限定されるかもしれぬ。だが、お前に与えた火の加護は、お前が使う既存の火属性魔法の威力が3倍増、反面、魔力使用量は半減という、大いなる特典がある!』

『え? 本当ですか?』

『うむ、それだけではない! お前はこれまで数多の火属性魔法を学び、知識のみ習得しておる』

『確かにそうです』

そう、リオネルは子供の頃から魔法を学び、学校へも通い、
知識のみは豊富である。

しかし、学んでも学んでも、発動、習得という結果には結びつかなかった。

『ただ、いくど実践に臨んでも、発動成功……習得とはならなかった』

『それも、おっしゃる通りです』

『しかし、この火の加護を得た事で、お前の「習得能力」は大幅にアップしておる。改めて実践に臨み、短い修行期間で、容易に習得へ至るであろう』

『それは、ありがたいです!』

ここでリオネルは、ハッと気づく。
習得能力大幅アップは、火以外、他の属性魔法にも当てはまるのではないかと。

……後で、試してみようと思う。
わくわくして来る。

『リオネル! 加えて、お前は火属性魔法、火炎攻撃を全て退ける「火炎全無効」も習得しておる! つまり、火界王たる私パイモンに準ずる能力を身につけているのだ!』

パイモンはそう言うと、満面の笑みを浮かべたのである。
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