42 / 696
第42話「強盗!!」
しおりを挟む
王国が整地した『空き地』は、入り口代わりの一方を街道に面しており、他の三方は原野という形が多い。
リオネルが入った空き地は他に誰も居なかった。
誰もが何気なく行動する人間の性であろうか、リオネルは片隅へ行く……
念の為、周囲の索敵を行う。
背後の原野に危険は感じない。
少しゆったりしたいと思ったので、リオネルは湯を沸かし、好物の紅茶を飲む事にした。
ちなみにすぐ誰かが来たら、魔導水筒の冷水で、ささっと済ますつもりであった。
そう、リオネルが携行する水筒は魔導水筒だ。
少し奮発して購入した魔導水筒は付呪された魔法による優れた保温効果がある。
今日はたまたま冷えた水を入れているが、今度は温かい紅茶を入れておこうと思う。
さてさて!
念のためリオネルは、しばし待ち、索敵で様子を確認した。
でも、大丈夫のようだ。
手早く用意すれば、紅茶を飲む時間はある。
リオネルは背負っていたバッグを下した。
続いて、収納の腕輪から魔導防水シートを出して敷き、続いて大樽、魔導コンロ、やかん、ポット、紅茶の茶葉入れ、マグカップを出した。
シートに座り、大樽から水をやかんに入れ、コンロに置き、魔力で火を点ける。
湯が沸く間に、大樽を腕輪へ仕舞う。
搬出、搬入で出し入れ自由だから楽なものである。
改めてアンセルムには大いに感謝だ。
湯はすぐ沸いた。
茶葉をポットへ入れ、湯を注ぎ、しばし待つ。
この間に、魔導コンロ、茶葉入れを仕舞う。
マグカップを温めていた湯を捨て、ポットからお茶を入れる。
やかんのお湯でポットを洗った後、やかんとポットを腕輪へ仕舞う。
「ふう、これで良しと」
ここまでして、ようやく紅茶が飲める。
面倒だが、収納の腕輪の出し入れを他人に見せたくない。
何故なら、腕輪の秘密がバレれば絶対に目を付けられる。
一見、古めかしく地味な腕輪だから、何もなければほぼ盗まれないと思うから。
茶葉も少しだけ高いものを買った。
時たま見せる、普段は無駄遣いしないリオネルの『ささやかな贅沢』である。
「美味い!」
香りを楽しみながら、紅茶を飲む。
吹き抜ける風が気持ち良い!
と、ここで。
リオネルの索敵に『反応』があった。
反応は『複数の人間3人』である。
距離は300m。
「おいおい、何だよ、せっかく紅茶を楽しんでいたのに」
人間3人からは、邪な波動を感じる!
……嫌な予感がした。
リオネルは、急いで紅茶を飲み干し、マグカップをバッグへ、
魔導防水シートも手早く畳み、同じくバッグへと入れた。
バッグを背負い、草の上へ直に座る。
スクラマサクスでも、樫のこん棒でも、武器をすぐ使えるようにしておく。
左肩の盾をシールドバッシュ出来るように手甲の位置へ。
やがて複数の人間は、姿を現した。
3人である。
リオネルをしばらく凝視し、『空地』へ入って来る。
どうやらリオネルが居るのを見て、空地へ入ってくるようだ。
リオネルは体内魔力を上げ、身体強化の魔法をかける。
すぐ動けるように態勢を整える。
街道沿いとはいえ、広い原野で自分は今ひとり、油断は絶対に禁物だ。
ビルドアップした視力で分かる……
3人は、革鎧を着込んだ冒険者風の男達だ。
他にもスペースはあるのに、何故かリオネルへ近付いて来る。
『空地』はそこそこ広い。
普通なら、近寄ってなど来ない。
何か用事があるのか、それともヤバイ奴なのか……
ここでリオネルも、ゆっくりと立ち上がる。
男達へ見えないよう、右を後ろ手にし、こん棒を持つ。
3人の男達は、10mくらいの距離まで近付いて来た。
全員が30歳を超えた中年男である。
リーダーらしきひげ面の男が大きな声で言う。
「あんちゃん!」
「はあ」
「命が惜しけりゃよぉ、有り金全部出せやああ!」
おおっと!
男は最後には絶叫し、いきなり脅しをかけて来た!
やはり!
3人の男は……
リオネルを狙って来た『強盗』だった!
そこそこ立派な装備を身に着け、全然強そうには見えない。
なのに仲間も護衛も連れずに、『ぼっち』のひとり旅。
そんなリオネルは、男達のような賊にとって絶好のカモである。
周囲に誰も居らず、『空地』で休憩している今この時が、
最高の襲撃チャンスと判断したのであろう。
命が惜しけりゃ、有り金全部出せ!
強盗のリーダーから、命を脅されたリオネルだが
……相手が3人なのに、全く平気だった。
本当にヤバイ奴、怖い相手は笑ったまま、襲ってくる。
もしくは無言で、いきなり刺して来るからだ。
以前の臆病なリオネルならいざ知らず……
今のリオネルは、数多経験した魔物との戦いで度胸が付き、
完全に強盗達を見下ろしていた。
笑みまで浮かべる余裕がある。
「あはは、おっさん達、強盗慣れしてないでしょ?」
「な、な、何だとぉぉぉ!! こらあっ!!」
「ほらほら、図星でしょ? こういうのやめません、今のうちですよ」
「く、くそったれぇがあ! 今更そうですかと! やめるわないだろぉ! 金出せ、コノヤロ! じゃなきゃ! ぶっ殺すぞぉぉ、小僧ぉぉ!」
堂々としたリオネルに、飲まれてしまっている。
背後の配下らしきふたりも、及び腰であった。
「いえいえ命は惜しいですけれど、俺が身体を張って稼いだお金は一切出しません。あんたにも、あんたにも、あんたにもね」
「しれっ」と言うリオネルは左手で強盗3人をどんどん指差しながら……
さりげなく特異スキル『フリーズハイ』を使っていたのである。
リオネルが入った空き地は他に誰も居なかった。
誰もが何気なく行動する人間の性であろうか、リオネルは片隅へ行く……
念の為、周囲の索敵を行う。
背後の原野に危険は感じない。
少しゆったりしたいと思ったので、リオネルは湯を沸かし、好物の紅茶を飲む事にした。
ちなみにすぐ誰かが来たら、魔導水筒の冷水で、ささっと済ますつもりであった。
そう、リオネルが携行する水筒は魔導水筒だ。
少し奮発して購入した魔導水筒は付呪された魔法による優れた保温効果がある。
今日はたまたま冷えた水を入れているが、今度は温かい紅茶を入れておこうと思う。
さてさて!
念のためリオネルは、しばし待ち、索敵で様子を確認した。
でも、大丈夫のようだ。
手早く用意すれば、紅茶を飲む時間はある。
リオネルは背負っていたバッグを下した。
続いて、収納の腕輪から魔導防水シートを出して敷き、続いて大樽、魔導コンロ、やかん、ポット、紅茶の茶葉入れ、マグカップを出した。
シートに座り、大樽から水をやかんに入れ、コンロに置き、魔力で火を点ける。
湯が沸く間に、大樽を腕輪へ仕舞う。
搬出、搬入で出し入れ自由だから楽なものである。
改めてアンセルムには大いに感謝だ。
湯はすぐ沸いた。
茶葉をポットへ入れ、湯を注ぎ、しばし待つ。
この間に、魔導コンロ、茶葉入れを仕舞う。
マグカップを温めていた湯を捨て、ポットからお茶を入れる。
やかんのお湯でポットを洗った後、やかんとポットを腕輪へ仕舞う。
「ふう、これで良しと」
ここまでして、ようやく紅茶が飲める。
面倒だが、収納の腕輪の出し入れを他人に見せたくない。
何故なら、腕輪の秘密がバレれば絶対に目を付けられる。
一見、古めかしく地味な腕輪だから、何もなければほぼ盗まれないと思うから。
茶葉も少しだけ高いものを買った。
時たま見せる、普段は無駄遣いしないリオネルの『ささやかな贅沢』である。
「美味い!」
香りを楽しみながら、紅茶を飲む。
吹き抜ける風が気持ち良い!
と、ここで。
リオネルの索敵に『反応』があった。
反応は『複数の人間3人』である。
距離は300m。
「おいおい、何だよ、せっかく紅茶を楽しんでいたのに」
人間3人からは、邪な波動を感じる!
……嫌な予感がした。
リオネルは、急いで紅茶を飲み干し、マグカップをバッグへ、
魔導防水シートも手早く畳み、同じくバッグへと入れた。
バッグを背負い、草の上へ直に座る。
スクラマサクスでも、樫のこん棒でも、武器をすぐ使えるようにしておく。
左肩の盾をシールドバッシュ出来るように手甲の位置へ。
やがて複数の人間は、姿を現した。
3人である。
リオネルをしばらく凝視し、『空地』へ入って来る。
どうやらリオネルが居るのを見て、空地へ入ってくるようだ。
リオネルは体内魔力を上げ、身体強化の魔法をかける。
すぐ動けるように態勢を整える。
街道沿いとはいえ、広い原野で自分は今ひとり、油断は絶対に禁物だ。
ビルドアップした視力で分かる……
3人は、革鎧を着込んだ冒険者風の男達だ。
他にもスペースはあるのに、何故かリオネルへ近付いて来る。
『空地』はそこそこ広い。
普通なら、近寄ってなど来ない。
何か用事があるのか、それともヤバイ奴なのか……
ここでリオネルも、ゆっくりと立ち上がる。
男達へ見えないよう、右を後ろ手にし、こん棒を持つ。
3人の男達は、10mくらいの距離まで近付いて来た。
全員が30歳を超えた中年男である。
リーダーらしきひげ面の男が大きな声で言う。
「あんちゃん!」
「はあ」
「命が惜しけりゃよぉ、有り金全部出せやああ!」
おおっと!
男は最後には絶叫し、いきなり脅しをかけて来た!
やはり!
3人の男は……
リオネルを狙って来た『強盗』だった!
そこそこ立派な装備を身に着け、全然強そうには見えない。
なのに仲間も護衛も連れずに、『ぼっち』のひとり旅。
そんなリオネルは、男達のような賊にとって絶好のカモである。
周囲に誰も居らず、『空地』で休憩している今この時が、
最高の襲撃チャンスと判断したのであろう。
命が惜しけりゃ、有り金全部出せ!
強盗のリーダーから、命を脅されたリオネルだが
……相手が3人なのに、全く平気だった。
本当にヤバイ奴、怖い相手は笑ったまま、襲ってくる。
もしくは無言で、いきなり刺して来るからだ。
以前の臆病なリオネルならいざ知らず……
今のリオネルは、数多経験した魔物との戦いで度胸が付き、
完全に強盗達を見下ろしていた。
笑みまで浮かべる余裕がある。
「あはは、おっさん達、強盗慣れしてないでしょ?」
「な、な、何だとぉぉぉ!! こらあっ!!」
「ほらほら、図星でしょ? こういうのやめません、今のうちですよ」
「く、くそったれぇがあ! 今更そうですかと! やめるわないだろぉ! 金出せ、コノヤロ! じゃなきゃ! ぶっ殺すぞぉぉ、小僧ぉぉ!」
堂々としたリオネルに、飲まれてしまっている。
背後の配下らしきふたりも、及び腰であった。
「いえいえ命は惜しいですけれど、俺が身体を張って稼いだお金は一切出しません。あんたにも、あんたにも、あんたにもね」
「しれっ」と言うリオネルは左手で強盗3人をどんどん指差しながら……
さりげなく特異スキル『フリーズハイ』を使っていたのである。
10
お気に入りに追加
330
あなたにおすすめの小説
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
ハズレスキル【収納】のせいで実家を追放されたが、全てを収納できるチートスキルでした。今更土下座してももう遅い
平山和人
ファンタジー
侯爵家の三男であるカイトが成人の儀で授けられたスキルは【収納】であった。アイテムボックスの下位互換だと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
ダンジョンをさまよい、魔物に襲われ死ぬと思われた時、カイトは【収納】の真の力に気づく。【収納】は魔物や魔法を吸収し、さらには異世界の飲食物を取り寄せることができるチートスキルであったのだ。
かくして自由になったカイトは世界中を自由気ままに旅することになった。一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトに戻ってくるように土下座してくるがもう遅い。
俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる