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第231話「俺が最後に帰る場所は、一体どこなのだろうか?」

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マンティコアを倒したリオネル。
葬送魔法で残滓を消し、残りの1割の探索を終えた。

唯一気がかりなのは、あの謎めいた宝箱のみ。

誰がなんの目的で、失われた転移魔法を仕込んだのだろうか……

9階層の探索を終え、ようやく余裕が出たリオネルは少し考えたが……
やはり、結論は出なかった。

いくつか推測はしたが……仮説の域を出ない。

ケルベロスの言う通り、現時点で考えても仕方がない。

今後に備え、経験則にするのみだ。

さてさて!
と、リオネルは気持ちを切り替えた。

これで……8階層へ戻る事が出来ると。

愛用の懐中魔導時計を見やれば、午後1時過ぎ。

合流して、無事と9階層探索完了を報告。
8階層残りの探索を終えたら、全員で5階層に帰還が叶う。

多分、午後浅い時間で5階層へ戻る事が可能であろう。

帰ったら、ブレーズ様とゴーチェ様はいつもの店に連れて行き、
事前の打合せになる。

そして、明日は……
最下層10階層、ソヴァール王国建国の英雄で開祖、
アリスティド・ソヴァール様の記念スポット、『到達点』に直接、赴く事になる!

「よっし! 行くかあ」

リオネルの表情は晴れやかである。

ぼっち状態で実行可能な、己が立てた課題はほぼクリアしたからだ。

習得した魔法、スキルの実践、
そして実際に敵に対しての効果効能の実戦テストも完了していた。

『風』『火』『水』『地』4大属性魔法、
最高レベルの防御魔法、『破邪霊鎧はじゃれいがい
回復、治癒の魔法も存分に試し、
各種攻撃魔法に必殺の『貫通撃!!』を込め、威力が10倍増。
『クリティカルヒット!』も連発。

『フリーズハイ』を始めとした各種スキルも、熟練度が上がった。

加えて、魔力感知――索敵能力も著しく上がっていた。

魔力消費に気を付けながら、索敵をずっと最大限で行使しているせいか……
対象の意思が読み取れるほど精度は磨かれ、有効範囲の上限はフロアを超えるくらいに広がっていたのだ。

そして当然だが、ブレーズが指摘し、モーリスが同意した通り、
クランの現在位置も把握していた。

「うん! 全員がまだ地下8階層に居るな! ええっと……ブレーズ様、ゴーチェ様、モーリスさんは当然として、ミリアンとカミーユも……全員、無事か。ケルベロスとアスプ達も健在だな!」

「ええっと……心の波動も感じるぞ! ブレーズ様たち3人からは俺を信じる! という強い波動が伝わって来る。ケルベロス、アスプは、俺が無事で当然って何だよ、ははは。でもミリアンは俺を凄く心配している。……そしてカミーユは『どつぼ』に落ち込んでいる……戻って、安心させてやろう。ただし、必要以上に焦らずに……だぞ」

最後は自分を戒め、引き締めて……

リオネルは念の為、地図で地下8階層への階段を確認、
再び、歩き出したのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

地下8階層へ上がったリオネルは、
残った『ぼっち状態最後のテスト』を行っていた。

それは味方に対しての実戦テストである。
実戦テストとは言っても、対峙し、模擬戦を行うわけではない。

習得したシーフ職のスキル『隠形』『忍び足』が、
剣聖にして冒険者ギルドランクS、
最高レベルの魔法剣士ブレーズに通用するのか……を。

「試すようで本当に申し訳ない」とは思ったが……
フォルミーカ迷宮を始め、これから出会うであろう更に高位の強敵に立ち向かう為には……ブレーズの実力は格好の『物差し』となる。

但し、やりすぎは禁物。

少しでもブレーズが反応したら、『隠形』『忍び足』は解除しようと思っている。

改めてブレーズ達クランの位置を確認。

リオネルはゆっくりと歩き、距離を詰める。

ブレーズは勿論、敵もリオネルの存在を感知出来ない。

今の俺はまるで、東方の伝説の戦士、闇に生きるニンジャだ。

苦笑したリオネルだが、足取りは変わらない。

1㎞……800m……500m……300m……200m……あ、気付かれた!

さすがだ!
やはりブレーズ様だけが、接近する俺に気付いたか!

『ぼっち状態最後のテスト』……終了だ!

『隠形』『忍び足』を解除。

周囲に敵が存在しないか、改めて確認。

リオネルはクラン一行へ近づいて行く。

既にブレーズは、完全にリオネルの存在を察知。
大声でしらせるのが、
ビルドアップしたリオネルの聴覚にも捉えられている。

俺には帰れる場所がある。

以前、カミーユも言っていた。
孤児の姉と自分はキャナール村へ、帰る場所を見出したと。

ならば……
家族から絶縁された俺が最後に帰る場所は、一体どこなのだろうか?
そこは、探し求める『想い人』が居る場所なのだろうか?

やがて……
号泣し、駆け寄って来るミリアンとカミーユを先頭にした、
ブレーズ達一行の姿を見て、

「お~い!!」

リオネルは大声を出し、手を打ち振っていたのである。
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