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第68話「さあ強敵と相まみえよう」
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翌日早朝……
リオネルはクレマンへ約束した通り、単身でオークが跋扈していた洞窟へ向かう。
昨日、強力な魔導発煙筒で洞窟外へオークどもをいぶりだし、115体を倒した。
だが、クレマンが居た為、リスク回避の為、内部には入らなかった。
なので今朝探索し、もしも残党が居れば掃討するつもりなのだ。
身支度し、正門の前でリオネルは見送りを受けている。
「じゃあ、行って来ます」
「兄貴! いってらっしゃい!」
「お怪我のないよう!」
「お祈りしておりやす!」
何と!
見送る者の中には、ドニ、そして仲間の少年ふたりが居た。
3名ともびしっと敬礼、直立不動でリオネルを見送っているのだ。
「もう! あんたたち! ホントしょ~もないんだからあ! リオにいちゃんが優しいから、いい気になって! もお!」
アンナが固く腕を組み、口をとがらせた『しかめっつら』でプンプンしていた。
どうして、こうなったのか?
それには理由があった
……昨日、ドニ達は、やはりというか、「納得しなかった」のだ。
リオネルとの腕相撲勝負で『30戦30敗』、それも瞬殺……されてもである。
クレマンに言われ、一旦は納得したが、「しつこく」リオネルへ再戦を挑んだのである。
結果!!
戦うも戦ったり、先の戦いと合わせトータルで腕相撲『105戦105敗!!』
しかし甘い!
それでも終わり……ではなかったのだ。
更に「しつこくしつこく!」次に『すもう』でも勝負を挑み、『51戦51敗!!』
そして!
これでも、ドニ達は、まだ諦めなかった!
「しつこくしつこく、更にしつこく!」
またまた腕相撲も行い、更に『82戦82敗』が加わる!!
という事で、何と何と何と!!!
『通算238回』もリオネルへ挑戦。
全敗した、超が付く粘着パワーを発揮したのだ。
対してリオネルは、ドニ達の気が済むまで嫌がらず、徹底的に3人の相手をしてやった。
そして戦いが終わった直後……
ドニ達の態度が一変した。
全員で、
「「「ありがとうございましたっ!」」」
と、深く頭を下げ、リオネルへ「礼を言った」のである。
何故?
とリオネルは思ったが、理由はすぐに判明する。
リーダー格のドニが、こう言い放ったからだ。
「うす! リオネルさん、いえ、リオネル兄貴! 本当に本当に申し訳ありませんでした! さすがに! 俺達完全に参りましたっ! ウチの村で、ここまでとことん、相手をしてくれた人は居ませんでしたあ!! す、凄く嬉しかったです!」
そう!
ドニ達は、普段から生意気な態度で、
アルエット村の大人達に「ハブられていた」らしい。
それゆえ、あまりにも強く、あまりにも面倒見の良い、
『リオネルの本質』を身をもって知り、心酔した。
3人はリオネルを『兄貴!』と呼び、敬い慕うようになってしまったのである。
リオネルの『人の好さ』に付け込んだドニ達の身勝手さにアンナは憤慨していたが……
エレーヌとクレマンは、意外にも「にこにこ」していた。
何故なら、大勢の村民達の前で行われたドニ達との戦いは……
『腕相撲』も、『すもう』も全て瞬殺。
完全に子ども扱い。
改めて、『リオネルの強さ』を再認識して貰ったからである。
加えて、これだけ戦っても、リオネルが全く疲れを見せておらず、
「平気です」と答えたからでもあった。
また、リオネルに反抗的だったドニ達の態度が一変した事で、
今後の戦闘訓練も村民が一体となって、円滑に運ぶと踏んだのである。
さてさて!
エレーヌとアンナも『ドニ軍団』に続き、言葉をかけた。
「リオネルさん、気を付けて!」
「リオにいちゃん! 頑張って!」
「ああ、気を付けますし、頑張るよ!」
対して、昨日の疲れも見せず、元気に言葉を戻すリオネル。
最後に、
「リオネルさんのあの強さなら、ワシはあまり心配はしません。まあ危険はないでしょう。念の為、慎重には慎重を期してください」
と、クレマンが気遣えば、
「了解です。充分に注意し、探索が終わったら、皆さんへご報告します。それと洞窟は念の為、探索後、封鎖しておきますね」
リオネルは気持ちを引き締めた上で、アルエット村を出発したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
今朝はクレマンをおぶってはいない。
なのでリオネルは村から洞窟までの約15㎞を、
余力を充分残しながら、15分を切って駆け抜ける。
幸い、途中にオークを含めた魔物、人間の賊は出現しなかった。
……洞窟前に到着すると、昨日の激闘が嘘のように静まり返っている。
索敵をMAXにして来たが、周囲にオークの気配はない。
昨日ドニ達の相手をした後、エレーヌ、アンナと宅でクレマンを入れて4人で食事をしている時……
リオネルは表向きは笑顔で会話をしながら……ずっと考え込んでいた。
エレーヌとアンナ、クレマン以下アルエット村の村民達はオーク討伐の詰めを、
『楽観視』していたが、リオネルはそこまで甘く考えてはいなかったのだ。
洞窟の底から、おぞましい殺意の波動を送って来た、上位種らしき者との戦い方を、ひたすら模索していたのである。
持てる能力を冷静に鑑みて、万が一格上の相手と遭遇した場合、
絶対に「過信は禁物だ」と、改めて身を引き締めたのである。
現に兄貴と慕うドニ達が、「俺達もぜひ洞窟探索に同行を」と、申し出てもきっぱり断っていた。
冒険者ギルドのランクB、ランカーという肩書こそ先行しているが、
リオネルは所詮レベルが『13』、自分が『半人前以下』だという自覚を持っている。
習得した強大すぎるスキルと動物の能力が、とんでもないくらい大きく実力を底上げしていると考えていたのだ。
『フリーズハイ』レベル補正プラス15を始めとした、戦闘の際に圧倒的な優位をとれる、いわゆる『マウントポジションスキル』はけして無敵ではない。
致命的な『弱点』がある。
各スキルの『レベル補正プラス15』というのがミソである。
そもそも補正がなければ、これらのスキルは、
レベル『13』のリオネルより弱い、レベル12以下の相手にしか通用しない。
『15』の補正がついて、ようやく格上の相手に通用するのだが、
リオネル自身のレベルに反映し、MAXレベル27の敵までにしか通用しないのだ。
もしもオークの上位種が洞窟の最奥に居て、そのレベルが28以上であれば、
『フリーズハイ』を含め、『マウントポジションスキル』は行使しても、全てが無効となる。
それに現場も、ただでさえ見通しの悪い、不慣れな洞窟……
大けがどころか、命を失うリスクもある。
しかし……
リオネルは楽観はしていなくとも、用心はしていても、前向きだ。
命を大事にするのが最優先なのだが、けして最初から投げず、諦めずと考えている。
旅に出たらいろいろな敵と戦う。
当然『格上』の相手とも戦うに違いない。
今回は、アルエット村村民の為にも、そのままにしてはおけない。
けりをつけねばならない。
リオネルは、自分と相まみえるであろう魔物を含めた『敵』のスペックを念入りに調べていた。
オークの上位種の情報も当然、冒険者ギルドの図書館で調べ上げており、
冒険者達からも詳しく取材している。
もし上位種が出現した場合の作戦は立ててある。
その際に使用するアイテムも、王都で購入し、収納の腕輪へ入れてあった。
「さあ、行くか」
リオネルは少し緊張しながらも、洞窟へ足を踏み入れたのである。
リオネルはクレマンへ約束した通り、単身でオークが跋扈していた洞窟へ向かう。
昨日、強力な魔導発煙筒で洞窟外へオークどもをいぶりだし、115体を倒した。
だが、クレマンが居た為、リスク回避の為、内部には入らなかった。
なので今朝探索し、もしも残党が居れば掃討するつもりなのだ。
身支度し、正門の前でリオネルは見送りを受けている。
「じゃあ、行って来ます」
「兄貴! いってらっしゃい!」
「お怪我のないよう!」
「お祈りしておりやす!」
何と!
見送る者の中には、ドニ、そして仲間の少年ふたりが居た。
3名ともびしっと敬礼、直立不動でリオネルを見送っているのだ。
「もう! あんたたち! ホントしょ~もないんだからあ! リオにいちゃんが優しいから、いい気になって! もお!」
アンナが固く腕を組み、口をとがらせた『しかめっつら』でプンプンしていた。
どうして、こうなったのか?
それには理由があった
……昨日、ドニ達は、やはりというか、「納得しなかった」のだ。
リオネルとの腕相撲勝負で『30戦30敗』、それも瞬殺……されてもである。
クレマンに言われ、一旦は納得したが、「しつこく」リオネルへ再戦を挑んだのである。
結果!!
戦うも戦ったり、先の戦いと合わせトータルで腕相撲『105戦105敗!!』
しかし甘い!
それでも終わり……ではなかったのだ。
更に「しつこくしつこく!」次に『すもう』でも勝負を挑み、『51戦51敗!!』
そして!
これでも、ドニ達は、まだ諦めなかった!
「しつこくしつこく、更にしつこく!」
またまた腕相撲も行い、更に『82戦82敗』が加わる!!
という事で、何と何と何と!!!
『通算238回』もリオネルへ挑戦。
全敗した、超が付く粘着パワーを発揮したのだ。
対してリオネルは、ドニ達の気が済むまで嫌がらず、徹底的に3人の相手をしてやった。
そして戦いが終わった直後……
ドニ達の態度が一変した。
全員で、
「「「ありがとうございましたっ!」」」
と、深く頭を下げ、リオネルへ「礼を言った」のである。
何故?
とリオネルは思ったが、理由はすぐに判明する。
リーダー格のドニが、こう言い放ったからだ。
「うす! リオネルさん、いえ、リオネル兄貴! 本当に本当に申し訳ありませんでした! さすがに! 俺達完全に参りましたっ! ウチの村で、ここまでとことん、相手をしてくれた人は居ませんでしたあ!! す、凄く嬉しかったです!」
そう!
ドニ達は、普段から生意気な態度で、
アルエット村の大人達に「ハブられていた」らしい。
それゆえ、あまりにも強く、あまりにも面倒見の良い、
『リオネルの本質』を身をもって知り、心酔した。
3人はリオネルを『兄貴!』と呼び、敬い慕うようになってしまったのである。
リオネルの『人の好さ』に付け込んだドニ達の身勝手さにアンナは憤慨していたが……
エレーヌとクレマンは、意外にも「にこにこ」していた。
何故なら、大勢の村民達の前で行われたドニ達との戦いは……
『腕相撲』も、『すもう』も全て瞬殺。
完全に子ども扱い。
改めて、『リオネルの強さ』を再認識して貰ったからである。
加えて、これだけ戦っても、リオネルが全く疲れを見せておらず、
「平気です」と答えたからでもあった。
また、リオネルに反抗的だったドニ達の態度が一変した事で、
今後の戦闘訓練も村民が一体となって、円滑に運ぶと踏んだのである。
さてさて!
エレーヌとアンナも『ドニ軍団』に続き、言葉をかけた。
「リオネルさん、気を付けて!」
「リオにいちゃん! 頑張って!」
「ああ、気を付けますし、頑張るよ!」
対して、昨日の疲れも見せず、元気に言葉を戻すリオネル。
最後に、
「リオネルさんのあの強さなら、ワシはあまり心配はしません。まあ危険はないでしょう。念の為、慎重には慎重を期してください」
と、クレマンが気遣えば、
「了解です。充分に注意し、探索が終わったら、皆さんへご報告します。それと洞窟は念の為、探索後、封鎖しておきますね」
リオネルは気持ちを引き締めた上で、アルエット村を出発したのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
今朝はクレマンをおぶってはいない。
なのでリオネルは村から洞窟までの約15㎞を、
余力を充分残しながら、15分を切って駆け抜ける。
幸い、途中にオークを含めた魔物、人間の賊は出現しなかった。
……洞窟前に到着すると、昨日の激闘が嘘のように静まり返っている。
索敵をMAXにして来たが、周囲にオークの気配はない。
昨日ドニ達の相手をした後、エレーヌ、アンナと宅でクレマンを入れて4人で食事をしている時……
リオネルは表向きは笑顔で会話をしながら……ずっと考え込んでいた。
エレーヌとアンナ、クレマン以下アルエット村の村民達はオーク討伐の詰めを、
『楽観視』していたが、リオネルはそこまで甘く考えてはいなかったのだ。
洞窟の底から、おぞましい殺意の波動を送って来た、上位種らしき者との戦い方を、ひたすら模索していたのである。
持てる能力を冷静に鑑みて、万が一格上の相手と遭遇した場合、
絶対に「過信は禁物だ」と、改めて身を引き締めたのである。
現に兄貴と慕うドニ達が、「俺達もぜひ洞窟探索に同行を」と、申し出てもきっぱり断っていた。
冒険者ギルドのランクB、ランカーという肩書こそ先行しているが、
リオネルは所詮レベルが『13』、自分が『半人前以下』だという自覚を持っている。
習得した強大すぎるスキルと動物の能力が、とんでもないくらい大きく実力を底上げしていると考えていたのだ。
『フリーズハイ』レベル補正プラス15を始めとした、戦闘の際に圧倒的な優位をとれる、いわゆる『マウントポジションスキル』はけして無敵ではない。
致命的な『弱点』がある。
各スキルの『レベル補正プラス15』というのがミソである。
そもそも補正がなければ、これらのスキルは、
レベル『13』のリオネルより弱い、レベル12以下の相手にしか通用しない。
『15』の補正がついて、ようやく格上の相手に通用するのだが、
リオネル自身のレベルに反映し、MAXレベル27の敵までにしか通用しないのだ。
もしもオークの上位種が洞窟の最奥に居て、そのレベルが28以上であれば、
『フリーズハイ』を含め、『マウントポジションスキル』は行使しても、全てが無効となる。
それに現場も、ただでさえ見通しの悪い、不慣れな洞窟……
大けがどころか、命を失うリスクもある。
しかし……
リオネルは楽観はしていなくとも、用心はしていても、前向きだ。
命を大事にするのが最優先なのだが、けして最初から投げず、諦めずと考えている。
旅に出たらいろいろな敵と戦う。
当然『格上』の相手とも戦うに違いない。
今回は、アルエット村村民の為にも、そのままにしてはおけない。
けりをつけねばならない。
リオネルは、自分と相まみえるであろう魔物を含めた『敵』のスペックを念入りに調べていた。
オークの上位種の情報も当然、冒険者ギルドの図書館で調べ上げており、
冒険者達からも詳しく取材している。
もし上位種が出現した場合の作戦は立ててある。
その際に使用するアイテムも、王都で購入し、収納の腕輪へ入れてあった。
「さあ、行くか」
リオネルは少し緊張しながらも、洞窟へ足を踏み入れたのである。
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