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第167話「英雄の迷宮へ」

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『思い出づくり』をしようと、気前のいいモーリスの『おごり』で、
雑貨屋、武器防具屋、魔道具屋、最後に居酒屋ビストロと回り……
各自が希望通りの買い物をし、希望通りの食事をしたリオネル達一行は、
ねぐらとする宿屋へ戻って来た。

ひと息ついて……
テーブルには、モーリスが取り出した、
『冒険者ギルド総本部発行、英雄の迷宮地図、公式版』……が広げられている。

これから就寝までは、
明日、潜る『英雄の迷宮』攻略の最終確認をするのだ。
この地図の新版発行に伴う実地調査を行い、報告するのが今回の依頼である。

事前に散々打ち合せをしたので、フォーメーション及び作戦等の方針は共有していた。

ちなみに、フォーメーション構成。
及び作戦立案はモーリス主導、リオネル協力で行った。

まずはフォーメーション。

前衛は、
先頭がリオネルの呼び出した魔獣ケルベロスで斥候シーフ役兼盾役兼攻撃役。
2番手がリオネルでシーフ役兼盾役兼攻撃役。
全員への指示はリオネルが出す。
3番手がカミーユでシーフ役兼攻撃役。

中段の4番手がミリアンで後方支援の攻撃役兼回復役。

最後方が後方支援の攻撃役兼回復役のモーリスという布陣だ。

ちなみにモーリスが一番後ろなのはミリアンを護るのと、
後方からの奇襲を防ぐ為である。

作戦は、洞窟の探索を基本踏襲する。
照明魔法で、魔導光球を呼び出し……
ケルベロスを先頭に、次いでリオネル、カミーユが索敵を最大限に行いながら慎重に進む。
その後ろを中段のミリアン、そして最後方をモーリスが進む。

戦い方は安全第一、
物理攻撃でも魔法攻撃でも『ヒットアンドアウェイ』が基本である。

まず進路における罠や奇襲には要注意。
発動させたら、宜しくないので、難度の高い罠が仕掛けられた宝箱には執着しない。

前衛の攻撃は魔獣ケルベロスを押し立て、リオネルが遠距離魔法攻撃。
格闘戦になった場合はリオネルも参戦。
相手によってはカミーユも。

しかし敵が強靭だと見た場合は、カミーユと入れ替わりミリアンが前衛3番手へ。
リオネルとともに遠距離攻撃魔法を行使する。
最後方でモーリスは裏方で『バックアップ要員』として控える。

……とは言っても、相手が違えばその度に戦い方は変わってしまう。
けして予定通りにはならないのが常だ。

英雄の迷宮において、イレギュラーな場合もあるが……
階層ごとに出現する魔物はほぼ決まっている。
戦いながら確認するのも、今回の仕事の一環だ。
地図には、出現する魔物も記載されているのだ。

リオネル達全員は再度、地図を見直し、フォーメーションと作戦の確認を行い……
早めに就寝したのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

翌朝……

リオネル達は英雄の迷宮へ赴いた。

迷宮への入り口は『ヘーロース』の中央広場にあり、盛り土をした上で、
石垣で盛り土の周囲を固め、正門が設けられていた。

正門には鋼鉄製の門が付けられている。

正門は24時間開放されており……
屈強な冒険者ギルド総本部所属の守衛が常時ふたり、交代勤務で入り口を守っていた。

先述した通り、入る際には、レベルの確認がある。
『レベル12』未満の者は迷宮内へは入れない。

迷宮内へ入る前、正門前に設置された、
特殊な魔法が付呪エンチャントされた魔法水晶に、入場希望者は手をかざすのだ。

まずは、リーダーのモーリス。
姓名と所属を名乗り、身分証明書を提示する。

ちなみに、ここで指名手配中の犯罪者もチェックされる。
迷宮内へ逃げ込もうとするふらち者も多いという。

「モーリス・バザン、冒険者ギルド所属の冒険者で、ランクBです」

「うむ、では魔法水晶へ手をかざせ」

「はい」

守衛に促され、モーリスは魔導水晶へ手をかざした。

『……レベル40です』

合成音声が、当該者のレベルを告げて来る。

「よし! 通れ!」

「はい」

次いで、リオネル。
姓名と所属を名乗り、身分証明書を提示する。

「リオネル・ロートレック、冒険者ギルド所属の冒険者で、ランクBです」

リオネルが名乗ると、守衛が反応する。
二っと面白そうに笑う。

「ふむ……君が噂のランカー『荒くれぼっち』か、では……魔法水晶へ手をかざせ」

「はい」

同じく守衛に促され、リオネルはモーリスの真似をして魔導水晶へ手をかざした。

『……レベル16です』

「おお、何だ、意外にレベルは高くないな……よし! 通れ!』

「はい」

続いて、ミリアンとカミーユも。

「ミリアン・バザンです、冒険者ギルド所属の冒険者で、ランクEです」

「うむ、では魔法水晶へ手をかざせ」

「はい」

『……レベル18です』

「よし! 通れ!」

「はい」

「カミーユ・バザンっす、冒険者ギルド所属の冒険者で、ランクFでっす」

「うむ、では魔法水晶へ手をかざせ」

「はい」

『……レベル16です』

「よし! 通れ!」

「はい」

……というわけで、リオネル達は、正門から英雄の迷宮内へ入った。
入ってすぐ幅が広く深い階段があり、下へ降りられるようになっている。

4人が階段を降りると……
階下は結構広いホールとなっている。
石造りの清潔な空間であり……
壁には冒険者ギルド総本部により設置された、魔導灯が取付られており、
淡い光がホール内を全体を照らしていた。

そしてこのホールには正門と同じく屈強な守衛が数名、そして大勢の冒険者が居た。
人間族が最も多いが、エルフ族、ドワーフ族も若干居る。

危険な雰囲気はない。
暴れたり等、ふらちな行為をすれば、警備員の役割を持つ守衛が、
「当該者を迷宮外へつまみ出してしまう」と聞いた。

モーリスが改めて説明する。

「事前に打ち合わせし、確認したから、分かるだろうが、ここは、地下1階層の正式なフロアではない。『地下1階ホール』だ。後から掘られた空間で、迷宮入場者達の待機や休憩の為のスペースだな」

地下1階ホール……
リオネル達が所持する公式地図にも、その旨は記載されていた。
ひと通り眺め、まず地図の通りだと仕様も確認した。
ここからが、『依頼の第一歩』である。

「そして、あそこが英雄の迷宮、地下1階層への本当の入り口だ」

地下1階層への本当の入り口……

モーリスが指さした先に、ぽっかりと大きな縦穴が開いていた。
左右10m、高さも5m以上ある。
竪穴からは淡い光が漏れていた。

そこにもふたり守衛が立っている。

「休まずに行くか? どうする?」

モーリスの問いに対し、

「俺は大丈夫です」

とまずリオネルが答え、

「大丈夫!」
「ノープロブレムっす!」

続いて、ミリアンとカミーユも答えた。

「うむ、では行くぞ!」

モーリスが頷いて、促し……
4人は歩き始めたのである。
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