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第248話「そうか! 俺も負けていられない!」

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朝食の際、出されたリオネルの提案とは、
以前請け負った、ワレバットの街周辺の『町村支援施策』を再び行う事である。

補足しよう。

この町村支援施策は元々、リオネルが発案したものだ。

リオネル達が、これまでに経験した業務、行使可能な魔法、
スキル等の、あるとあらゆる技能を駆使。
多岐にわたって、難儀する町村を支援する施策である。

具体的に言のうなら、一番分かりやすいのが人々に対し害を為す『魔物の討伐』
また魔物どもが巣くう本拠地の探索、完全討伐も行い、災いのもとを断つ。

そして、町村の周囲、または農地を魔物、獣、山賊など、
外敵から防ぐ防護用の岩壁の建設と整備、その外敵に荒らされた農地の復興。
更に、新規の農地の開拓、畝づくり、作物の種付け、植え付けの各手伝い、
灌漑設備建設の協力。

ワレバットの街からの救援資材の輸送と搬入、依頼地からワレバットへの荷物送付、自警団への武技の指導、昼夜の警備方法の指導、及び周囲のパトロール方法の指導。
墓地の除霊、浄化まで……

更に新たなリクエストがあれば、要相談で対応するというものだ。

リオネルが『町村支援施策』の話を切り出した時、
モーリス、ミリアン、カミーユは大いに同意し、賛成した。

以前の時と同様に、リオネルの意図を充分に読み取り、理解したからである。

モーリス達3人はいずれ、キャナール村へ移住する事となる。
これからは、冒険者引退後の『将来』を見据えねえばならない。

しっかりと経験を積み、技能の修練にもなり、
お金もがっつり稼ぐには『町村支援施策』で経験値を積むのが、
最適の方法だと、リオネルは考えたのだ。

リオネルにも大きなメリットがあった。

自分も、モーリス達同様いずれどこかの地で暮らす際、
この経験は必ず役に立つ。

更に更に!
このような依頼を出して来るのは、大抵が郊外の町村である。

これらの町村には人目のない場所が多々あり、
『転移魔法』など、仕事の傍ら、リオネルが秘密で行う修行には最適な環境なのだ。

さてさて!
ふたつめの提案は、この『町村支援施策』を行いながら……
その合間に、冒険者ギルド総本部での各種講座を受講し、
各自で希望する分野のレベルアップをするもの。

冒険者ギルド総本部での各種講座は、現役冒険者の為だけでなく、
引退後の冒険者の生活支援も実施している。
新生活を始める為の各種講座もあるからだ。

そんな話となり、自分が何の講座を受講するのか、盛り上がった。

リオネルはといえば、自分はやはり魔法使い、
それゆえ魔法を極めたいと望んでいた。

希望したのはまず上級召喚魔法の応用講座だ。

これは、いつの日にかアリスティド様を『英霊召喚』したい為というのは勿論、
今後、魔獣ケルベロス、魔獣アスプ以外、様々なシーンで戦う際、探索をする際、
手助けをしてくれる『従士』が必要だと感じた為だ。

ケルベロス、アスプは陸戦タイプ。
『陸地』以外、空中、高所、水上、水中など、
どこでどのように戦い、探索するのか。

いろいろと考えたら、違う環境に適応出来る様々なタイプの従士が居た方が、
便利であり、死やケガのリスクも減ると、リオネルは判断したのである。

また、とんでもなく高難度らしいが……
2体以上の『複数同時召喚』も習得したいとも思った。

何故なら、いつ何時、元のぼっちに戻るかもしれない。
戦う相手、状況次第ではあるが、
その時にケルベロス、アスプ達以外の味方も居た方が、
先ほどの理由と同じく、リスクは当然少なくなるからだ。

他にも、属性を品物へ宿す付呪魔法エンチャントも、
もっと広く深く学びたいとも考える。

今や『全属性魔法使用者オールラウンダー』に完全覚醒したリオネル。
本当は、風以外の属性魔法を学びたい。
地、水、火……それぞれの究極魔法を学び、習得したいと切に願う。

しかし、リオネルが『全属性魔法使用者オールラウンダー』である事は、
まだオープンには出来ない。

表向き?の属性である『風属性の魔法』はおおっぴらに学べる。

だが、習得も出来ないのに、
風の属性以外の魔法を真剣に学んでいたら、目立つし、勘ぐられてしまう。

下手をしたら、『変人扱い』されてしまうかもしれない。

全属性魔法使用者オールラウンダー』と、
ばれても構わないと、覚悟だけはしている。

いつかは、自分が『全属性魔法使用者オールラウンダー』なのだと、世間に知られる日が必ず来る。

しかし、まだまだその時期ではないと思うのだ。

つらつらと考えるリオネル。

ここでモーリスから、声をかけられる。

「リオ君」

「は、はい」

「実は、考えていた事がある」

「え? モーリスさんが考えていた事……ですか?」

「ああ! 私だけでなく、私、ミリアン、カミーユの3人は、冒険者を兼務しながら、商人になろうと思っている!」

「え? 商人ですか?」

以前カミーユが商人にも興味があると話していた事はある。

記憶を呼び覚ますリオネルへ、ミリアンとカミーユも、

「うん! そうなの、リオさん!」

「そうっす! 師匠と姉さんと3人で、たまに相談していたっす!」

大きな声で、ふたりとも肯定の反応をした。

ふたりの反応を受け、モーリスが話す。

「どうして、そう考えたのか。……何故なら、キャナール村にはちゃんとした店がない。そこで、私達3人で万屋よろずやのような店を開けば、やりがいもあり、村にも村民達にも、大きく貢献出来ると考えたのさ」

「おお、成る程、万屋ですか」

補足しよう。
万屋よろずやとは、人々の生活に必要である、
様々な品物を販売している店である。
つまり、現代のコンビニエンスストアに近い。

モーリスが言う。

「うむ! リオ君、私達3人が、ワレバットの街でいろいろな商品を仕入れ、そのまま輸送し、キャナール村で商売をする。ミリアンの希望する飲食店も小規模な店から併設して、スタート出来るかもしれない。もし何かの事情が出来て、冒険者を引退しても、商人は続けられるからね。それに、キャナール村以外での商売も考えているよ!」

続いて、ミリアンとカミーユも、

「うん! リオさん! だから私達3人はね、冒険者、商人、そして農民の3つを兼務する事になると思う! 受け入れてくれるキャナール村に貢献しつつ、多くの人達を助けながら、人生を楽しむの!」

「リオさん! 姉さんの言う通りっす! 3つの仕事を兼ねるなんて、凄く忙しくなるだろうし、大変だけど、必ずやり抜くっす! だから俺は、今のうちにしっかりと鍛え、一人前のシーフを目指しつつ、いろいろな勉強をしておくっす!」

最後に締めるのは、やはりモーリスである。

「うむ! だから3人で、依頼のかたわら、冒険者ギルド総本部の商人講座で学ぼうと思う! いっぱい稼ぎ、いっぱい勉強する! 私など46歳の『商人見習い』さ! はははははは!」

モーリス、ミリアン、カミーユ、3人の表情は楽しそうだが、真剣でもある。
現実的かつ明るい未来を見据え、全員の目は「きらきら」と輝いていた。

リオネルが知らないうちに、モーリス達は夢を持ち、話し合っていたのだ。

そうか!
俺も負けていられない!

もっともっと、頑張らなきゃ!

そして、『自分の将来』をしっかりと考えよう!

リオネルは、前向きな波動を放つ3人に刺激され、決意を新たにしていたのである。
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