上 下
305 / 689

第305話「え!? ええええええ!!?? ほ、ほのおっ!!??」

しおりを挟む
立ち入った事情こそ聞いてはいないが……
お互いにシンパシーを感じ、心の絆を結んだリオネルとジェローム。

気持ちを新たにし、さくさくと砦本館内を進んで行く。
目標は最奥の司令官室。

途中、残党のオークが何体も潜んでいたが……
魔獣ケルベロスと同アスプに追い立てられ、全てが呆気なく倒された。

そんなこんなで……リオネルとジェロームは、ノーバトル。
満を持して、司令室前に到着した。

それまで先行していたケルベロスとアスプも、
主の指示通り、突入などせず、リオネルとジェロームの到着をじっと待っていた。

ぽっかりあいた司令室の大きな入り口からは、
上位種特有のおぞましく怖ろしい気配が漏れ出て来る。

索敵……魔力感知をせずとも分かる。

オークキングは間違いなく中に居る。

レベルは、軽く50オーバー。
下手をすれば60近いと思われる。

しかし、リオネルは全く臆していない。

否、
むしろ逆である。

これまで戦った事のない難敵へ思う存分に挑んでみたい!
そう思っている。

司令官室の前は、広さも高さも充分ある大きな空間となっている。
オークキングを相手に、リオネルがひと暴れするにはもってこいだ。

司令官室前に陣取っても、オークキングは出て来ない。

リオネルはケルベロスとアスプへ命じ、オークキングを挑発させ、引っ張り出した。
もしもダメだったら、アスプの睡眠誘因とスキルを使い、戦闘不能にし、あっさり倒すつもりだった。

いよいよ、リオネルが、オークキングと対峙する。

ぐおはあああああああああああああああ!!!!!!

ケルベロスとアスプの魔獣軍団に無理やり追い立てられ、
配下を全て倒された、オークキングは目を血走らせ、怒り狂っていた。
体長は5m、体重は軽く500㎏を超える堂々たる体躯である。

てめえらを喰ってやる!
骨まで残らず喰ってやるう!!

殺意と憎悪の念が、リオネル達に激しく放たれていた。

しかし、リオネルは平然としている。

彼は『内なる声』が告げた課題を忘れてはいない。
なので、思わず心の中でつぶやく。

『まさか、ここでお前に会えるとは思っていなかったよ。出来れば、オークジェネラルも居れば、なおベストだったな』

リオネルが心の内なる声から与えられた課題とは……
オークジェネラル、そしてオークキング……

更に上位2種と戦い、圧倒的な勝利を収めれば、
お前は、オークには無敵となるギフトスキル
『オークハンター』を習得出来るというもの。

順番が逆になっちまったが……
こいつを圧倒的な強さで倒せば、俺は『オークハンター』習得にリーチだ。

と,その時。

オークキングが、怒りで身体を震わせ、奇妙な声で咆哮する。

きえおおおおおおおおおおお!!!!!

すると、オークキングの目の前に、
何と何と何と!
異様な形状をした『魔方陣』が現れたのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

オークキングが生成した魔方陣は不気味に蒼く輝いている。

魔法使いでもない魔物が魔方陣を呼び出す?

とジェロームはびっくりした。

しかし、リオネルは驚いたもののすぐに納得した。
魔法学校で、そして冒険者ギルドで受講した召喚魔法の授業、講義で、
教授された事を思い出したのだ。

「ジェローム、落ち着け。大丈夫だ。俺は魔法学校の授業で習った!」

「え? 魔法学校の授業で習ったあ?」

「ああ! 習った! これが、高位の魔物もしくは上位種が使う、召喚魔法に近い魔物特有のスキル、『仲間を呼ぶ』って奴だ」

「はあ!? しょ、召喚魔法に近い!? ま、魔物特有のスキル!? な、な、仲間を呼ぶう!?」

「ああ、己よりやや低いレベルの、同種か異種の個体を呼ぶのさ。俺も生まれて初めて見たよ」

「え!? お、己よりやや低いレベルの、同種か異種の個体を呼ぶう!? や、やばくないか!? それぇ!! オ、オークキングだろ!!」

仲間を呼ぶ……のロジックを聞き、動揺するジェローム。
オークの中で最悪最強なのがオークキング。
であれば、『召喚』されるのは!?

ぐわあああああ!!!!!

果たして!
魔方陣から、おぞましい咆哮とともに現れたのは!

オークキングのすぐ下位に位置するオークジェネラルであった!!

体格がひとまわり小さいだけ。
身長2m50cm、体重400kgオーバー、やはり堂々たる体躯である。

「うっわ!! 何だ!? オークキングと変わらない!! でかいぞぉ!! こいつう!!」

しかし!

リオネルは満面の笑みである。

「おお! ラッキー! コイツはオークのナンバー2! オークジェネラルだ!」

「はあ!!?? オークのナンバー2! オークジェネラルでラッキーだとぉ!!」

何故!?
強敵が出現して、大喜びするのか?
ジェロームには全く意味不明、分からない!

だが、リオネルの表情から笑みは消えない。
待ち人来る!
という会心の笑みである。

「まあ、見ていろよ、ジェローム」

リオネルはそう言うと、ケルベロスとアスプに、
ジェロームを護るように命じた。

自身は、オークの上位種2体を倒すべく、神速で体内魔力を上げて行く。

そして、両手を掲げると、

ごおっ!! ぼおっ!!

直径1mほどの炎が浮かび上がった。
訓練の結果、リオネルは炎弾を一度に2発放てるようになっていたのだ。

しかし、リオネルが火属性魔法発動!?

「え!? ええええええ!!?? ほ、ほのおっ!!??」

リオネルが『風の魔法使い』だと聞き、認識していたジェロームは、
驚きと戸惑いを隠せない。

「はっ!」

気合一閃!!

スキル『貫通撃!!』の魔力も込められた燃え盛る火球は、
リオネルの手からびしっ!と、放たれ、

どごおおおおおおお!!!!
どばんんんんんんん!!!!

凄まじい異音をたて、オークキング、オークジェネラルのどてっぱらを、
見事にぶち抜いていたのである。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

幼馴染み達が寝取られたが,別にどうでもいい。

みっちゃん
ファンタジー
私達は勇者様と結婚するわ! そう言われたのが1年後に再会した幼馴染みと義姉と義妹だった。 「.....そうか,じゃあ婚約破棄は俺から両親達にいってくるよ。」 そう言って俺は彼女達と別れた。 しかし彼女達は知らない自分達が魅了にかかっていることを、主人公がそれに気づいていることも,そして,最初っから主人公は自分達をあまり好いていないことも。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

処理中です...