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第244話「クロージング」
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『うむ! 最後に、我が言葉を贈るぞ! 力なき正義は悪。正義なき力もまた悪だ! では! またな!』
最後に、アリスティドから別れの言葉が心に響いた瞬間。
リオネルの身体は「すううっ」と、軽くなった。
これは!?
地下8階層で体験したテレポーターの感覚と全く同じだ!
転移魔法は慣れないうち、転移時に少し気分を害する?
いやいや!
そんなもんじゃなかったですよ、アリスティド様。
俺はあの時、気を失ってしまいましたから。
しかし、今回は大丈夫、耐性が出来たようだ。
でもちょっとだけ、くらくらする。
と感じたリオネル。
気が付けば、とある迷宮の小ホールに立っていた。
リオネルは、だんだん視界がはっきりして来た。
周囲は……闇である。
否!
自分を含め、魔導灯の明かりが6つあった。
革鎧に装着した魔導灯の明かりらしい。
リオネルはすかさず、索敵を発動。
周囲を探索。
……敵は居なかった。
そして周囲から放たれるのは人間の気配のみ。
自分以外に、
モーリス、ミリアン、カミーユ、そしてブレーズ、ゴーチェの気配がある。
……一行全員の気配があった。
生命反応に異常はない。
ダメージを受けた気配も伝わっては来ない。
そして、どうやら全員無事、ただ気を失っているようである。
そして、現在リオネル達一行が位置する場所は、英雄の迷宮、地下6階層。
更に地下5階層へ上がる階段付近の小ホール……
他の冒険者の気配は……無いようだ。
……とりあえず、危険はない。
すぐに状況を認識した。
アリスティドが発動した『転移魔法』は成功したらしい。
お願いした通り、リオネル達一行を、
宿がある地下街、5階層フロアの『手前』に転送してくれたのだ。
安堵し、「ふう」とリオネルは軽く息を吐いた。
だが、あまり、のんびりはしていられない。
地下6階層ならば、
このフロアの敵、上位種を含めたオークどもが襲って来るやもしれない。
この無防備の状態から早く脱しなければ。
同時にこれから何をすべきか、リオネルは、ぱぱぱぱぱぱ! と計算する。
すぐに答えが出た。
まずは、照明魔法。
『ルークス!』
ぽわ!
リオネルが照明魔法の言霊を念じると、
やや魔力を抑えた『魔導光球』が「そっ」と闇に浮かび上がった。
周囲を改めて見た。
モーリス、ミリアン、カミーユ、ブレーズ、ゴーチェが、
それぞれ少し離れた状態で倒れていた。
リオネルは、愛用の懐中魔導時計を見た。
午後1時少し過ぎ……
これなら、『遅いランチ』が間に合うな。
余裕が出て、ふっと笑ったリオネル。
アリスティドから授かり、習得したばかりの転移魔法を試したい……
のは、やまやまだが、後回し。
次は、魔獣ケルベロスと同アスプ6体を呼び戻す。
念話で連絡を入れ、ケルベロスは異界へ帰還。
アスプは戻って来たら、収納の腕輪へ。
そして、モーリス達各自へ回復魔法『全快』を行使した上で、
特異スキル『リブート』補正プラス40で再起動! つまり『復活』させる!
リオネルは次々に、己が組んだ『予定スケジュール』を進行していったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
約30分後……
『予定スケジュール』は全て終了した。
すぐに事態を飲み込んだ魔獣ケルベロスは6階層へ速攻で戻り、
リオネル達の周囲を警戒&巡回。
その間に、アスプ6体を収納の腕輪へ回収。
回収後、すぐにモーリスを始めとして、次々と各自を『再起動』させた。
但し、レベル70のブレーズは、
特異スキル『リブート』補正プラス40数回の重ね掛けでようやく再起動、
一行の中で一番最後に『復活』していた。
その際、リオネルは余計な事を言わず、自分が一番先に目覚め、
『起こしただけ』をしれっと装っていた。
それゆえ、目覚めたブレーズは、
自分が「一番最後に気が付いた」と知り、苦笑していた。
最下層『地下10階層』において……
ソヴァール王国建国の開祖アリスティド・ソヴァールの記念碑前で祈りをささげていたのに、現在はいきなり『地下6階層』へ居ると知り、
リオネル以外の全員は当然、大いに驚愕した。
「これはどういう事でしょう? 私達は間違いなく地下10階層に居たはずです……それが、気を失い、いきなり6階層に居るとは、不思議ですね」
「はい! ブレーズ様、確かにそうです」
「ええ、ゴーチェ。地下10階層で、テレポーターの罠が発動するとも思えません。それらしき罠も気配も皆無でした」
首を傾げるブレーズとゴーチェ主従。
更にブレーズは、厳しい表情となる。
視線はリオネルへ向けられていた。
「全員がうつむき、目を閉じ、アリスティド様のご冥福を祈る中、私だけが異変を感じ、気が付いたようです。リオネル君の身体がまばゆく発光していましたよ」
「「「「え~~~!!!???」」」」
ブレーズの発言を聞き、
モーリス、ミリアン、カミーユ、そしてゴーチェが改めて驚き、
リオネルをじっと凝視した。
ブレーズは更に話を続ける。
「これはもしや!!?? と思い、リオネル君がご啓示を賜るのを中断させては、まずいので、敢えて声はかけませんでしたが……ま、まさか!?」
対して、リオネルはアリスティドの指示通り、
「はい、アリスティド・ソヴァール様から、『後押しされました』……つまり、励ましのご啓示を賜りました。という感じですか。それ以上は、何も申し上げられません……」
リオネルは、古の英雄、
ソヴァール王国建国の開祖、アリスティド・ソヴァールから啓示を受けた。
そして、主のローランド同様、内容を殆ど語らなかった。
ブレーズは、大きく「はああ」とため息を吐き、苦笑する。
リオネルが口ごもるのも、ブレーズは納得するしかない。
「成る程、そうですか。……ちなみに私ブレーズ・シャリエへは、アリスティド・ソヴァール様からのご啓示はありませんでした。どなたか、リオネル君の他に、ご啓示を賜った方は、おりますか?」
「……………………」
返って来たのは無言の沈黙のみ……肯定の返事はなかった。
「ははは、ローランド様の時に続き、私はまた傍観者でしたか。お前は、もっと修行を積め! という、アリスティド様の励ましだと、受け取っておきますね」
ブレーズはそう言うと、気持ちを切り替えたらしい。
「多分、この状況は、アリスティド様がその偉大なるお力で、私達をこの場所まで送ってくださったのでしょう。さあ、ではリオネル君、『アリスティド様からご啓示を賜った者』として最後をびしっ! と締めてください」
「最後を締めてくれ」というブレースの指示を聞き、
リオネルは、
「ブレーズ様、了解です! では皆さん! 俺達は、冒険者ギルド総本部から依頼を受けた公式地図の確認は無事終了しました! 5階層へ戻り、休養後、ワレバットの街へ戻りましょう!」
と、見事な物言いで『クロージング』したのである。
最後に、アリスティドから別れの言葉が心に響いた瞬間。
リオネルの身体は「すううっ」と、軽くなった。
これは!?
地下8階層で体験したテレポーターの感覚と全く同じだ!
転移魔法は慣れないうち、転移時に少し気分を害する?
いやいや!
そんなもんじゃなかったですよ、アリスティド様。
俺はあの時、気を失ってしまいましたから。
しかし、今回は大丈夫、耐性が出来たようだ。
でもちょっとだけ、くらくらする。
と感じたリオネル。
気が付けば、とある迷宮の小ホールに立っていた。
リオネルは、だんだん視界がはっきりして来た。
周囲は……闇である。
否!
自分を含め、魔導灯の明かりが6つあった。
革鎧に装着した魔導灯の明かりらしい。
リオネルはすかさず、索敵を発動。
周囲を探索。
……敵は居なかった。
そして周囲から放たれるのは人間の気配のみ。
自分以外に、
モーリス、ミリアン、カミーユ、そしてブレーズ、ゴーチェの気配がある。
……一行全員の気配があった。
生命反応に異常はない。
ダメージを受けた気配も伝わっては来ない。
そして、どうやら全員無事、ただ気を失っているようである。
そして、現在リオネル達一行が位置する場所は、英雄の迷宮、地下6階層。
更に地下5階層へ上がる階段付近の小ホール……
他の冒険者の気配は……無いようだ。
……とりあえず、危険はない。
すぐに状況を認識した。
アリスティドが発動した『転移魔法』は成功したらしい。
お願いした通り、リオネル達一行を、
宿がある地下街、5階層フロアの『手前』に転送してくれたのだ。
安堵し、「ふう」とリオネルは軽く息を吐いた。
だが、あまり、のんびりはしていられない。
地下6階層ならば、
このフロアの敵、上位種を含めたオークどもが襲って来るやもしれない。
この無防備の状態から早く脱しなければ。
同時にこれから何をすべきか、リオネルは、ぱぱぱぱぱぱ! と計算する。
すぐに答えが出た。
まずは、照明魔法。
『ルークス!』
ぽわ!
リオネルが照明魔法の言霊を念じると、
やや魔力を抑えた『魔導光球』が「そっ」と闇に浮かび上がった。
周囲を改めて見た。
モーリス、ミリアン、カミーユ、ブレーズ、ゴーチェが、
それぞれ少し離れた状態で倒れていた。
リオネルは、愛用の懐中魔導時計を見た。
午後1時少し過ぎ……
これなら、『遅いランチ』が間に合うな。
余裕が出て、ふっと笑ったリオネル。
アリスティドから授かり、習得したばかりの転移魔法を試したい……
のは、やまやまだが、後回し。
次は、魔獣ケルベロスと同アスプ6体を呼び戻す。
念話で連絡を入れ、ケルベロスは異界へ帰還。
アスプは戻って来たら、収納の腕輪へ。
そして、モーリス達各自へ回復魔法『全快』を行使した上で、
特異スキル『リブート』補正プラス40で再起動! つまり『復活』させる!
リオネルは次々に、己が組んだ『予定スケジュール』を進行していったのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
約30分後……
『予定スケジュール』は全て終了した。
すぐに事態を飲み込んだ魔獣ケルベロスは6階層へ速攻で戻り、
リオネル達の周囲を警戒&巡回。
その間に、アスプ6体を収納の腕輪へ回収。
回収後、すぐにモーリスを始めとして、次々と各自を『再起動』させた。
但し、レベル70のブレーズは、
特異スキル『リブート』補正プラス40数回の重ね掛けでようやく再起動、
一行の中で一番最後に『復活』していた。
その際、リオネルは余計な事を言わず、自分が一番先に目覚め、
『起こしただけ』をしれっと装っていた。
それゆえ、目覚めたブレーズは、
自分が「一番最後に気が付いた」と知り、苦笑していた。
最下層『地下10階層』において……
ソヴァール王国建国の開祖アリスティド・ソヴァールの記念碑前で祈りをささげていたのに、現在はいきなり『地下6階層』へ居ると知り、
リオネル以外の全員は当然、大いに驚愕した。
「これはどういう事でしょう? 私達は間違いなく地下10階層に居たはずです……それが、気を失い、いきなり6階層に居るとは、不思議ですね」
「はい! ブレーズ様、確かにそうです」
「ええ、ゴーチェ。地下10階層で、テレポーターの罠が発動するとも思えません。それらしき罠も気配も皆無でした」
首を傾げるブレーズとゴーチェ主従。
更にブレーズは、厳しい表情となる。
視線はリオネルへ向けられていた。
「全員がうつむき、目を閉じ、アリスティド様のご冥福を祈る中、私だけが異変を感じ、気が付いたようです。リオネル君の身体がまばゆく発光していましたよ」
「「「「え~~~!!!???」」」」
ブレーズの発言を聞き、
モーリス、ミリアン、カミーユ、そしてゴーチェが改めて驚き、
リオネルをじっと凝視した。
ブレーズは更に話を続ける。
「これはもしや!!?? と思い、リオネル君がご啓示を賜るのを中断させては、まずいので、敢えて声はかけませんでしたが……ま、まさか!?」
対して、リオネルはアリスティドの指示通り、
「はい、アリスティド・ソヴァール様から、『後押しされました』……つまり、励ましのご啓示を賜りました。という感じですか。それ以上は、何も申し上げられません……」
リオネルは、古の英雄、
ソヴァール王国建国の開祖、アリスティド・ソヴァールから啓示を受けた。
そして、主のローランド同様、内容を殆ど語らなかった。
ブレーズは、大きく「はああ」とため息を吐き、苦笑する。
リオネルが口ごもるのも、ブレーズは納得するしかない。
「成る程、そうですか。……ちなみに私ブレーズ・シャリエへは、アリスティド・ソヴァール様からのご啓示はありませんでした。どなたか、リオネル君の他に、ご啓示を賜った方は、おりますか?」
「……………………」
返って来たのは無言の沈黙のみ……肯定の返事はなかった。
「ははは、ローランド様の時に続き、私はまた傍観者でしたか。お前は、もっと修行を積め! という、アリスティド様の励ましだと、受け取っておきますね」
ブレーズはそう言うと、気持ちを切り替えたらしい。
「多分、この状況は、アリスティド様がその偉大なるお力で、私達をこの場所まで送ってくださったのでしょう。さあ、ではリオネル君、『アリスティド様からご啓示を賜った者』として最後をびしっ! と締めてください」
「最後を締めてくれ」というブレースの指示を聞き、
リオネルは、
「ブレーズ様、了解です! では皆さん! 俺達は、冒険者ギルド総本部から依頼を受けた公式地図の確認は無事終了しました! 5階層へ戻り、休養後、ワレバットの街へ戻りましょう!」
と、見事な物言いで『クロージング』したのである。
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