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40 王子は友人宅を訪れる
しおりを挟む「え!?柚菜ちゃんも結婚するの!しかも逆プロポーズ!?おめでとう!!」
久しぶりに柚菜ちゃんから自宅に遊びにこないかと連絡を受けて来てみたら…おめでたいことになってました。
「ありがとう…。長かったわ~。何回私から言ってもまだしないと断られたし…同居人で終わるのかと心配してたのよ…うっ…」
柚菜ちゃんの横で泣き崩れてエプロンで涙を拭いているウルちゃん(拓斗さんのニックネーム)の姿があります。
「本当だよね。私も気になるんだけど、どうして今なの?」
何年も前からウルちゃんが柚菜ちゃんにプロポーズをしていたのは聞いていたから知っているんですが、断っていた理由までは聞いたことがなかったんですよね。今年になってなぜ自分からプロポーズしたのか…気になりますよね。
「拓斗が30になるし、実はできたんだよね」
「「え!?」」
泣いていたはずのウルちゃんまで驚きの声をあげています。
「で、できたって…まさかベビーちゃん?」
もしかしてウルちゃんも知らなかったの!?
柚菜ちゃんに尋ねるウルちゃんの声が震えています。
「そう。あれ?言ってなかった?」
「…聞いてな~い!」
話を聞き終わると同時くらいにウルちゃんがまた大泣きしています。
「そっか、授かり婚なんだね。ダブルのおめでとうだね」
泣いているウルちゃんを抱きしめて慰めながら幸せそうな顔を見せてくれた柚菜ちゃん。
「王子も今の感じだと結婚が決まったみたいだね。おめでとう」
え!何でわかったんだろう。今から話そうと思ってたんだけど。
「何でわかったんだろう?って顔してるけど、さっき柚菜ちゃん"も"結婚するの…って言ったからだよ」
「あ…それでわかったのか」
柚菜ちゃんは相変わらず鋭いな。
「そうなんだよね。私も姫野からプロポーズされて結婚することにはなったんだけど…今すぐは難しいかなって感じなんだ」
「なんで?あの兄達を除けば結婚に反対しそうな人はいないよね?」
反対されているから結婚できないと考えているんだね。
「反対されているからじゃないんだけど…。なんというか…タイミング?私は仕事を続けたいし、姫野は海外に行くことが決まってるし…ね」
あの後も何回か話し合ってみたんだけど、なかなか二人が納得する折衷案みたいなのがなくて…話し合いは平行線なのです。
「…姫野が行くのは確かイタリアだったよね?」
「そうだよ」
「じゃあ、結婚して向こうに一緒に行って靴の職人の弟子にでもなって修行すれば良いのに」
「え…」
「だって前から靴の基礎的な事を勉強したいって言ってたよね?イタリアなら靴の本場でしょ。ちょうど良くない?」
…本当だ。何で今まで気がつかなかったんだろう。その手があったじゃない!
「会社には日本に帰ってきたらまた復帰する、とでも言えば技術の確かな社員が来てくれる訳だし嫌がられないんじゃない?」
「柚菜ちゃん…天才!」
抱きつきたいところだけど…ウルちゃんがくっついていてできそうにないです。
だけど、本当に何で思いつかなかったんだろう。そうだよ、靴作りをするならイタリアでもできるんだよね。それに心配してた語学も姫野ママがいたよ!それに思い出したけど姫野ママがイタリア語を姫野が小さい頃から教えていて語学ができるからイタリアを選んだんだった。それなら私も教えてもらえば良いだけじゃない?
私…悩みすぎて周りが見えなくなってたんだね。反省だよ。
私が落ち込んでいる所に、ウルちゃんの弾んだ声が聞こえてきた。
「ねぇ、お腹が大きくなる前にお式をしない?」
「え~、面倒だから写真だけで良いじゃん」
柚菜ちゃんらしい返答です。元々、仕事に全力を捧げるから独身でいる!って学生時代に言っていたくらいだから結婚式とかに憧れはないんだろうな。
そこで一つ疑問が頭に浮かぶ。
「写真って…ドレスはどっちが着るの?二人ともドレス?」
ウルちゃんは少し複雑なんですが戸籍は男性だけど心は女の子で好きになるのは女の子らしいのです。そうなると、たぶんドレスが着たいよね?
「「どっちもドレスで1枚、どっちもタキシードで1枚かな」」
二人が声を揃えて全く同じことを迷いなく言葉にしたのには驚きました。
「そうなんだ…」
「当たり前よね~。だってどっちも着たいじゃないのね~。おバカな質問する人ですよね~」
ウルちゃん、柚菜ちゃんのお腹を撫でながらお腹に向かって話してるよ。赤ちゃんに話してるつもりなのかな。
「本物を着れるチャンスだからな。コスプレとの違いを楽しまないと…」
コスプレ…。そういえば以前にスーツ姿の柚菜ちゃんと私の写真を撮った事があったな。あの写真がバズったらしくて柚菜ちゃんにその後、軍服とか着せられたんだよね。色々と思い出してきた。
「そういう王子はどんなドレスを着るつもりなの?」
「……決めてないかな」
っていうか、全然考えてなかったです。そっか、結婚するなら式の日取りとかドレスとか写真とか…考えないといけないことが沢山あるんだった!
あっ、柚菜ちゃんのお祝いもだ!
どうしよう!?
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