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第5話「修行へ行け!という名の追放!」

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翌日朝早く……
革鎧姿のリオネルはディドロ家を『追放』された。

名目上は『修行の旅』へ出る。
ソヴァール王国の騎士もある程度の年齢となったら、武者修行の旅に出る。
跡取りではない長男以外……
武者修行の旅に出るのは次男、三男が多く、己の腕を磨くとともに、仕官先も探す旅になる事が多い。

三男の末っ子リオネルも同じく表向きは、そのような趣旨である。
だから、さすがに着の身着のまま「無一文で放り出す追放」というわけではない。

ディドロは貴族家ではないが、王国ではそこそこの知られた名家である
一応は世間体があるから、見栄を張った。
なのでリオネルへ当座暮らせる生活費を渡したのだ。

但し、一見魔法使いには見えないような装備を用意し、リオネルへ強制的に着せた。
小さな盾を兼ねた肩あて付き革鎧、そして短く幅広のサクスを腰に帯びた冒険者風。
ディドロ家とは全くかかわりがない仕様で、おっぽり出されたのである。

また『ディドロ』の姓を名乗る事は許されなかった。
リオネルという名前こそ名乗る事は許されたが……
今後は、どこから探して来たのかロートレックという全然縁もゆかりもない姓を使うよう、特に厳しく父からは言われた。

ちなみにロートレックという姓は公称とか、全くの偽名ではないらしい。
戸籍は存在するから、公的な手続きに使えと言われた。
多分、父は裏から手を回したのであろう。

そして1か月以内には、今居る王都オルドルから出て行くようにとも命じられた。
出て行かなかった場合、『致命的となる何らかのペナルティを課す』と言われた。
視野に入ると不快だと言われたのだ……
つまり1か月で、この王都を旅立つ準備をせねばならない。

ここまで馬鹿にされ、見捨てられ……リオネルは一瞬、理不尽な命令に逆らおうかとも思った。
しかしいろいろ考えても、強大な実家に逆らうすべなどなかった。

仕方ない。
これから『ひとり』で生きて行くしかない。

日々、父や兄達から疎んじられていたリオネルは……
いつかこんな日が来るのではと覚悟をしていた。
それゆえ、剣の訓練も含め、自活するシミュレーションも行っていたから、動揺こそあったものの、思考停止はしなかった。
リオネルは己を見つめ直した事で、今は何とかクールダウン。
何とか冷静になっている。

自宅から出て、旅行用の鞄を背負ったリオネルはたったひとり……
王都の中央広場で薄汚れたベンチに座り、じっくりと考えた。

「ふうう……生きて行く為には『衣食住』だ。それと戦い生き抜いて行く為の『武』だな」

リオネルは魔法使い特有の、独特のリズムで呼吸法を行っている。
絶望に沈んだ気持ちが、ほんの少しだけ落ち着いて来る。
気休めのような気はするが……何もやらないよりはマシだ。
でないと滅入って、自分が本当に嫌となる。

「俺は今まで王都の外に出た事がない世間知らずだ。いきなり旅立って上手く行くとは思えない……期限ぎりぎりまで、王都に居よう」

リオネルはすぐに旅立つのが不安である。
住み慣れた王都で、切られたリミット1か月間ぎりぎりまで、
「地盤を固めよう」と考える。

「ふうう、『衣』はしばらくはこのままでOKだとして、『住』はどこか、まかない付きの宿屋へ泊まろう。『食』は宿屋のメシを朝と夜の食いだめで昼は抜きで、1日2食でいいか」

「『武』は……やっぱり魔法使いとして、少しでも上へ行きたい。今のままじゃ、怖くて旅立てないし……訓練と生活の手立ての確保も含め、冒険者として登録しよう。生活費も稼がなきゃ……魔物と戦うのは凄く怖いけれど、仕方がない」

ここまで考え、リオネルは大きく息を吐く。

「くそハズレと言われたスキルでも、どうしようもない。それしか俺にはないんだから……」

哀し気なリオネルのつぶやきは、雑踏の中へ消えて行く……
凄く虚しいが、沈んだままではいられない。

「思い切り馬鹿にされたこのスキルに、俺のチープな魔法と、訓練した我流の剣、それらを組み合わせて生きて行くしかない。それとまずはレベルをあげなきゃな。司祭様の言う通り、たった5……じゃ、話にならん……よし!」

元々リオネルの思考速度は速い。
考えはすぐ、まとまったようである。

リオネルは勢い良く立ち上がると、看板が目立つ宿屋街へ向かい歩きだしたのである。
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