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第66話「超カッコいい!」

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エレーヌとアンナ、そしてクレマン。
同じアルエット村に住みながら、心が離れていた肉親の3人は和解し、元の家族に戻る……否! 全く新たな家族になるべく歩み始めた。

エレーヌとアンナは、おおやけの会合以外では、クレマンをもう村長と呼ばない。
これからは……
『お父さん』『おじいちゃん』と、敬意、親しみ……
そして愛情を込め、呼ぶことだろう。

そしてクレマンは事あるごとに、エレーヌを美しい娘だと、アンナを可憐な孫だと、村の至る所で、熱く熱く語るに違いない。

仲良きことは美しい……

その原因となったのが、『オーク襲撃』という怖ろしい災禍を救った、
異分子ともいえる存在、リオネル・ロートレック。
彼の出現である事を疑う余地はない。

まさに人生は出会いなのだ……

リオネルとの邂逅かいこうにより、意地を張り、停滞していた『3人の関係』に劇的な変化が起こり、『前向きな改善』が為されたのである。
3人の運命は、リオネルによって大きく変わったといえよう。

さてさて!
リオネルと共に洞窟から戻ったクレマンは、集まった大勢の村民達を見て、好都合だと判断した。
オーク討伐の現状報告、今後の方針について話す事にしたのである。

「皆の者聞いてくれえ!」

クレマンは大きく声を張り上げる。

「このワシ、村長のクレマンが見届けたあ! 我が村民エレーヌとアンナを救った若きランカー冒険者リオネル・ロートレックさんが何と単独で! 村はずれの洞窟に巣喰うオークの群れ115体を、強力な風の魔法を使い、『ばったばった』と見事に討伐したのだあっ!」

単独でオーク115体を「ばったばった」と討伐!?
それも強力な魔法を使って!?
こん棒をふるい、エレーヌとアンナを救ったと聞いていたのに??

おおおおおおおおおっっっ!!!

衝撃的な事実の発表に、集まった村民は皆、驚く。
リオネルを敵視する少年ドニも目を丸くしている。

掴みはOK!
とばかり、クレマンの話に力が入る。

「リオネルさんの魔法は風だけではないぞ! 回復魔法もお使いになる! 行軍に疲れたワシを癒したのじゃ! その上! 葬送魔法まで使って、倒したオークを神々しい発光に包み、塵にしてしもうた! まさに創世神教会の司祭様のようじゃ! 否! 違うぞ! 底知れぬお力をお持ちの偉大なる賢者様じゃ!」

リオネルは、偉大なる賢者様!?

おおおおおおおおおっっっ!!!

「皆の者! 油断するでない! オークどもに勝利したが、まだ戦いは終わっておらぬ! 勝って兜の緒を締めよじゃ!」

おおおおおおおおおっっっ!!!

「リオネルさんはな! 同行したワシの身を案じ、深追いをせず、奴らの本拠、洞窟の探索は明日単身で行うとおっしゃってくれた。残党が居れば、『さくさくっ』と退治してくれるはずじゃ!」

またも単身で、オークの残党が居るやもしれぬ洞窟へ、リオネルが挑む!?
「さくさくっ」と退治する!!
村民の興奮は更に大きくなる。

おおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!

「残念ながら! このような災厄はまた起こりうる! 王国には多くの魔物が居る! 人間の賊も現れる! ワシはご領主様と連絡を取り合い、今後は領主様の麾下たる、騎士様のご出馬をお願いするつもりじゃ!」

おおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!

「しかあし! 敵は待ってはくれぬぞお! 騎士様が村へいらっしゃるまで! 村の平和は我々自身で守らねばならあぬ!」

おおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!

「我が自警団の実力では、まだまだ村の防衛に不安があ~る。そこでだあ! 明日、洞窟の探索から戻ってからだから……明後日以降じゃ! リオネルさんが村にご滞在中は、戦闘訓練の指導をお願いし、快諾して頂いたあ!!」

おおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!

「皆の者喜べ! 偉大なる賢者様から、じきじきにご指導を受けられるぞお!」

おおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!

「参加希望者が居れば、自警団員に限定はしな~い。老若男女問わず、誰でも村長のワシへ言ってくれれば良いのじゃあ!」

おおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!

「開始日の明後日は身体のさばき方から始めるから、武器は不要! 動きやすい服装で参加するように!」

おおおおおおおおおおおおおっっっ!!!!!!

村民の前で大いに称賛され、ひどく緊張気味なリオネルの傍らで……
胸を張ったクレマンは、村長として堂々と言い放った。

そんなふたりを、大勢の村民達と一緒に見守るエレーヌとアンナ。

「おじいちゃって、こんなにカッコ良かったんだ、意外だあ!」

「うふふ、アンナのおじいちゃんだもの、当然じゃない?」

「うん! でもでも! やっぱりリオにいちゃんの方が超カッコいいよ!」

「あはは、そうね! リオネルさんは超カッコいいね!」

ふたりの他愛もない会話は、村民の大歓声の中に、紛れて行ったのである。
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