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第154話「無双再び! 勝利の凱歌」
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リオネルの指示を受け、冥界の魔獣ケルベロスがゴブリンの巣へ飛び込み、10分と少しが経った。
ときたま、リオネルへはケルベロスから『途中経過』が念話で送られている。
ケルベロスは、数十体を倒しつつ、200体ほどを出口へ追い立てると伝えて来た。
基本的に、勢子は獲物を追い立てる役割であり、狩る……つまり倒しはしない。
リオネルは考えた末、咎めない事とした。
予定と違い、残りは50体ほどになるのだが、さして問題はない。
この50体を、修行を兼ねてミリアンとカミーユに倒して貰えば良いだけ。
大勢に影響はない。
ケルベロスは遥かに格上の相手であり、使い魔ではない。
まずは戦友ケルベロスの『やる気』と『判断』そして『誇り』を尊重し、
それでOKだと伝えてあった。
後で、言葉を選びながら話し合えば、また心と心の距離が近付くだろう。
という事で、リオネルはゴーチェへ告げる。
「ゴーチェ様、そろそろウチの『ケル』がゴブリンどもを外へ追い立てますよ」
「ううむ! リオネル君には分かるのだな」
「はい、ケルの放つ強い気配で分かります」
「う、う~むぅ! 強い気配か! す、凄いな!」
「いえいえ全然です。それに彼は『使い魔』というよりも、『戦友』に近い『従士』ですからね」
「おいおい! あ、あいつを人間のように『彼』と呼ぶのか! せ、戦友に近い従士か! ……た、確かに! あ、あの犬には気品があったし、えらく迫力もあった」
「ですか?」
「ああ! 絶対にあの犬はタダモノではないぞっ!」
ゴーチェが腕組みをし、叫んだ瞬間!
うおおおおおおんんん!!
ケルベロスの咆哮が聞こえた。
「ゴーチェ様、もうゴブリンどもが出入り口付近へ来ましたよ」
「う、うむ! 俺も戦うぞ」
「いえ、俺とケルに任せてください」
「し、しかし!」
「大丈夫です。少し下がって、ご自身の身を守ってください。万が一何かあればフォローします」
「お、おう! わ、分かった!」
と、ゴーチェが返事をすると同時にリオネルは洞窟入口へ向かい、ダッシュで走り出していた。
「お、お、お、おいっ!! ほ、ほ、本気で!? 突っ込む気かあ!? ま、ま、ま、待てぃっ!! リオネル君!!」
ゴーチェは主ブレーズに対し、忠実な騎士である。
それゆえ、下された命令は絶対に守る。
先ほど指摘された通り、内々でリオネルの一挙手一投足を見届けよと、
ブレーズからは命じられていた。
そして危なくなったら「絶対にリオネルを守れ!」とも厳命されていた。
そもそもずっとワレバッド在住のゴーチェはリオネルの戦闘シーンを見た事がない。
リオネルの『戦歴』はギルド経由と冒険者達の噂では聞いていた。
「おびただしいゴブリンを倒した、まだ若いのにとんでもない戦士だ」と。
しかし、普通に考えれば人間ひとり対ゴブリン200体は、無謀以外のナニモノでもない。
突撃を止めようとしたが、リオネルは、無謀にも突っ込んでしまった。
そしてリオネルの言った通り、洞窟の出入り口からは、まるで雲霞のように、
ぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃう!!!!
ぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃう!!!!
おびただしいゴブリンどもが飛び出して来た。
ひゅうおおお!!
きえええおお!!
くわおおおお!!
はあああああ!!
ケルベロスに追い立てられたのだろう、怒り猛るゴブリンどもは、一斉に目の前に居るリオネルへと襲いかかった。
「あ、あああああああっっっっ!!!」
……いろいろと話すうちに、ゴーチェはリオネルの『素』に触れ、
どんどん好ましく思い始めていた。
主ブレーズから聞いていた通り……
リオネルは労を惜しまず、才能にあふれ面倒見が良く優しい。
加えて、もしも強き『荒くれぼっち』の噂が本当だとしたら……
リオネルはとんでもない傑物であると考えた。
ゴーチェが己の人生で目指し憧れる、伝説で語られた『理想の騎士』をはっきりとイメージさせるのだ。
だからゴーチェは「リオネルを死なせたくない!」と感じている。
それゆえ圧倒的に不利な状況下で、一方的な惨劇になるのを見ていられず、
己の頭を抱え、絶叫した。
絶望!という大きな暗黒がゴーチェの心を一瞬で染めたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しかし、ゴーチェはリオネルの『戦いぶり』を目の当たりにしていない。
ゴブリン渓谷を始め……
これまでリオネルは習得したギフトスキル『ゴブリンハンター』のお陰でゴブリンに対しては、無敵無双状態なのである。
ケルベロスに追われた100体以上のゴブリンが、一斉にリオネルに飛びつき、引っかく、噛みつく。
しかしリオネルの身体はダメージゼロのナッシング。
攻撃を全くといっていいほど受け付けない。
それどころか、うるさいぞ! とばかりに、
ばん! ばん! ばん! ばん!
と、まとわりつくゴブリンどもを容赦なく弾き飛ばす。
攻撃を受けるだけではない。
100倍返しとばかりに、リオネルもゴブリンどもへ猛反撃する。
左腕でシールドバッシュを猛連打し、圧倒的に叩きのめす。
ばんっ! ばんっ! ばんっ! ばんっっ!
ばんっ! ばんっ! ばんっ! ばんっっ!
回し蹴りでゴブリンどもを思い切りぶっとばす。
どごっ! どごっ! どごっ! どごおっ!
どごっ! どごっ! どごっ! どごおっ!
ここでリオネルは愛用のスクラマサクスを抜き放つ。
白銀の刃が容赦なく振るわれる。
しゅばっ! しゅばっ! しゅばっ! しゅばっっ!
しゅばっ! しゅばっ! しゅばっ! しゅばっっ!
『風弾』の魔法も至近距離から遠慮なくぶっ放す。
どしゅ! どしゅ! どしゅ! どしゅ! どしゅ!
どしゅ! どしゅ! どしゅ! どしゅ! どしゅ!
そして!
ゴブリンどもを追い立て、出て来たケルベロスも、ゴブリンどもをガンガンなぎ倒し、噛み砕く。
ぐじゃ! がじゅっ! ぐっちゃ! ぶしゅっ!
ぐじゃ! がじゅっ! ぐっちゃ! ぶしゅっ!
ぎゃああああ! ぎゃおおおおっ!! ぐああああっ!!
ぎゃああああ! ぎゃおおおおっ!! ぐああああっ!!
ぎゃああああ! ぎゃおおおおっ!! ぐああああっ!!
ぎゃああああ! ぎゃおおおおっ!! ぐああああっ!!
辺りには肉を打たれ、切り刻まれるゴブリンどもの断末魔の絶叫が響き渡り続け……
ゴーチェが恐る恐る目を開けてみれば……
「ゴーチェ様あ!!」
うおおおおんん!!
うおおおおんん!!
「おおおおお、な、な、な、何という!! 何という事だああっ!!」
ゴーチェが感極まって叫んだのも無理はなかった。
確かに『一方的な惨劇』にはなった。
しかし『惨劇の犠牲者』は襲いかかったゴブリンどもの方であった。
あっという間に喰われるどころか……
累々と散らばるゴブリンどもの死骸の中で……リオネルとケルベロスは全くの無傷。
リオネルは元気良く手を打ち振り、ケルベロスは何度も大きく吠え、
両名は勝利の凱歌をあげていたのである。
ときたま、リオネルへはケルベロスから『途中経過』が念話で送られている。
ケルベロスは、数十体を倒しつつ、200体ほどを出口へ追い立てると伝えて来た。
基本的に、勢子は獲物を追い立てる役割であり、狩る……つまり倒しはしない。
リオネルは考えた末、咎めない事とした。
予定と違い、残りは50体ほどになるのだが、さして問題はない。
この50体を、修行を兼ねてミリアンとカミーユに倒して貰えば良いだけ。
大勢に影響はない。
ケルベロスは遥かに格上の相手であり、使い魔ではない。
まずは戦友ケルベロスの『やる気』と『判断』そして『誇り』を尊重し、
それでOKだと伝えてあった。
後で、言葉を選びながら話し合えば、また心と心の距離が近付くだろう。
という事で、リオネルはゴーチェへ告げる。
「ゴーチェ様、そろそろウチの『ケル』がゴブリンどもを外へ追い立てますよ」
「ううむ! リオネル君には分かるのだな」
「はい、ケルの放つ強い気配で分かります」
「う、う~むぅ! 強い気配か! す、凄いな!」
「いえいえ全然です。それに彼は『使い魔』というよりも、『戦友』に近い『従士』ですからね」
「おいおい! あ、あいつを人間のように『彼』と呼ぶのか! せ、戦友に近い従士か! ……た、確かに! あ、あの犬には気品があったし、えらく迫力もあった」
「ですか?」
「ああ! 絶対にあの犬はタダモノではないぞっ!」
ゴーチェが腕組みをし、叫んだ瞬間!
うおおおおおおんんん!!
ケルベロスの咆哮が聞こえた。
「ゴーチェ様、もうゴブリンどもが出入り口付近へ来ましたよ」
「う、うむ! 俺も戦うぞ」
「いえ、俺とケルに任せてください」
「し、しかし!」
「大丈夫です。少し下がって、ご自身の身を守ってください。万が一何かあればフォローします」
「お、おう! わ、分かった!」
と、ゴーチェが返事をすると同時にリオネルは洞窟入口へ向かい、ダッシュで走り出していた。
「お、お、お、おいっ!! ほ、ほ、本気で!? 突っ込む気かあ!? ま、ま、ま、待てぃっ!! リオネル君!!」
ゴーチェは主ブレーズに対し、忠実な騎士である。
それゆえ、下された命令は絶対に守る。
先ほど指摘された通り、内々でリオネルの一挙手一投足を見届けよと、
ブレーズからは命じられていた。
そして危なくなったら「絶対にリオネルを守れ!」とも厳命されていた。
そもそもずっとワレバッド在住のゴーチェはリオネルの戦闘シーンを見た事がない。
リオネルの『戦歴』はギルド経由と冒険者達の噂では聞いていた。
「おびただしいゴブリンを倒した、まだ若いのにとんでもない戦士だ」と。
しかし、普通に考えれば人間ひとり対ゴブリン200体は、無謀以外のナニモノでもない。
突撃を止めようとしたが、リオネルは、無謀にも突っ込んでしまった。
そしてリオネルの言った通り、洞窟の出入り口からは、まるで雲霞のように、
ぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃうぎゃう!!!!
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おびただしいゴブリンどもが飛び出して来た。
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ケルベロスに追い立てられたのだろう、怒り猛るゴブリンどもは、一斉に目の前に居るリオネルへと襲いかかった。
「あ、あああああああっっっっ!!!」
……いろいろと話すうちに、ゴーチェはリオネルの『素』に触れ、
どんどん好ましく思い始めていた。
主ブレーズから聞いていた通り……
リオネルは労を惜しまず、才能にあふれ面倒見が良く優しい。
加えて、もしも強き『荒くれぼっち』の噂が本当だとしたら……
リオネルはとんでもない傑物であると考えた。
ゴーチェが己の人生で目指し憧れる、伝説で語られた『理想の騎士』をはっきりとイメージさせるのだ。
だからゴーチェは「リオネルを死なせたくない!」と感じている。
それゆえ圧倒的に不利な状況下で、一方的な惨劇になるのを見ていられず、
己の頭を抱え、絶叫した。
絶望!という大きな暗黒がゴーチェの心を一瞬で染めたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
しかし、ゴーチェはリオネルの『戦いぶり』を目の当たりにしていない。
ゴブリン渓谷を始め……
これまでリオネルは習得したギフトスキル『ゴブリンハンター』のお陰でゴブリンに対しては、無敵無双状態なのである。
ケルベロスに追われた100体以上のゴブリンが、一斉にリオネルに飛びつき、引っかく、噛みつく。
しかしリオネルの身体はダメージゼロのナッシング。
攻撃を全くといっていいほど受け付けない。
それどころか、うるさいぞ! とばかりに、
ばん! ばん! ばん! ばん!
と、まとわりつくゴブリンどもを容赦なく弾き飛ばす。
攻撃を受けるだけではない。
100倍返しとばかりに、リオネルもゴブリンどもへ猛反撃する。
左腕でシールドバッシュを猛連打し、圧倒的に叩きのめす。
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白銀の刃が容赦なく振るわれる。
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どしゅ! どしゅ! どしゅ! どしゅ! どしゅ!
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そして!
ゴブリンどもを追い立て、出て来たケルベロスも、ゴブリンどもをガンガンなぎ倒し、噛み砕く。
ぐじゃ! がじゅっ! ぐっちゃ! ぶしゅっ!
ぐじゃ! がじゅっ! ぐっちゃ! ぶしゅっ!
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辺りには肉を打たれ、切り刻まれるゴブリンどもの断末魔の絶叫が響き渡り続け……
ゴーチェが恐る恐る目を開けてみれば……
「ゴーチェ様あ!!」
うおおおおんん!!
うおおおおんん!!
「おおおおお、な、な、な、何という!! 何という事だああっ!!」
ゴーチェが感極まって叫んだのも無理はなかった。
確かに『一方的な惨劇』にはなった。
しかし『惨劇の犠牲者』は襲いかかったゴブリンどもの方であった。
あっという間に喰われるどころか……
累々と散らばるゴブリンどもの死骸の中で……リオネルとケルベロスは全くの無傷。
リオネルは元気良く手を打ち振り、ケルベロスは何度も大きく吠え、
両名は勝利の凱歌をあげていたのである。
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