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第240話「英雄との問答③」
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アリスティドの語る、
全属性魔法使用者の素晴らしさと危うさを聞き……
リオネルは大きく頷いた。
『難しいお話ですが、アリスティド様のおっしゃる事は俺、分かるような気がします』
『ふむ! では、もっとシンプルに言おう。ほとんどの全属性魔法使用者は、己の能力を己自身の為だけに使うといえよう』
『ほとんどの全属性魔法使用者は、己の能力を己自身の為に使う!? ほ、本当ですか?』
『ははははははははははははははははは!!!!!! ここまで話して、今更、嘘をついてどうする』
『は、はい』
『100の行いがあるとしよう! そのうち、ほとんどの全属性魔法使用者は己の能力を使い、自身だけの為に9割を行う。しかし、リオネル! お前は違うぞ!』
『お、俺は、ち、違いますか?』
『うむ! これまでの己の行動を、しかと振り返ってみよ! お前の行動は真逆だ。自身が1割、他人を助け、救い、支える為に9割という配分だ』
アリスティドの話を聞き、これまでの記憶をたぐったが……
リオネルは引っかかる、納得が出来ない内容があった。
『あの……アリスティド様』
『何だ? 話の腰を折るな。今、良いところだぞ』
『いえ、これまでの己の行動を、しかと振り返ってみましたが……』
『うむ! それで?』
『はい、確かにいろいろな人に尽くしたい、支えたいと、力及ばずながら、精一杯頑張ったつもりですけど……』
『うむ、うむ、身におぼえがあろう』
『でも、アリスティド様。……自身の為がたった1割、他人を支える為に9割も、というのは、さすがにないです。ひどく「盛り過ぎ」だと思いますが……』
そう!
この『割合』こそが、リオネルの引っかかる部分。
出会った人々を助けたい、支えたいと願うリオネル。
だが、極端すぎた。
ここまで、自分は滅私奉公をしてはいない。
対して、アリスティドは、
『ま、まあ、細かい事は良いではないかあ! 我は、リオネル! 素直で正直なお前が、とても気に入った! だから助けたい! それで良いではないか!』
と、いきなり話を「すり替え」て来た。
あ、ごまかしたと、リオネルは思い、苦笑。
だが、ここは沈黙は金。
シンプルにアリスティドが自分に対し、好意を持ったと考え、喜ぶ。
『はい! アリスティド様に深く感謝致します。とても嬉しいです』
『ふむ! お前を助ける為に何をしようかと考えていた』
『何をしようかと、ですか?』
『うむ! 結論は出た!』
『結論が出ましたか?』
『うむ! 人間を制約するものは数多ある。あくまで私見ではあるが、中でも我は時間と距離が最も大きいと考える……かつて散々悩み、何とか解消したいと思ったものだ』
『時間と距離が人間を制約する……まあ、分かります。俺も、大空を飛ぶ鳥を見て、うらやましいなあと思った事がありますから』
『うむ、我もそうだ! 自由に真っ青な大空を飛び、瞬時に違う場所へ移動。この広大な世界を、縦横無尽に動きたい! 数多の人々と出会いたい! それゆえ、偉大なる精霊達に邂逅し、厳しくとも修行をしたい。そして、何とか失われた魔法を習得したい! と日々、努力したのだ!』
『成る程……精霊にですか?』
『うむ! それで、我はとうとう至高の最上級精霊のひとりに邂逅し、教えを受け、修行に励む事が出来た! 結果、たったひとつだけだが、失われた究極の古代精霊魔法を習得する事が出来た』
ここで、リオネルは昨夜ブレーズが告げた言葉を思い出す。
「最近、とある貴族家で発見された古文書の記載です。『開祖様は精霊の力を欲し、失われた魔法を追い求め、発見。英雄の迷宮最下層へその力を封印した』とあったそうです」
「しかし、開祖様が封印したという、その力は誰も見つけてはおりません。開祖様の啓示を受けられたローランド様を始め、これまで啓示を受けた方が失われた魔法を得た……という記録は一切ないのです」
古文書の記載は真実であった。
精霊の力……
失われた魔法……
英雄の迷宮へ、『その力』を封印した……
全属性魔法使用者は、『ストイック過ぎる求道者』になり、真理を求めるとの話だが……理解出来る気がしたのだ。
リオネルは、『失われた究極の古代の精霊魔法』習得への気持ちが高ぶって来る。
『おお! 至高の最上級精霊に出会い、失われた究極の古代精霊魔法を習得された!? そ、 そ、それは! す、凄いですねっ! う、うらやましい
ですっ!』
リオネルの興奮が伝わったらしく、アリスティドの声も高まる。
『うむ! うらやましいだろう! 凄いだろう! 我が人々から敬われたのは、強さのみではない! 失われた究極の古代精霊魔法も習得し、人間の能力を超えたからなのだ』
『成る程! 納得です! 本当に素晴らしいですよ』
『うむ! 我は、『神出鬼没』だと聞いた事があろう』
『はい、それは確かに。ここにいらっしゃったかと思えば、アリスティド様は、全く違う場所へ現れる、とお聞きしております』
補足しよう。
神出鬼没とは、自由自在に素早く現れたり、隠れたりする事だ。
とんでもなく巧妙に出没し、所在が分からない、出没の変幻自在な様である。
『『神出鬼没』の記述は、表向きにそうしただけだ! 友や配下、民達へは、我は、精霊の力により、たぐいまれな身体能力強化魔法を身につけ、特に「走力」が優れているからだ、と伝えていた』
『成る程! 表向きは、精霊の力により、たぐいまれな身体能力強化魔法を身につけ、特に「走力」が優れているから……そういう理由となっていましたか』
『うむ! それでな! リオネルよ! 最初に我が申した言葉を思い出せ! 何と言った?』
『はい、 ……お前の夢、我が後押ししてやろう! と、おっしゃいました!』
『うむ! その言葉、今こそ実行しよう! リオネル・ロートレックよ! お前に我が習得した、失われし、転移魔法を授けよう! そして目指す夢を果たす、大きな力とするが良い!』
『え、えええっ!? て、て、て、転移魔法!!??』
何と何と!!
古の英雄、ソヴァール王国建国の開祖、アリスティド・ソヴァールの亡霊は、
失われた古代の究極精霊魔法『転移魔法』を授けると、
驚くリオネルへ、はっきり告げたのである。
全属性魔法使用者の素晴らしさと危うさを聞き……
リオネルは大きく頷いた。
『難しいお話ですが、アリスティド様のおっしゃる事は俺、分かるような気がします』
『ふむ! では、もっとシンプルに言おう。ほとんどの全属性魔法使用者は、己の能力を己自身の為だけに使うといえよう』
『ほとんどの全属性魔法使用者は、己の能力を己自身の為に使う!? ほ、本当ですか?』
『ははははははははははははははははは!!!!!! ここまで話して、今更、嘘をついてどうする』
『は、はい』
『100の行いがあるとしよう! そのうち、ほとんどの全属性魔法使用者は己の能力を使い、自身だけの為に9割を行う。しかし、リオネル! お前は違うぞ!』
『お、俺は、ち、違いますか?』
『うむ! これまでの己の行動を、しかと振り返ってみよ! お前の行動は真逆だ。自身が1割、他人を助け、救い、支える為に9割という配分だ』
アリスティドの話を聞き、これまでの記憶をたぐったが……
リオネルは引っかかる、納得が出来ない内容があった。
『あの……アリスティド様』
『何だ? 話の腰を折るな。今、良いところだぞ』
『いえ、これまでの己の行動を、しかと振り返ってみましたが……』
『うむ! それで?』
『はい、確かにいろいろな人に尽くしたい、支えたいと、力及ばずながら、精一杯頑張ったつもりですけど……』
『うむ、うむ、身におぼえがあろう』
『でも、アリスティド様。……自身の為がたった1割、他人を支える為に9割も、というのは、さすがにないです。ひどく「盛り過ぎ」だと思いますが……』
そう!
この『割合』こそが、リオネルの引っかかる部分。
出会った人々を助けたい、支えたいと願うリオネル。
だが、極端すぎた。
ここまで、自分は滅私奉公をしてはいない。
対して、アリスティドは、
『ま、まあ、細かい事は良いではないかあ! 我は、リオネル! 素直で正直なお前が、とても気に入った! だから助けたい! それで良いではないか!』
と、いきなり話を「すり替え」て来た。
あ、ごまかしたと、リオネルは思い、苦笑。
だが、ここは沈黙は金。
シンプルにアリスティドが自分に対し、好意を持ったと考え、喜ぶ。
『はい! アリスティド様に深く感謝致します。とても嬉しいです』
『ふむ! お前を助ける為に何をしようかと考えていた』
『何をしようかと、ですか?』
『うむ! 結論は出た!』
『結論が出ましたか?』
『うむ! 人間を制約するものは数多ある。あくまで私見ではあるが、中でも我は時間と距離が最も大きいと考える……かつて散々悩み、何とか解消したいと思ったものだ』
『時間と距離が人間を制約する……まあ、分かります。俺も、大空を飛ぶ鳥を見て、うらやましいなあと思った事がありますから』
『うむ、我もそうだ! 自由に真っ青な大空を飛び、瞬時に違う場所へ移動。この広大な世界を、縦横無尽に動きたい! 数多の人々と出会いたい! それゆえ、偉大なる精霊達に邂逅し、厳しくとも修行をしたい。そして、何とか失われた魔法を習得したい! と日々、努力したのだ!』
『成る程……精霊にですか?』
『うむ! それで、我はとうとう至高の最上級精霊のひとりに邂逅し、教えを受け、修行に励む事が出来た! 結果、たったひとつだけだが、失われた究極の古代精霊魔法を習得する事が出来た』
ここで、リオネルは昨夜ブレーズが告げた言葉を思い出す。
「最近、とある貴族家で発見された古文書の記載です。『開祖様は精霊の力を欲し、失われた魔法を追い求め、発見。英雄の迷宮最下層へその力を封印した』とあったそうです」
「しかし、開祖様が封印したという、その力は誰も見つけてはおりません。開祖様の啓示を受けられたローランド様を始め、これまで啓示を受けた方が失われた魔法を得た……という記録は一切ないのです」
古文書の記載は真実であった。
精霊の力……
失われた魔法……
英雄の迷宮へ、『その力』を封印した……
全属性魔法使用者は、『ストイック過ぎる求道者』になり、真理を求めるとの話だが……理解出来る気がしたのだ。
リオネルは、『失われた究極の古代の精霊魔法』習得への気持ちが高ぶって来る。
『おお! 至高の最上級精霊に出会い、失われた究極の古代精霊魔法を習得された!? そ、 そ、それは! す、凄いですねっ! う、うらやましい
ですっ!』
リオネルの興奮が伝わったらしく、アリスティドの声も高まる。
『うむ! うらやましいだろう! 凄いだろう! 我が人々から敬われたのは、強さのみではない! 失われた究極の古代精霊魔法も習得し、人間の能力を超えたからなのだ』
『成る程! 納得です! 本当に素晴らしいですよ』
『うむ! 我は、『神出鬼没』だと聞いた事があろう』
『はい、それは確かに。ここにいらっしゃったかと思えば、アリスティド様は、全く違う場所へ現れる、とお聞きしております』
補足しよう。
神出鬼没とは、自由自在に素早く現れたり、隠れたりする事だ。
とんでもなく巧妙に出没し、所在が分からない、出没の変幻自在な様である。
『『神出鬼没』の記述は、表向きにそうしただけだ! 友や配下、民達へは、我は、精霊の力により、たぐいまれな身体能力強化魔法を身につけ、特に「走力」が優れているからだ、と伝えていた』
『成る程! 表向きは、精霊の力により、たぐいまれな身体能力強化魔法を身につけ、特に「走力」が優れているから……そういう理由となっていましたか』
『うむ! それでな! リオネルよ! 最初に我が申した言葉を思い出せ! 何と言った?』
『はい、 ……お前の夢、我が後押ししてやろう! と、おっしゃいました!』
『うむ! その言葉、今こそ実行しよう! リオネル・ロートレックよ! お前に我が習得した、失われし、転移魔法を授けよう! そして目指す夢を果たす、大きな力とするが良い!』
『え、えええっ!? て、て、て、転移魔法!!??』
何と何と!!
古の英雄、ソヴァール王国建国の開祖、アリスティド・ソヴァールの亡霊は、
失われた古代の究極精霊魔法『転移魔法』を授けると、
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