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第120話「意外な素顔」
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ワレバッド冒険者ギルド総本部9階……
討伐料の精算が終了した直後、実際の支払いに移る前、サブマスターのブレーズが驚愕していた。
ブレーズが驚いたのは、精算した討伐料金の総計、金貨500枚《日本円で500万円》近くという金額だけではない。
その内訳なのである。
「むう、この戦歴……これは驚きました……ランクBのランカーながら、リオネル君は、現在まだレベル15です……それなのに、遥かに格上の敵を、相当数倒している。特に『レベル38』の『オークカーネル』をも倒しているとは……」
冒険者ギルドで使用する、依頼完遂確認用の魔導精算機には、討伐料金のみでなく、
リオネルが行った戦いの履歴がはっきりと表れる。
ブレーズは、リオネルの戦いの履歴『戦歴』もしっかりとチェックしていたのだ。
「リオネル君」
「は、はい」
「オークカーネル討伐の件は、先ほど聞いたモーリス殿の話には一切ありませんでした。この上位種を討伐したのは、キャナール村ではなく、どこか別の場所ですか?」
ここは、下手に隠さない方が賢明だろう。
「はい、実はキャナール村の隣村アルエットで、洞窟に潜み、害を為していたオークの群れと戦いまして、その群れのリーダーがオークカーネルでした」
「……ほう、そうでしたか。モーリス殿は客分のリオネル君を心から信頼していますね。とても嬉しそうに、そして誇らしげに君の栄誉を語りましたから。彼の長年の親友であるキャナール村のパトリス司祭と村民を救ってくれたとね」
「え、ええ……何とか、モーリスさんにお力添え出来て、その結果、パトリスさんを助ける事が出来ました」
「ふむ、しかしモーリス殿は、リオネル君のアルエット村での戦歴をご存じないようですね」
「はあ、モーリスさん達には伝えていません。話すと単なる自慢になりますから」
「何? 話すと単なる自慢になる? ははははは! 面白いですね、君は!」
「そ、そうですか?」
「ああ! とても面白いし、凄く変わっていますよ」
「とても面白いし、凄く変わっている!? で、ですか?」
「うむ。何故ならば、冒険者の殆どが、自分の手柄や戦歴を大げさに語り、自慢します。誇大にアピールして、自分の名を売り込み、世間に広め、大金を稼ぐ為の術にするのです。逆に言わずに隠すとは、君は少数派ですよ」
「はあ……」
「ははははは! そう落ち込まない。私は褒めているのですよ。能ある鷹は爪を隠すという……まさに君は能ある鷹です」
「い、いや……それはほめ過ぎです」
「そんな事はないですよ。何故敢えて隠すのか、私には分かります」
「な、何がですか?」
「リオネル君は、誰にも伝えていない魔法、武技、スキルを隠し持っているからですね」
「え?」
リオネルは「どきっ」とした。
やはり総本部のサブマスターを務めるブレーズはただものではない。
「ははははは! 安心してください。リオネル君が秘するモノは、いわば奥義。強さを追求する術者、武道者にとって、命の次に大切と言えるものです。ちなみに私にもあります。だからこれ以上詮索する気はないですよ」
「あ、ありがとうございます」
「これからも君の奥義で数多の人々を助け、その上でしっかり稼ぐ事ですね。ははははは!」
「は、はい!」
「ところで、リオネル君」
「はい」
「実務に話を戻しますが……最近、冒険者ギルドでは、総マスターと私の発案で、報奨金支払いの新システムを導入しましたけれど、使いますか? モーリス殿は即座にOKしましたが」
「え? 総マスターとサブマスターの発案で、報奨金支払いの新システム? ……ですか?」
報奨金支払いの新システム?
初めて聞く話である。
リオネルが首を傾げると、ブレーズが説明を続ける。
「ああ、先日から、この総本部と一部の支部で導入しました。好評ならば、全ての支部にもいずれは広めて行こうと思っています」
面白そうな話である。
好奇心旺盛なリオネルは、ブレーズへ尋ねる。
「そうなんですか。宜しければどのようなシステムなのか、教えて貰えますか?」
「方法は簡単ですよ。ウチのギルドで報奨金等々の支払いをする際、魔法で所属登録証に支払い金額を記憶させ、プールしておけます。こうすると重くてかさばる現金を持ち歩かずに済みますから」
「へえ! 所属登録証に支払い金額を記憶させ、プールを…するのですか? でも、それでは支払った履歴が残りませんよね?」
リオネルの疑問は尤もである。
しかし、ブレーズは「しれっ」と言う。
「大丈夫、対策は立てました」
「対策ですか?」
「はい、万が一、支払った、支払っていないなど行き違いやトラブルが起こるのを防ぐ為に、その場で魔導水晶を見て貰い入金を確認します。その上で、支払いと受領を兼ねた証明書をギルドから2枚発行、双方でサインして、双方各自で1枚づつ保管します」
「成る程」
「入金、使用、残高状態も常にチェック出来ますから、何かシステムに不具合があり、万が一失った現金があれば、ギルドで保証します」
「納得しました。じゃあ、現金を引き出す時は、どのようにすれば宜しいのですか?」
「……ワレバッド限定ですが、王国銀行ワレバッド支店と提携していますから、銀行の営業時間内には引き出せます。それと当然この総本部、そして王都支部他いくつかの支部でも導入済みですから、銀行と同じく営業時間内ならば引き出しが可能ですね」
「ちなみに、その新システムって、サブマスターもお使いですか?」
「当然です! 冒険者に勧めている者自身が使わないでどうするのですか? マスターと私も含め、このギルド総本部の職員は全員が新システムを使っていますよ」
「成る程」
「それとまだまだ実験的にですが、冒険者ギルドの所属登録証で買い物をするシステムもワレバット限定で導入しています」
「え? それって凄いですね」
「はい、現金が不要で、所属登録証にプールした残高があれば、ワレバットのいくつかの提携店で買い物が可能です。武器防具や家具、食料品や生活必需品等々も購入が可能ですし、飲食店では食事も出来ます。今後も提携店を増やし、上手く行けば王都やその他の町村でも導入します」
ここまで聞いて安心し、納得した。
モーリスもOKしたと言うし、自分も使う。
そう、リオネルは決めた。
「分かりました。では、俺も新システム仕様でお支払いをお願いします。但し当座のお金が必要ですので、金貨100枚分だけは、この場の現金支払いでお願い出来ますか?」
リオネルが了解すると、
「ははははは! OKです! リオネル君はとても慎重ですね。だけど一度決断したら思いっきり大胆に行動するタイプでしょう? 加えて現実的で、しっかりもしています。私は大いに気に入りました!」
とても意外であった。
初見のイメージでは、あまり表情を変えず、冷静沈着で物静かな雰囲気のブレーズが……
リオネルに素顔ともいえる『きさくな部分』をあっさり見せ、
機嫌良く、何度も面白そうに大笑いしたからである。
討伐料の精算が終了した直後、実際の支払いに移る前、サブマスターのブレーズが驚愕していた。
ブレーズが驚いたのは、精算した討伐料金の総計、金貨500枚《日本円で500万円》近くという金額だけではない。
その内訳なのである。
「むう、この戦歴……これは驚きました……ランクBのランカーながら、リオネル君は、現在まだレベル15です……それなのに、遥かに格上の敵を、相当数倒している。特に『レベル38』の『オークカーネル』をも倒しているとは……」
冒険者ギルドで使用する、依頼完遂確認用の魔導精算機には、討伐料金のみでなく、
リオネルが行った戦いの履歴がはっきりと表れる。
ブレーズは、リオネルの戦いの履歴『戦歴』もしっかりとチェックしていたのだ。
「リオネル君」
「は、はい」
「オークカーネル討伐の件は、先ほど聞いたモーリス殿の話には一切ありませんでした。この上位種を討伐したのは、キャナール村ではなく、どこか別の場所ですか?」
ここは、下手に隠さない方が賢明だろう。
「はい、実はキャナール村の隣村アルエットで、洞窟に潜み、害を為していたオークの群れと戦いまして、その群れのリーダーがオークカーネルでした」
「……ほう、そうでしたか。モーリス殿は客分のリオネル君を心から信頼していますね。とても嬉しそうに、そして誇らしげに君の栄誉を語りましたから。彼の長年の親友であるキャナール村のパトリス司祭と村民を救ってくれたとね」
「え、ええ……何とか、モーリスさんにお力添え出来て、その結果、パトリスさんを助ける事が出来ました」
「ふむ、しかしモーリス殿は、リオネル君のアルエット村での戦歴をご存じないようですね」
「はあ、モーリスさん達には伝えていません。話すと単なる自慢になりますから」
「何? 話すと単なる自慢になる? ははははは! 面白いですね、君は!」
「そ、そうですか?」
「ああ! とても面白いし、凄く変わっていますよ」
「とても面白いし、凄く変わっている!? で、ですか?」
「うむ。何故ならば、冒険者の殆どが、自分の手柄や戦歴を大げさに語り、自慢します。誇大にアピールして、自分の名を売り込み、世間に広め、大金を稼ぐ為の術にするのです。逆に言わずに隠すとは、君は少数派ですよ」
「はあ……」
「ははははは! そう落ち込まない。私は褒めているのですよ。能ある鷹は爪を隠すという……まさに君は能ある鷹です」
「い、いや……それはほめ過ぎです」
「そんな事はないですよ。何故敢えて隠すのか、私には分かります」
「な、何がですか?」
「リオネル君は、誰にも伝えていない魔法、武技、スキルを隠し持っているからですね」
「え?」
リオネルは「どきっ」とした。
やはり総本部のサブマスターを務めるブレーズはただものではない。
「ははははは! 安心してください。リオネル君が秘するモノは、いわば奥義。強さを追求する術者、武道者にとって、命の次に大切と言えるものです。ちなみに私にもあります。だからこれ以上詮索する気はないですよ」
「あ、ありがとうございます」
「これからも君の奥義で数多の人々を助け、その上でしっかり稼ぐ事ですね。ははははは!」
「は、はい!」
「ところで、リオネル君」
「はい」
「実務に話を戻しますが……最近、冒険者ギルドでは、総マスターと私の発案で、報奨金支払いの新システムを導入しましたけれど、使いますか? モーリス殿は即座にOKしましたが」
「え? 総マスターとサブマスターの発案で、報奨金支払いの新システム? ……ですか?」
報奨金支払いの新システム?
初めて聞く話である。
リオネルが首を傾げると、ブレーズが説明を続ける。
「ああ、先日から、この総本部と一部の支部で導入しました。好評ならば、全ての支部にもいずれは広めて行こうと思っています」
面白そうな話である。
好奇心旺盛なリオネルは、ブレーズへ尋ねる。
「そうなんですか。宜しければどのようなシステムなのか、教えて貰えますか?」
「方法は簡単ですよ。ウチのギルドで報奨金等々の支払いをする際、魔法で所属登録証に支払い金額を記憶させ、プールしておけます。こうすると重くてかさばる現金を持ち歩かずに済みますから」
「へえ! 所属登録証に支払い金額を記憶させ、プールを…するのですか? でも、それでは支払った履歴が残りませんよね?」
リオネルの疑問は尤もである。
しかし、ブレーズは「しれっ」と言う。
「大丈夫、対策は立てました」
「対策ですか?」
「はい、万が一、支払った、支払っていないなど行き違いやトラブルが起こるのを防ぐ為に、その場で魔導水晶を見て貰い入金を確認します。その上で、支払いと受領を兼ねた証明書をギルドから2枚発行、双方でサインして、双方各自で1枚づつ保管します」
「成る程」
「入金、使用、残高状態も常にチェック出来ますから、何かシステムに不具合があり、万が一失った現金があれば、ギルドで保証します」
「納得しました。じゃあ、現金を引き出す時は、どのようにすれば宜しいのですか?」
「……ワレバッド限定ですが、王国銀行ワレバッド支店と提携していますから、銀行の営業時間内には引き出せます。それと当然この総本部、そして王都支部他いくつかの支部でも導入済みですから、銀行と同じく営業時間内ならば引き出しが可能ですね」
「ちなみに、その新システムって、サブマスターもお使いですか?」
「当然です! 冒険者に勧めている者自身が使わないでどうするのですか? マスターと私も含め、このギルド総本部の職員は全員が新システムを使っていますよ」
「成る程」
「それとまだまだ実験的にですが、冒険者ギルドの所属登録証で買い物をするシステムもワレバット限定で導入しています」
「え? それって凄いですね」
「はい、現金が不要で、所属登録証にプールした残高があれば、ワレバットのいくつかの提携店で買い物が可能です。武器防具や家具、食料品や生活必需品等々も購入が可能ですし、飲食店では食事も出来ます。今後も提携店を増やし、上手く行けば王都やその他の町村でも導入します」
ここまで聞いて安心し、納得した。
モーリスもOKしたと言うし、自分も使う。
そう、リオネルは決めた。
「分かりました。では、俺も新システム仕様でお支払いをお願いします。但し当座のお金が必要ですので、金貨100枚分だけは、この場の現金支払いでお願い出来ますか?」
リオネルが了解すると、
「ははははは! OKです! リオネル君はとても慎重ですね。だけど一度決断したら思いっきり大胆に行動するタイプでしょう? 加えて現実的で、しっかりもしています。私は大いに気に入りました!」
とても意外であった。
初見のイメージでは、あまり表情を変えず、冷静沈着で物静かな雰囲気のブレーズが……
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