姫は王子を溺愛したい

縁 遊

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42. 王子は思い出してドキドキする

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「荷物も机も綺麗に片付いたな~。戻ってくるまで机くらいは拭いててやるから頑張ってこいよ」

「杉ノ原先輩…」

 あれから会社と話し合いをして海外研修として送り出してもらうことになりました。今日は日本の会社に出勤する最終日なんです。

「皆さん、お世話になりました。今度はしっかりと技術を身につけて役に立てる様に成長して帰って来ますので、その時はまたよろしくお願いいたします」

 私は会社の皆さんに頭を下げて挨拶をした。

 会社の皆さんが開いてくれた送別会は前日にすんでいたので、今日は荷物だけを片付けに来たんです。

「元気でな」

「お土産楽しみにしてる」

「腕を磨いてこいよ」

 沢山の人達が声をかけてくれた。

 私は会社の人達に見送られて会社を後にした。

 でも、実際に海外に行くまでにはまだ1カ月くらいあるんです。準備が大変だろうということでこんなに早く退社させてもらったのですが…準備って何をどうすれば良いのかな。

 結婚式もしないで写真だけを撮ることにしたのでその日の前後が忙しいくらいだけなんだよね。

 衣装も決めてあるし…。

 衣装を見に行った日の事を思い出した。

 姫野と柚菜ちゃんと彼氏ウルちゃんの4人で見に行ったんだけど…姫野のタキシード姿と和装姿がカッコ良すぎて写真を何枚も撮ってしまいました。なぜか柚菜ちゃんも今後の参考にするとか言いながらウルちゃんにも姫野と同じ衣装を着せて写真を撮りまくってたんだよね…。何の参考にするんだろう。

 その後に私と柚菜ちゃんのウェディングドレスと和装選びを始めたんだけど…なかなか決まらなかったんだよね。

 種類ありすぎじゃない?

 あんなに種類があるとは思ってなかったから見せられた時は驚いて固まっちゃったよ。

 色やデザイン、装飾品…頭がクラクラしてきたかも。

「大丈夫か?」

 姫野が後ろから声をかけてくれて少し気持ちが落ち着いて、クラクラしなくなった。

「うん。…でもこんなに種類があるとは思ってなかったから驚いちゃって…。何を基準に選べば良いのかと悩んじゃうね」

 私の会話を聞いていた柚菜ちゃんが付き添いのお姉さんに何かを耳打ちしているのが見えた。

「じゃあ、私が選んであげるよ」

 さっき、柚菜ちゃんが耳打ちしていたお姉さんが数種類のドレスをかけたハンガーラックを引いてやってきました。

「王子は背が高いし、スタイル良いからマーメイドラインのドレスとかが似合うと思うんだよね」

 お姉さんが持ってきたドレスはどれも細身のシルエットデザインでフリルとか装飾品がないシンプルなものだった。柚菜ちゃんの指示なのかな?

「確かに…光に似合いそうだな」

 ドレスを見た姫野がボソッと口にしたのを私は聞き逃さなかった。

 姫野が似合いそうだなと言ってくれるなら着てみたいかもしれない。

「着てみる!」

 用意されたドレスを着て姫野に見てもらうというのを何回か繰り返した。

 何回目かのドレスを着て姫野に見せると今までの反応と違っていた。

 そのドレスは袖はシースルーになっていてドレス自体は身体にそうようなタイトなシルエットでスカートの部分がマーメイドラインになっていた。

「それ一番似合ってるかも」

 先に声をだしたのは柚菜ちゃんだった。

「え…そう?姫野はどう思う?」

 黙って見つめている姫野の感想が気になって聞いてみた。

「…良い。似合ってると思う」

「そう…ありがとう。じゃあ、これにしようかな」

 二人が似合うと言ってくれるなら間違いないと思う。

「じゃあ、私もそれ着ようかな」

 …と口にしたのはウルちゃんだ。

「「はぁ?」」

 珍しく姫野と柚菜ちゃんの声が被る。

「拓斗にはあの形は似合わない」

「光と同じのを着るな!他を選べ!」

 柚菜ちゃんと姫野の二人から攻撃を受けたウルちゃんは「ヒドイ…」と言いながら違うドレスを探しに行ってしまった。

 二人ともウルちゃんにキツくない?後でフォローしておかなくちゃ。

 この後みんなの衣装も決まり、柚菜ちゃん達とはお店の前で解散となった。

「ご飯でも食べて帰るか?」

「そうだね。何が食べたい?」

「…そういえば、実家から大量に特製パスタソースが冷凍で送られてきたんだけど…来るか?」

「…姫野ママの特製パスタソースか…私の大好きなやつだね。…行こうかな」

 姫野ママ特製パスタソースは昔から大好きなんです。だけど私の会話に戸惑いがあったのは、やはり前の事を思い出したからで…。

 恥ずかしいのもあるんですよね。

 大人なんだから恥ずかしがるな!と言われたらそれまでなんですが…年は関係ないと思うんですよね。

 慣れない…というか。

 世の中の皆さんはこんな時、私みたいにおもわないのかな?こういうのって人に聞きづらい。

 ドキドキしながらも姫野の自宅に到着し、二人でキッチンに立って料理をすることになりました。

 …なんですかね?この状況…。

 袖が濡れるから…と姫野が私の後ろから抱きつくようにして私の袖をまくってくれています。

 み、密着し過ぎでは?

 料理の熱で熱いのか、自分自身の熱で暑いのかわからなくなっています。

 最後は首筋に軽くキスをされてしまいました。

 料理どころではなかったー!!!

 その後はご想像にお任せします。…いや、想像しないでください。

 今、思い出しても顔から火が出そう…。

 こんなので結婚生活大丈夫なのかな…。

 

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