上 下
309 / 696

第309話「おい! 早く寝ようぜ! リオネル!」

しおりを挟む
リオネルと村長と打合せする『農地復興作業』の話は、助役、自警団団長、副団長も加わり、大いに盛り上がっていた。

村長曰はく、噂話では業績を聞いていたが、
リオネル自身がここまで、農業知識を有していると思っていなかったらしい。

実際、農民でしか知りえない専門知識をリオネルは持ち得ており、
加えて、様々な問題解決に関しても、対応し、実践もしていたのだ。

こうなると、村長は『農地復興作業』以外にも相談したいと言い出し、
助役、自警団団長、副団長も即座に賛同した。

リオネルは、以前モーリス達と『町村支援施策』を行っていた時のメニュー表を取り出して、村長達へ見せた。

村長達がメニュー表を読んで行くのと同時に、リオネルも読み上げる。

「ええっと……魔物の排除、討伐、農地を外敵から防ぐ防護用の岩壁の建設と整備、荒らされた農地の開墾、畝づくり、作物の種付け、植え付けの各手伝い、灌漑設備建設の協力、町村の外壁建設、ワレバッドの街からの救援資材の輸送と搬入、または依頼地からワレバットへの荷物送付、自警団への武技の指導、昼夜の警備方法の指導、及び周囲のパトロール方法の指導、墓地の除霊、浄化他……って感じでしょうか」

メニュー表を読み終わり、リオネルの口からも直に聞き、驚いた村長以下4人。

「おお! す、凄い数ですね! な、何でもありですよ! す、素晴らしい!」

感嘆する村長に対し、リオネルは微笑む。

「このメニュー表以外の案件でもご相談して頂ければ、実行可能なものは対応させて頂きます。もしも俺達の都合や実施可能な内容が折り合わない場合、ギルドに相談してください。クランモーリスか、モーリス商会とおっしゃって頂ければ、経験豊富な者が対応可能かと思います」

最後にしっかりと師モーリスチームの宣伝もしたリオネル。

対して、村長達は4人で相談。

しばらくして、話はまとまり……

結局、農地の整地、開墾、畝づくりに加え、
作物の種付け、植え付けの各手伝い、灌漑設備建設の協力、農地を外敵から防ぐ防護用の岩壁の建設と整備という大量発注をしてくれた。
また、作業料金も、相場に比べて数割も安いと大喜びしてくれたのだ。

但し、表向きリオネルは風の魔法使いという事となっている。

なので、灌漑設備建設の協力における水属性魔法、農地を外敵から防ぐ防護用の岩壁の建設と整備等の為に行使する地属性魔法は……
「属性魔法を込めた、魔法杖で行う」と告げておく。

実際は、リオネル自身が魔法杖を発動体にして各属性魔法を行使するのだが。

一方、段取り、作業内容、流れ、勝手が分からない事もあり、
ジェロームは、リオネルの傍らで聞き役に徹していた。

しかし、村長達が何度も何度もお礼を言うのを聞き、
晴れやかな笑顔となっていたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

村長達が持参した料理と飲み物は美味しかった。

オーク討伐も無事完遂。

打合せも上手く行った事もあり、会食は大いに盛り上がり、
リオネルとジェロームは、満足感に満ちあふれた。

一方、村長達4人も上機嫌となり、帰って行った。

さてさて!
明日も早くから行動開始。
予定もびっしりで大忙しだ。

夜明け前に起床。
朝一番で村長達と砦へ行き、完遂確認。
砦から農地へ行き、村民達と合流し、農作業を行う。

作業は多岐にわたり、明日中には終わらないかもしれない。

「今日はもう寝よう」と、早めに就寝を決めたリオネルとジェローム。

ふたりは寝袋を準備し、並べて、潜り込む。

魔導灯の照度を落とし、リオネルが眠りに入ろうとした時。

ジェロームが話しかけて来る。

「リオネル」

「ん?」

「……悪い、リオネル。寝る前に……少しだけ、話しても良いか?」

「ああ、構わないよ、何だい?」

「あのさ、リオネル。冒険者って、魔物討伐以外にもいろいろな事をやる、いや、やらされると思っていて、実際に討伐以外の仕事をやる事になったけれど……」

「ああ、そうだな」

「無理やり命令されて、やらされるんじゃなく、われてやる! 君達だから、ぜひ頼みたい! と言われ、必要とされるって……本当に良いよなあ! 素敵だなあ!」

「うん、ジェローム。俺も全く同じだ。そう思うよ」

「そ、そうか!」

「ああ、それに今日は命を奪う討伐だったけれど、明日は農作業。大地を耕し、命をはぐくむ作業なんだ」

「おお、リオネル! 良い言葉だな! 命を奪うのではなく! 大地を耕し、命を育む作業かあ! 俺さ、生まれて初めてやるよ、農作業! いろいろと教えてくれよな、リオネル!」

「ああ、任せろ! それに作業するのは俺達だけじゃないぞ」

「作業するのは俺達だけじゃないぞ……か、そうだな! 村長さん以下村民達も一緒に働くんだよな!」

「ああ、そうさ! 多くの村民達とともに、俺達は汗を流す。そうだ! 俺だけじゃなく、村長さん達にもいろいろ、農作業を教えて貰えば良いさ」

「ああ、リオネル。俺、さっきの食事会で村長さん達と更に仲良くなったし、大丈夫さ! ガンガン教えて貰うよ!」

「だな! ジェローム、それにさ。農作業中、もしくは農作業後……また、たくさんの笑顔が見られるぜ」

「おお! 分かるよ! 村民達の笑顔か! すっげえ楽しみだ! おい! 早く寝ようぜ! リオネル!」

……自分から話しかけておいて、おい! 早く寝ようぜか?
仕方のない奴だ。

苦笑したリオネルであったが、ジェロームは疲れもあってか、
すぐに寝入ってしまった。

元騎士のジェロームが、村民とともに働く農作業を楽しみにしていると分かり、
リオネルは、とても嬉しくなり、自分もすぐ眠りへ入ったのである。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い

平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。 ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。 かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

7個のチート能力は貰いますが、6個は別に必要ありません

ひむよ
ファンタジー
「お詫びとしてどんな力でも与えてやろう」 目が覚めると目の前のおっさんにいきなりそんな言葉をかけられた藤城 皐月。 この言葉の意味を説明され、結果皐月は7個の能力を手に入れた。 だが、皐月にとってはこの内6個はおまけに過ぎない。皐月にとって最も必要なのは自分で考えたスキルだけだ。 だが、皐月は貰えるものはもらうという精神一応7個貰った。 そんな皐月が異世界を安全に楽しむ物語。 人気ランキング2位に載っていました。 hotランキング1位に載っていました。 ありがとうございます。

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

処理中です...