姫は王子を溺愛したい

縁 遊

文字の大きさ
上 下
40 / 43

40 王子は友人宅を訪れる

しおりを挟む

「え!?柚菜ちゃんも結婚するの!しかも逆プロポーズ!?おめでとう!!」

 久しぶりに柚菜ちゃんから自宅に遊びにこないかと連絡を受けて来てみたら…おめでたいことになってました。

「ありがとう…。長かったわ~。何回私から言ってもまだしないと断られたし…同居人で終わるのかと心配してたのよ…うっ…」

 柚菜ちゃんの横で泣き崩れてエプロンで涙を拭いているウルちゃん(拓斗さんのニックネーム)の姿があります。

「本当だよね。私も気になるんだけど、どうして今なの?」

 何年も前からウルちゃんが柚菜ちゃんにプロポーズをしていたのは聞いていたから知っているんですが、断っていた理由までは聞いたことがなかったんですよね。今年になってなぜ自分からプロポーズしたのか…気になりますよね。

「拓斗が30になるし、実はできたんだよね」

「「え!?」」

 泣いていたはずのウルちゃんまで驚きの声をあげています。

「で、できたって…まさかベビーちゃん?」

 もしかしてウルちゃんも知らなかったの!?

 柚菜ちゃんに尋ねるウルちゃんの声が震えています。

「そう。あれ?言ってなかった?」

「…聞いてな~い!」

 話を聞き終わると同時くらいにウルちゃんがまた大泣きしています。

「そっか、授かり婚なんだね。ダブルのおめでとうだね」

 泣いているウルちゃんを抱きしめて慰めながら幸せそうな顔を見せてくれた柚菜ちゃん。

「王子も今の感じだと結婚が決まったみたいだね。おめでとう」

 え!何でわかったんだろう。今から話そうと思ってたんだけど。

「何でわかったんだろう?って顔してるけど、さっき柚菜ちゃん"も"結婚するの…って言ったからだよ」

「あ…それでわかったのか」

 柚菜ちゃんは相変わらず鋭いな。

「そうなんだよね。私も姫野からプロポーズされて結婚することにはなったんだけど…今すぐは難しいかなって感じなんだ」

「なんで?あの兄達を除けば結婚に反対しそうな人はいないよね?」

 反対されているから結婚できないと考えているんだね。

「反対されているからじゃないんだけど…。なんというか…タイミング?私は仕事を続けたいし、姫野は海外に行くことが決まってるし…ね」

 あの後も何回か話し合ってみたんだけど、なかなか二人が納得する折衷案みたいなのがなくて…話し合いは平行線なのです。

「…姫野が行くのは確かイタリアだったよね?」

「そうだよ」

「じゃあ、結婚して向こうに一緒に行って靴の職人の弟子にでもなって修行すれば良いのに」

「え…」

「だって前から靴の基礎的な事を勉強したいって言ってたよね?イタリアなら靴の本場でしょ。ちょうど良くない?」

 …本当だ。何で今まで気がつかなかったんだろう。その手があったじゃない!

「会社には日本に帰ってきたらまた復帰する、とでも言えば技術の確かな社員が来てくれる訳だし嫌がられないんじゃない?」

「柚菜ちゃん…天才!」

 抱きつきたいところだけど…ウルちゃんがくっついていてできそうにないです。

 だけど、本当に何で思いつかなかったんだろう。そうだよ、靴作りをするならイタリアでもできるんだよね。それに心配してた語学も姫野ママがいたよ!それに思い出したけど姫野ママがイタリア語を姫野が小さい頃から教えていて語学ができるからイタリアを選んだんだった。それなら私も教えてもらえば良いだけじゃない?

 私…悩みすぎて周りが見えなくなってたんだね。反省だよ。

 私が落ち込んでいる所に、ウルちゃんの弾んだ声が聞こえてきた。

「ねぇ、お腹が大きくなる前にお式をしない?」

「え~、面倒だから写真だけで良いじゃん」

 柚菜ちゃんらしい返答です。元々、仕事に全力を捧げるから独身でいる!って学生時代に言っていたくらいだから結婚式とかに憧れはないんだろうな。

 そこで一つ疑問が頭に浮かぶ。

「写真って…ドレスはどっちが着るの?二人ともドレス?」

 ウルちゃんは少し複雑なんですが戸籍は男性だけど心は女の子で好きになるのは女の子らしいのです。そうなると、たぶんドレスが着たいよね?

「「どっちもドレスで1枚、どっちもタキシードで1枚かな」」

 二人が声を揃えて全く同じことを迷いなく言葉にしたのには驚きました。

「そうなんだ…」

「当たり前よね~。だってどっちも着たいじゃないのね~。おバカな質問する人ですよね~」

 ウルちゃん、柚菜ちゃんのお腹を撫でながらお腹に向かって話してるよ。赤ちゃんに話してるつもりなのかな。

「本物を着れるチャンスだからな。コスプレとの違いを楽しまないと…」

 コスプレ…。そういえば以前にスーツ姿の柚菜ちゃんと私の写真を撮った事があったな。あの写真がバズったらしくて柚菜ちゃんにその後、軍服とか着せられたんだよね。色々と思い出してきた。

「そういう王子はどんなドレスを着るつもりなの?」

「……決めてないかな」

 っていうか、全然考えてなかったです。そっか、結婚するなら式の日取りとかドレスとか写真とか…考えないといけないことが沢山あるんだった!

 あっ、柚菜ちゃんのお祝いもだ!

 どうしよう!?















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

わたしは婚約者の不倫の隠れ蓑

岡暁舟
恋愛
第一王子スミスと婚約した公爵令嬢のマリア。ところが、スミスが魅力された女は他にいた。同じく公爵令嬢のエリーゼ。マリアはスミスとエリーゼの密会に気が付いて……。 もう終わりにするしかない。そう確信したマリアだった。 本編終了しました。

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

処理中です...