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第213話「姉として、さりげなく」

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数多のバトルを経て、規定値を満たし、『レベル19』に到達したリオネル。
何と! チートスキル『エヴォリューシオ』の効果により『思念反射』レベル補正プラス40のスキルを習得。
身体能力、五感を始め、各種スペックが大幅にアップした。

また、チートスキル『エヴォリューシオ』『見よう見まね』の効果により、
更に回復魔法『解毒』『石化解除』も100%習得した。

想定以上の結果を得られ、大収穫で課題をクリアしたリオネル。

そして、やはりというか破邪魔法奥義、
破邪霊鎧はじゃれいがい』レベル補正プラス40の能力は凄まじかった。

アスプ、バジリスクの猛毒を一切無効化し、その上、コカトリスの石化攻撃も退けたのだから。
その絶対防御能力が『反射』のスキル習得を促し、コカトリスを逆に石化したのだ。

破邪霊鎧はじゃれいがい』レベル補正プラス40には、
今回、確認した毒、石化無効以外にも様々な効果効能があるが、
これからも身を持って試して行く事になるだろう。
あまりにもリスクが高いモノに関しては『実験』を見送るかもしれないが……

そんな事を考えながら……
リオネルは葬送魔法鎮魂歌レクイエムで、石化したコカトリスを塵にした。

さてさて!
少なくともこの地下7階層フロアにおいて、自分は万全に戦える。

という事で、リオネル達一行は探索を再開。
丹念に各フロアをチェックし、公式地図と付け合わせをして行く。

既に戦ったアスプは、戦いに突入しそうになったが、何と!
冒険者ギルド総本部の講座で教授された知識を再確認出来た。

何かといえば、魔物を従士として遭遇した場合、『同種戦闘回避』という理《ことわり》がある。
つまり、アスプはリオネル達との戦いを避けたのである。

イレギュラーなケースも時たまあるらしいが……
遭遇したアスプが同胞を従えるリオネル達を避け、戦わずに済んだのである。

アスプ以外、既に戦ったバジリスク、コカトリス、
そして猛毒を吐く二足歩行の大トカゲ・リザードマンと、
そんなこんなで、8戦ほど行った。

リオネルはまず威圧、フリーズハイを始めとしたスキルで敵の自由を奪い……
スキル、属性魔法を各種、我流の剣技、シールドバッシュ、
更に破邪聖煌拳を始め、格闘技をフルに使って、全て圧勝。

自身が経験を充分に積み、自信もつけ、万全の態勢となったので……
リオネルは、フォーメーションを変えようと考える。

そう、自分が前面に立ち『盾役』となり、
ミリアンとカミーユの育成に注力しようと決めたのである。

この考えも事前にモーリスと相談し、了解を得ていた。
自分の目途が立って、姉弟を守れるようになった時点で、
地下7階層の魔物と戦わせ、ふたりを鍛えると。

10体のリザードマンどもを倒し、葬送魔法で塵にしたリオネルは、

「ミリアン、カミーユ」

と呼んだ。

連戦連勝!
圧倒的な強さを見せる『兄貴』リオネルから呼ばれ、
ミリアンとカミーユは、元気よく返事をする。

「はあ~い、リオさん♡」
「はいっす! リオさん!」

昨夜、「準備が出来たら、一緒に戦うぞ」と、ふたりはリオネルから言われていた。

このフロアに出現するのは皆、毒と石化の攻撃を仕掛ける強敵。
それゆえ、ミリアンとカミーユは多少、緊張はしている。
だが、けして臆してはいない。
リオネルに対し、熱い愛情、厚い信頼があるからだ。

リオネルはミリアンとカミーユへ作戦の指示を出す。
これも既に打合せ済みだ。

「作戦は、昨日のオークと同じだ。俺の戦いを見て分かる通り、安全策で行く。まずは威圧で、奴らの自由を奪う」

「「はい!」」

「その上で、接近戦で自分達が攻撃して、相手に慣れながら、ダメージを与えられるか試す。無理ならば魔法杖を使え」

「「はい!」」

「次にスキルの効果が無くなり、運動機能を回復した敵と戦う」

「「はい!」」

「相手の特殊攻撃には充分に注意して、戦うんだ。毒、石化とも、予防ポーションを摂っているから、大丈夫だとは思うが、いざとなればモーリスさんと俺がケアをする。安心して戦え!」

「「はい!」」

打合せが終わり……
フォーメーションは、魔獣ケルベロス、魔獣アスプ6体、リオネル、ミリアンとカミーユ、モーリス、最後方は変わらずゴーチェとなった。

探索を再開して、約10分後。
リオネル、ケルベロスが敵を捕捉した。

あるじよ、敵だ。相手は……既に主が戦った奴だから、分かるな?』

『ああ、分かる……距離は約500m、構成は、バジリスク5体の小群だろ』

『うむ、ずばり、ご名答だ。……む?』

『どうした? ケル』

『未熟な波動がふたつ、主の傍に居るな……また「ひよこ」どもの御守おもりなのか? いちいち世話が大変だな、主』

『ひよこども? ああ、ミリアンとカミーユの事かい? いや、全然「苦」じゃないよ』

『そうか。我には、未熟者の「御守り」など、面倒ごととしか映らぬが、くくく』

突き放すようなケルベロスの物言い。
シニカルに笑っているのが目に浮かぶようだ。

つい苦笑したリオネルは、反論する。

『いやいや、ケルだって、まだまだ「低レベル」の俺をこまめに「御守り」してくれているじゃないか』

リオネルがそう言うと少し間があった後、ケルベロスが答える。

『………………ふっ、まあ、そうか。我も遙かなる時空を生きたわりには、相当な未熟者だ』

『……まあ、懲りずに末永く、今後とも頼むよ』

『ふっ、了解だ。そろそろ、ひよこどもを含めた仲間に、敵襲をしらせるが良かろう』

『分かった』

リオネルは、ケルベロスへ言葉を戻すと、

「ミリアン、カミーユ。敵襲だ……距離は約500m……いや、少し近付いたから約400mだな。相手は、バジリスク5体だ」

「うわ、いよいよ毒、石化の攻撃を仕掛ける奴らとバトル? 改めて本番だと思うと少し緊張するっ!」

と姉ミリアンは身体をこわばらせるが、弟カミーユは、

「姉さん、何言ってるっすか」

「はあ? あんたこそ何言ってるの?」

「オーガの時同様、またリオさんがバジリスクを戦闘不能にしてくれるから、俺達は蹴りオンリーでフルボッコするのみっす。超が付く楽勝っすよ!」

と余裕しゃくしゃく。

しかし、ミリアンは弟を戒めるのを忘れない。

「もう! カミーユ! あんたは何も考えないで、単純に戦うだけじゃないの。それじゃあ、完全に脳キンでしょ!」

「それ、違うっす! ちゃんといろいろと考えているっす!」

「い~や、あんたは、いっつも学習なし! 全然成長しないでしょ!」

「あ~! ひっど! そこまで言うっすか! だったら姉さんに見せてつけてやるっす! 常に課題を持ち、考えながら戦う、俺の成長ぶりをぉ!」

と、ここで間に入るのがリオネルである。

「よし、じゃあ、カミーユから行こう」

「はいっす! リオさんの指名を待ってましたっす! 俺は、しっかり課題を持って戦うっす! 姉さんの言ってる事は全くの誤りだって事を、証明してやるっすう!」

「じゃあミリアンは、とりあえず待機、後で交代だ」

「OK! リオさん! カミーユの戦いぶりをしっかり見せて貰うわよ」

と、しかめっ面で言いながら、
ミリアンはカミーユに分からないよう、リオネルに笑顔を見せ ウインクした。

ひどく挑発的な物言いには、ちゃんと理由があったのだ。

面倒みの良いミリアンが、姉として、さりげなく、

課題を持って戦う自覚を、弟に持たせる為のサポート、
つまり……深謀遠慮だったのである。
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