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第266話「宴の夜②」
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『仕事の打合せ』が終わったモーリス、クレマンとエレーヌ。
歓喜に沸く、宴の中へ戻って行った。
立食形式のテーブルで、料理を食べながら、楽しそうに談笑を始める。
ますます盛り上がる宴の中で、意外にも……
エレーヌの愛娘アンナは浮かない表情である。
「リオにいちゃん! モーリスおじちゃん! ミリアンお姉ちゃん! カミーユにいちゃん! ねえ、今夜は食べて飲んで歌って踊ろ!」
と、満面の笑みで、宴を楽しみにしていたはずなのに……全く元気がない。
祖父と母には目もくれずに、違う方向へ、視線が向いていた。
歌と踊りの輪の中で、村民達から大人気、
『引っ張りだこ』のリオネルを寂しそうに見つめている。
やがて……宴の輪から、ふたりの人影が現れた。
いいかげん『ひと休み』しようと……抜け出して来たミリアンとカミーユである。
「!?」
「!?」
ふたりは、元気がないアンナに気付き、「一体、どうしたのか?」と近寄って来た。
既に……
昼間のやり取りで、3人は完全に打ち解け、とても仲良くなっている。
ミリアンとカミーユは心配そうに、アンナへ声をかける。
「アンナちゃん、どうしたの?」
「どこか、身体の具合でも、悪いっすか? アンナちゃん」
「ううん、何でもない。身体も悪くない……」
アンナはそう答えるが、元気がないのは一目瞭然である。
「でも元気がないわ」
「そうっす。なんなら、リオさんと踊って来たらどうっすか? アンナちゃんなら、リオさんは絶対断らないっす」
ミリアンとカミーユがかけた言葉の答えを返さず、アンナは言う。
「折角、帰って来てくれたのに……リオ兄ちゃん、また行っちゃうんだよね」
アンナは……とても寂しかったのだ。
リオネルが旅立ち、時が流れ、ようやく立ち直ったと思ったのに……
いつか再会をと、心から願っていたのに……
その願いは、めでたく叶い、リオネルと再会が出来た。
なのに、リオネルがすぐ旅立つと聞き、
アンナは再び、大きな寂しさに囚われてしまったのである。
そんなアンナの気持ちは……
同じくリオネルと別れる事となる、ミリアンとカミーユにもよく理解出来た。
アンナは更に言う。
「……さっき、私とママの身の上話、そしてリオ兄ちゃんと出会った話もしたでしょ?」
ミリアンとカミーユは無言で頷いた。
「…………………」
「…………………」
「……私とママで、王都の聖堂へ行って、死んだパパのお参りをして、その帰り道でオークどもに襲われ、リオ兄ちゃんに助けて貰ったって……」
「…………………」
「…………………」
「リオ兄ちゃんはね、凄く強かったわ。襲って来たオーク3体を『がい~ん』って、あっという間にやっつけた……だから、私とママは助かったの……」
「…………………」
「…………………」
「そしてリオ兄ちゃんは、おじいちゃんと一緒に、アルエット村を襲っていたオークの巣穴へ行って、全部やっつけてくれた」
「…………………」
「…………………」
「村に、平和を取り戻してくれた!」
「…………………」
「…………………」
「それだけじゃない! 私とママはね、おじいちゃんと、ず~っと仲たがいしていたの。でもでも! リオ兄ちゃんが、仲直りもさせてくれた」
「…………………」
「…………………」
「今は……3人仲良く、アルエット村のみんなと暮らしてる!」
「…………………」
「…………………」
「私は……アンナは、大好きなママは居るけど……同じくらい大好きなパパが死んで、……居なくなって凄く寂しかった」
「…………………」
「…………………」
「リオ兄ちゃんが、しばらく家族になってくれて、暮らした日々は、とっても楽しくて、幸せだった」
「…………………」
「…………………」
「アンナは、リオ兄ちゃんが大好き! でもまだ8歳だから、結婚出来ない。婚約者……にもなれないよね」
「…………………」
「…………………」
「だから、ママと結婚して、リオ兄ちゃんには、パパになって欲しかった。でも! ママはパパしか愛せなくて、上手く行かなかった……」
「…………………」
「…………………」
「ミリアンお姉ちゃんと、カミーユお兄ちゃんも、リオ兄ちゃんと出会って、旅をして来て、楽しかったって言ってたね。……離れ離れになるって、寂しいよね……」
いろいろな想いが、各自の心に交錯し……
ふうううう~~……
底知れぬ寂しさが込み上げ、全員が大きなため息を吐いた。
その中でアンナを認めていたミリアンが周囲を見回し、
3人以外誰も居ない……のを確認してから、話しだした。
「カミーユ、あんた英雄の迷宮、地下2階層で、リオさんへ告白した、私の『想い』を聞いてたでしょう? 翌朝の約束もね」
ミリアンが言ったのは、リオネルと『5年後の約束』を交わした告白の事である。
※第179話から第182話参照。
対して、カミーユは、ばつが悪そうに頷く。
「き、聞いていたっす!」
やっぱりね!
という表情で、ミリアンは頷いた。
「これから、私が女子同士、アンナちゃんとお話しするから、あんたは黙って聞いている事!」
「ね、姉さん、お、俺! せ、席外さなくて良いっすか?」
「構わないよ、そのまま居て、聞いてて、その後、あんたに頼みたい事もあるから!」
と、ミリアンは言い、
「アンナちゃん、私と一緒の約束に乗らない?」
「や、約束? ミリアンお姉ちゃんと? アンナが?」
戸惑うアンナに対し、
「ええ、私ミリアンとアンナちゃんが一緒に、リオ兄ちゃんとする約束よ!」
と、きっぱり言い切ったのである。
歓喜に沸く、宴の中へ戻って行った。
立食形式のテーブルで、料理を食べながら、楽しそうに談笑を始める。
ますます盛り上がる宴の中で、意外にも……
エレーヌの愛娘アンナは浮かない表情である。
「リオにいちゃん! モーリスおじちゃん! ミリアンお姉ちゃん! カミーユにいちゃん! ねえ、今夜は食べて飲んで歌って踊ろ!」
と、満面の笑みで、宴を楽しみにしていたはずなのに……全く元気がない。
祖父と母には目もくれずに、違う方向へ、視線が向いていた。
歌と踊りの輪の中で、村民達から大人気、
『引っ張りだこ』のリオネルを寂しそうに見つめている。
やがて……宴の輪から、ふたりの人影が現れた。
いいかげん『ひと休み』しようと……抜け出して来たミリアンとカミーユである。
「!?」
「!?」
ふたりは、元気がないアンナに気付き、「一体、どうしたのか?」と近寄って来た。
既に……
昼間のやり取りで、3人は完全に打ち解け、とても仲良くなっている。
ミリアンとカミーユは心配そうに、アンナへ声をかける。
「アンナちゃん、どうしたの?」
「どこか、身体の具合でも、悪いっすか? アンナちゃん」
「ううん、何でもない。身体も悪くない……」
アンナはそう答えるが、元気がないのは一目瞭然である。
「でも元気がないわ」
「そうっす。なんなら、リオさんと踊って来たらどうっすか? アンナちゃんなら、リオさんは絶対断らないっす」
ミリアンとカミーユがかけた言葉の答えを返さず、アンナは言う。
「折角、帰って来てくれたのに……リオ兄ちゃん、また行っちゃうんだよね」
アンナは……とても寂しかったのだ。
リオネルが旅立ち、時が流れ、ようやく立ち直ったと思ったのに……
いつか再会をと、心から願っていたのに……
その願いは、めでたく叶い、リオネルと再会が出来た。
なのに、リオネルがすぐ旅立つと聞き、
アンナは再び、大きな寂しさに囚われてしまったのである。
そんなアンナの気持ちは……
同じくリオネルと別れる事となる、ミリアンとカミーユにもよく理解出来た。
アンナは更に言う。
「……さっき、私とママの身の上話、そしてリオ兄ちゃんと出会った話もしたでしょ?」
ミリアンとカミーユは無言で頷いた。
「…………………」
「…………………」
「……私とママで、王都の聖堂へ行って、死んだパパのお参りをして、その帰り道でオークどもに襲われ、リオ兄ちゃんに助けて貰ったって……」
「…………………」
「…………………」
「リオ兄ちゃんはね、凄く強かったわ。襲って来たオーク3体を『がい~ん』って、あっという間にやっつけた……だから、私とママは助かったの……」
「…………………」
「…………………」
「そしてリオ兄ちゃんは、おじいちゃんと一緒に、アルエット村を襲っていたオークの巣穴へ行って、全部やっつけてくれた」
「…………………」
「…………………」
「村に、平和を取り戻してくれた!」
「…………………」
「…………………」
「それだけじゃない! 私とママはね、おじいちゃんと、ず~っと仲たがいしていたの。でもでも! リオ兄ちゃんが、仲直りもさせてくれた」
「…………………」
「…………………」
「今は……3人仲良く、アルエット村のみんなと暮らしてる!」
「…………………」
「…………………」
「私は……アンナは、大好きなママは居るけど……同じくらい大好きなパパが死んで、……居なくなって凄く寂しかった」
「…………………」
「…………………」
「リオ兄ちゃんが、しばらく家族になってくれて、暮らした日々は、とっても楽しくて、幸せだった」
「…………………」
「…………………」
「アンナは、リオ兄ちゃんが大好き! でもまだ8歳だから、結婚出来ない。婚約者……にもなれないよね」
「…………………」
「…………………」
「だから、ママと結婚して、リオ兄ちゃんには、パパになって欲しかった。でも! ママはパパしか愛せなくて、上手く行かなかった……」
「…………………」
「…………………」
「ミリアンお姉ちゃんと、カミーユお兄ちゃんも、リオ兄ちゃんと出会って、旅をして来て、楽しかったって言ってたね。……離れ離れになるって、寂しいよね……」
いろいろな想いが、各自の心に交錯し……
ふうううう~~……
底知れぬ寂しさが込み上げ、全員が大きなため息を吐いた。
その中でアンナを認めていたミリアンが周囲を見回し、
3人以外誰も居ない……のを確認してから、話しだした。
「カミーユ、あんた英雄の迷宮、地下2階層で、リオさんへ告白した、私の『想い』を聞いてたでしょう? 翌朝の約束もね」
ミリアンが言ったのは、リオネルと『5年後の約束』を交わした告白の事である。
※第179話から第182話参照。
対して、カミーユは、ばつが悪そうに頷く。
「き、聞いていたっす!」
やっぱりね!
という表情で、ミリアンは頷いた。
「これから、私が女子同士、アンナちゃんとお話しするから、あんたは黙って聞いている事!」
「ね、姉さん、お、俺! せ、席外さなくて良いっすか?」
「構わないよ、そのまま居て、聞いてて、その後、あんたに頼みたい事もあるから!」
と、ミリアンは言い、
「アンナちゃん、私と一緒の約束に乗らない?」
「や、約束? ミリアンお姉ちゃんと? アンナが?」
戸惑うアンナに対し、
「ええ、私ミリアンとアンナちゃんが一緒に、リオ兄ちゃんとする約束よ!」
と、きっぱり言い切ったのである。
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