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第34話「初恋の行方」
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ゴブリン6,517体討伐。
それもたったランクDの冒険者がたったひとり、1日と半日で。
とんでもない事実を目の前の水晶に見て、驚いたナタリー。
しばし経って、ようやく落ち着いて来ると、改めて水晶に記された事実を再確認する。
「え、ええっと、念の為、確認します。リオネルさんが討伐したゴブリンの個体数は、6,517体。内訳はゴブリンサージが18体、ゴブリンソルジャーが51体、普通種が6,448体ですね」
「ええ! ナタリーさん! いちいちカウントしなかったので、はいと言い切れませんが大体そんなところだと思います」
「だ、大体……ですか」
「でもでも! ギルドのカウンターなら、計数に間違いはないでしょう! ちなみに巣穴へ突入するまではいかず、巣穴の最奥に居るゴブリンシャーマンは倒していません!」
「な、成る程。報奨金はっと……わお! 凄い! 計算すると、金貨687枚、銀貨13枚になりますよ」
モノ凄い大金を稼ぐ事が出来た。
ナタリーのフォローあっての事だ。
そして麗しい彼女の存在こそが、リオネルのモチベーションの源なのだ。
「ありがとうございます!」
と、リオネルが礼を言えば、ナタリーも微笑んでいた。
だいぶ落ち着いた様子である。
「リオネルさん」
「は、はいっ!」
「本当に素晴らしいわ! ランカーでもないのに、とんでもない快挙よ」
「重ね重ねありがとうございます! ええ、そうですね。自分でも良く戦えたと思います」
ナタリーに褒められて凄く嬉しい!
早く一人前になって、胸を張りたい! 誇りたい!
でも……
ギフトスキル『ゴブリンハンター』の能力による無双っぷりを始め、今のリオネルには能力的な秘密がたくさんある。
明かすわけにはいかない。
風の魔法とギルドで講習を受けた武技で戦ったおかげだと言うしかない。
しかし、リオネルに対し、ナタリーはあっさり告げる。
「これならばリオネルさんは一人前以上……いつ旅立っても大丈夫ですね。どんな街でも、冒険者として通用する実力だと私は思います」
「は、は、はい??」
え?
あれれ!?
いつ旅立っても大丈夫!?
どんな街でも、冒険者として通用する実力!?
自分がいつか王都から旅立つ事を聞いて、あんなに寂しそうにしていたのに……
それに、いきなりフレンドリーさが消えたぞ!?
ど、ど、どういう事だっ!?
リオネルは大いに戸惑い、動揺する。
大きな不安が心を染めて来る。
しかし、今度は!!
またもバラ色展開!?
「実は私、リオネルさんが心配だったんです」
「お、お、俺を!?……ナ、ナタリーさんがですかっ!?」
「はい! 凄く心配していました! 夜も眠れないほどに!」
「す、凄く心配!? よ、夜も眠れないほど!? ほ、ほ、ほんとですかっ!!!」
一旦、絶望に陥った状況から……
もしや大逆転!?
だだだだだだだだだだだだだだ!!!
めくるめく結果に向け、リオネルの心のどらが鳴る。
じゃ~~~~んんんんん!!!!!
だがっ!!!
衝撃の『告白』が、すぐリオネルを待っていたのだあ!!
「ほんとです! だって、だって! リオネルさん、亡くなった『私の弟』に良く似ていたので……」
「はあ!!?? お、お、お、弟ぉぉ!?」
「はい! また弟を亡くしたら嫌だなって思い、頑張って、生き抜いてって! つい感情移入して見守り、時には、はらはらしていました」
どががががが~~~んんんん!!!!
『勝利のどら』の代わりに、『敗戦の哀しい鐘』がリオネルの心で鳴った。
否!
『凶悪な失恋ハンマー』がもろいリオネルの心を粉々に!! 完全に打ち砕いたあ!!
司祭がスキル授与を告げた時と同じ、いやそれ以上だった。
上げて、下げて、また上げて、最後に思い切り下げられた!!
否!
リオネルが勝手に、特別な好意だと思い込み、何度も期待して……
最後に思い切り「すと~~ん!!」と落とされたのである。
「ええ! 初めてリオネルさんに会った時、嬉しかったです! もしや弟が生き返ったのかと思うくらい似ていましたものっ!」
「はあ、はああ……俺が亡くなった弟さんに良く似ていた……そうだったんですか。……そうですよね」
ほろ苦い思いがリオネルの胸を満たす。
甘かった。
やはり、思い込みだった。
錯覚だった。
ナタリーのような高嶺の花が、男子としてさえない自分を、
まともな『恋愛対象』として見るわけがない。
……思えば、素敵な年上女子ナタリーに対する淡い気持ちは、初めての恋。
ナタリーは、死んだ母以外に、初めて優しくしてくれた女性だった。
だから……
自分の為だけでなく、ナタリーに喜んでもらおうと、褒めて貰おうと、
一生懸命、頑張った。
でも現実は厳しい……
所詮は仕事上のやりとりだった。
亡き弟の代わりだと思われていた。
リオネルの『初恋』が今、はっきりと破れたのだ。
「ごめんなさい! 私、リオネルさんの実力を見誤っていました!」
「……………」
「ここまでの討伐数とは思いませんでした! これはランクアップ検討の対象となりますから、サブマスターと魔法鑑定士を呼びましょう。採取された鉱石の鑑定もありますからね♡」
「……………」
あまりにも大きいショックの為なのか、動揺が止まらず続いているのか……
急に、ず~っと遠くで聞こえるようになった、ナタリーの魅惑的な声と優しい言葉。
「お、お、お願いします……」
かすれた声で答えたリオネルは、ただただ深く頭を下げていたのである。
それもたったランクDの冒険者がたったひとり、1日と半日で。
とんでもない事実を目の前の水晶に見て、驚いたナタリー。
しばし経って、ようやく落ち着いて来ると、改めて水晶に記された事実を再確認する。
「え、ええっと、念の為、確認します。リオネルさんが討伐したゴブリンの個体数は、6,517体。内訳はゴブリンサージが18体、ゴブリンソルジャーが51体、普通種が6,448体ですね」
「ええ! ナタリーさん! いちいちカウントしなかったので、はいと言い切れませんが大体そんなところだと思います」
「だ、大体……ですか」
「でもでも! ギルドのカウンターなら、計数に間違いはないでしょう! ちなみに巣穴へ突入するまではいかず、巣穴の最奥に居るゴブリンシャーマンは倒していません!」
「な、成る程。報奨金はっと……わお! 凄い! 計算すると、金貨687枚、銀貨13枚になりますよ」
モノ凄い大金を稼ぐ事が出来た。
ナタリーのフォローあっての事だ。
そして麗しい彼女の存在こそが、リオネルのモチベーションの源なのだ。
「ありがとうございます!」
と、リオネルが礼を言えば、ナタリーも微笑んでいた。
だいぶ落ち着いた様子である。
「リオネルさん」
「は、はいっ!」
「本当に素晴らしいわ! ランカーでもないのに、とんでもない快挙よ」
「重ね重ねありがとうございます! ええ、そうですね。自分でも良く戦えたと思います」
ナタリーに褒められて凄く嬉しい!
早く一人前になって、胸を張りたい! 誇りたい!
でも……
ギフトスキル『ゴブリンハンター』の能力による無双っぷりを始め、今のリオネルには能力的な秘密がたくさんある。
明かすわけにはいかない。
風の魔法とギルドで講習を受けた武技で戦ったおかげだと言うしかない。
しかし、リオネルに対し、ナタリーはあっさり告げる。
「これならばリオネルさんは一人前以上……いつ旅立っても大丈夫ですね。どんな街でも、冒険者として通用する実力だと私は思います」
「は、は、はい??」
え?
あれれ!?
いつ旅立っても大丈夫!?
どんな街でも、冒険者として通用する実力!?
自分がいつか王都から旅立つ事を聞いて、あんなに寂しそうにしていたのに……
それに、いきなりフレンドリーさが消えたぞ!?
ど、ど、どういう事だっ!?
リオネルは大いに戸惑い、動揺する。
大きな不安が心を染めて来る。
しかし、今度は!!
またもバラ色展開!?
「実は私、リオネルさんが心配だったんです」
「お、お、俺を!?……ナ、ナタリーさんがですかっ!?」
「はい! 凄く心配していました! 夜も眠れないほどに!」
「す、凄く心配!? よ、夜も眠れないほど!? ほ、ほ、ほんとですかっ!!!」
一旦、絶望に陥った状況から……
もしや大逆転!?
だだだだだだだだだだだだだだ!!!
めくるめく結果に向け、リオネルの心のどらが鳴る。
じゃ~~~~んんんんん!!!!!
だがっ!!!
衝撃の『告白』が、すぐリオネルを待っていたのだあ!!
「ほんとです! だって、だって! リオネルさん、亡くなった『私の弟』に良く似ていたので……」
「はあ!!?? お、お、お、弟ぉぉ!?」
「はい! また弟を亡くしたら嫌だなって思い、頑張って、生き抜いてって! つい感情移入して見守り、時には、はらはらしていました」
どががががが~~~んんんん!!!!
『勝利のどら』の代わりに、『敗戦の哀しい鐘』がリオネルの心で鳴った。
否!
『凶悪な失恋ハンマー』がもろいリオネルの心を粉々に!! 完全に打ち砕いたあ!!
司祭がスキル授与を告げた時と同じ、いやそれ以上だった。
上げて、下げて、また上げて、最後に思い切り下げられた!!
否!
リオネルが勝手に、特別な好意だと思い込み、何度も期待して……
最後に思い切り「すと~~ん!!」と落とされたのである。
「ええ! 初めてリオネルさんに会った時、嬉しかったです! もしや弟が生き返ったのかと思うくらい似ていましたものっ!」
「はあ、はああ……俺が亡くなった弟さんに良く似ていた……そうだったんですか。……そうですよね」
ほろ苦い思いがリオネルの胸を満たす。
甘かった。
やはり、思い込みだった。
錯覚だった。
ナタリーのような高嶺の花が、男子としてさえない自分を、
まともな『恋愛対象』として見るわけがない。
……思えば、素敵な年上女子ナタリーに対する淡い気持ちは、初めての恋。
ナタリーは、死んだ母以外に、初めて優しくしてくれた女性だった。
だから……
自分の為だけでなく、ナタリーに喜んでもらおうと、褒めて貰おうと、
一生懸命、頑張った。
でも現実は厳しい……
所詮は仕事上のやりとりだった。
亡き弟の代わりだと思われていた。
リオネルの『初恋』が今、はっきりと破れたのだ。
「ごめんなさい! 私、リオネルさんの実力を見誤っていました!」
「……………」
「ここまでの討伐数とは思いませんでした! これはランクアップ検討の対象となりますから、サブマスターと魔法鑑定士を呼びましょう。採取された鉱石の鑑定もありますからね♡」
「……………」
あまりにも大きいショックの為なのか、動揺が止まらず続いているのか……
急に、ず~っと遠くで聞こえるようになった、ナタリーの魅惑的な声と優しい言葉。
「お、お、お願いします……」
かすれた声で答えたリオネルは、ただただ深く頭を下げていたのである。
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