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第256話「神代の時代から、今まで!ありえなかった事だ!」

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『うふ♡ リオ、またねっ!』

ティエラは再び右手をびしっ! と突き出し、リオネルへVサインを送った。

そして、10mほどジャンプ、空中で華麗に一回転しながら、
「ぱっ!」と、煙のように消えてしまった。

こうして……
高貴なる4界王のひとり、
地界王アマイモンの愛娘たる、地の最上級精霊ティエラは去った。

煙のように消え去ったのは、彼女が得手とする『転移魔法』によるものであろう。

詠唱はなし、発動は神速。
とんでもなく鮮やかな転移魔法の行使であった。

リオネルは「さすがだな!」と感服すると同時に、
ティエラと邂逅出来て本当に良かったと心底思った。

ティエラはアリスティド同様、リオネルにとても期待し、
大いなる地の加護を与え、熱いエールを送ってくれたからだ。

ティエラと話している間、
ケルベロスとアスプは、遠巻きにして様子をうかがっていたようだ。

そろそろ戻しても構わないだろう。

リオネルは周囲を索敵。
いろいろな意味で邪魔者が居ないのを確かめると、
念話で帰還を呼びかけた。

……数分ほどで、ケルベロスとアスプは戻って来た。

リオネルはアスプをいたわり、魔法の腕輪へ収納。

残ったケルベロスと話す。

無論、念話である。

ケルベロスは、ティエラ出現の際の慌てふためきぶりは消え、
何とか、落ち着いている。

ただ、まだ興奮が冷めやらぬようで、大きく息を吐く。

『ふう、さすがに驚いたぞ。まさか、ティエラ様がいきなり現れるとはな』

ケルベロスが言うと、リオネルはホッとした顔つきである。

『ああ、俺もびっくりした』

そして更に言う。

『何とか、ティエラ様に嫌われずにすんだというか、地の加護を賜り、期待しているし、ともに修行を頑張ろうと励まされたよ』

さすがにティエラ様を、
「勉学に励む魔法学校の同級生のように気安く思った」
とは言えない。

苦笑したリオネル。

対して、ケルベロスは再び、興奮して言う。

『う、うむ! しょ、初対面で! ティ、ティエラ様にお気に召して頂けるなど! そ、その上! お、大いなる地のご加護をくださるとは! と、とんでもなく! め、名誉な事なのだぞっ!』

『え? とんでもなく名誉な事?』

『う、うむっ! あ、主よ! 人間如きと言ったら申し訳ないが! さ、最上級精霊たる存在が! は、初めて会った人間へ、地のご加護をくださり! そ、そのように励まされるなど! 神代かみよの時代から、今まで! ありえなかった事だ!』

ケルベロスは、たいそう驚いたようだ。
言葉の端々に、興奮が表れている。

『そ、そうか!』

『うむ! ティエラ様はな、現在、修行中の身であらせられる。いずれは昇華され、ゆくゆくは、最上級精霊から地母神へおなりになる、偉大なお方なのだ』

『うん、ティエラ様って、本当に凄い方だとは思った。心身が引き締まるな』

『うむ、ティエラ様のご期待に沿うよう、主は切磋琢磨すれば宜しい!』

『了解!』

という事で、何やかんやあったが……
懐中魔導時計を見れば、まだ時間は、午後3時前……

加護も授かったし、もう少し転移魔法の修行をしよう!

あと約1時間だけ、午後4時まで頑張る!
それで今日は切り上げだ!
モーリスさん達を呼びに行って、農地と岩壁を見て貰おう!

転移トランジション!」

おお! 5m移動!

あれだけ発動して修行したのに!
3mの壁を越えられなかったのに!

いきなり!
プラス2mの距離延長だ!

ええ?
たった2mの距離延長なのに?

と、笑うなかれ。

リオネルは真剣である。

よし!

転移トランジション!」

おお! 10m移動!

先ほどより、プラス5mの距離延長だ!

転移トランジション!」

おお! 一気に50m移動!

うん!
先ほどより、プラス40mの距離延長だ!

よし!
行ける!

リオネルは何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も!!!
転移魔法を発動し続けた。

移動距離も、100m、300m、500mと距離延長に成功。
最後には、約1kmの転移移動に成功していた。

当然、農地への帰還も全く問題がなかった。

やはり、ティエラの地の加護の力は、とんでもなく大きかったといえよう。

多分、転移魔法以外の地の魔法も発動が円滑に、
効能効果も著しく増しているに違いない。

そして、リオネルの体内魔力も凄まじい。

これだけ転移魔法を連発しても、魔力の消費は大した事はなく、
全体内魔力を100%としたら、たった10%未満しか減っていなかった。

それも1時間後には再び補填され、体内魔力は満タンとなっている。

この間、ケルベロスは農地で満足そうに見守っていた。
なので、余計な侵入者もなかった。

自身のみの転移が上手く行った。
なので、リオネルは自分とともに、
『岩』を『荷物』に見立てての同時転移の訓練を行う。

更に『岩』だけを送る訓練も。

最後には、ケルベロスと同時に転移を行う。

距離は出ない。
だが、全て上手く行った。

今の状況は、
世界の果てまで一瞬で飛ぶ!
という壮大な目標までは、とてつもなく遠い。

しかし、千里の道も一歩よりと言う!
この1kmは、最初の一歩だ!

と、リオネルは大満足であった。
そして、ティエラへ大いに感謝し、
存在を励みにしようと、改めて決意する。

やがて、午後4時となり……

「よし、モーリスさん達を迎えに行こう! 農地と岩壁の確認をして貰うんだ!」

完璧な結果とは言えないが、
『大きな収穫』を得たリオネルは、笑顔で村へ戻った。

そして、まずはモーリスを連れて行き、農地と岩壁を確認。
30分後、リオネルに命じられたケルベロスが護衛を兼ねて農地まで先導、
ミリアン、カミーユに連れられ、村長と助役が、新装なった村の農地を訪れた。

リオネルが開拓した新たな農地、農地全体を囲む頑丈な岩壁を見て、
村長と助役はとても大喜びした。

当然モーリスも、リオネルが生成した岩壁を事前に念入りに確認、100点満点を出した。

そして嘘も方便とばかりに、
「いかにも自分が魔法を使った」ように偽ったのは、言うまでもなかったのだ。
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