姫は王子を溺愛したい

縁 遊

文字の大きさ
上 下
20 / 43

20. 王子は王子らしくない叫び声をあげる

しおりを挟む

 やはり柚菜ちゃんを引きずってでも連れてくるんだった…。

 後悔先にたたず?だったかな…今はそれを実感してます。

 ロビーで待っていたら悠人さんが時間通りにやって来たので柚菜ちゃんの事を話したんです。もしかしたら一緒に柚菜ちゃんを起こしに部屋に行ってくれるかもしれないと期待して…。

 ですが返ってきた言葉は「そう、じゃあ二人で行こう。僕はその方が嬉しいし」でした。全然予想してない!

 結果、私は悠人さんと向かい合って高級フレンチを食べることに…。

 こんな高そうなお店なんて来たことがないから緊張して美味しいはずの料理の味もまともにわかりません。

「どうしたの?口に合わないかな…」

 綺麗な所作でお食事されている悠人さんと、フォークとナイフの扱いに苦戦している私…。

「いえ…。こんなに素敵なお店に来るのは初めてで緊張しているだけなんです。気を遣わせてしまい申し訳ありません」

 口調まで丁寧になってしまう。

「緊張なんてしなくても大丈夫だよ。僕の行きつけのお店だしね」

 …北海道に行きつけのお店があるんですね。流石…次元が違います。

「それより、聞きたいことがあったんだけど…聞いていいかな?」

 手にしていたナイフとフォークをテーブルに置き、口元をナフキンで拭った後で話す悠人さん…。お育ちが違いますね。

 所作に感心しながらも話を続けた。

「何ですか?」

「姫野くんといつから付き合ってたの?少なくとも、僕が海外に行く時はまだ付き合っていなかったよね」

 …それを聞くんだ。何て言えば良いのかな。

「そうですね…。悠人さんが海外に行かれた時はまだ付き合っていませんでした」

 なぜか緊張感が増してきました。いつからって言えば信じてもらえるのかな。

「それがなぜいきなり婚約なのかな?」

 なぜと言われても…偽装婚約なので理由は言えないんですが…。とぼけるしかない?

「なぜ…と言われても説明のしようが無いのですが…付き合う時に結婚を前提にということで婚約するということになったんですよ。私もビックリでした。まさか姫野と婚約なんて…」

 いつも笑顔の悠人さんが笑顔無く真顔で私を見つめている。

 なぜ?

「ふ~ん、今まで姫野くんと頻繁に会ってなかったよね?それなのに付き合うタイミングがあったんだ…。おかしいよね?」

 あれ…もしかして…刑事ドラマのように追い詰められている?

 なぜ?

 
 さっきからずっとなぜ?が連続してる。

 いつもの悠人さんじゃない悠人さんに戸惑っている。私を追い詰めて何がしたいのかな?

「おかしいですか?なぜですか?」

「だって、友人でもなかった様に見える二人が恋人を通り越していきなり婚約だなんて…おかしいでしょ?そんなの普通はあり得ないと思うけど…それとも僕が知らないうちに二人はずっと連絡を取り合っていたのかな?」

 刑事悠人さんはまだ追い詰めてくるんですね。

「連絡は取り合っていませんでしたけど仕事で再会したのがきっかけで連絡をとるようになって、お互い幼い頃から知っている仲だったので…」

 ここから先は何て言えば良いかわからない。

「それなら僕も王子ちゃんが幼い頃からしってるよね?」

 ん?悠人さんと知り合ったのは柚菜ちゃんと友人になってからだから、高校生だったよね。


「知り合った時幼くはなかったかと…」

「僕にとっては高校生も幼いよ。それにあの頃は姫野くんと接触してなかっただろ?」

 接触?言い方まで刑事さんみたいになってますけど。

「確かに…あの頃は話したりはしてなかったかもしれませんけど」

「だよね?じゃあ、僕と姫野くんとの王子ちゃんと知り合ってからの接触時間の差はそんなにないんじゃないかな?」

 …それは強引すぎじゃないですか。

 だって姫野とは小学生からの付き合いですよ。言われたように話をしていなかった期間もありませたけど、姫野は無口だったから気にもならなかったんだよね。

 話さなくても良かったというか…。

 そこに悠人さんと私の関係がどうして関わっているのかな?

 ん~、悠人さんは私に何を言わせたいのかわからないよ。

「悠人さんは結局…何が言いたいんですか?」

 真顔だった悠人さんの顔がふわりと笑顔になった。

「結局…姫野くんとの婚約を解消して僕と付き合ってほしいんだよ」


 はあああぁぁ!?







しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】俺様御曹司の隠された溺愛野望 〜花嫁は蜜愛から逃れられない〜

雪井しい
恋愛
「こはる、俺の妻になれ」その日、大女優を母に持つ2世女優の花宮こはるは自分の所属していた劇団の解散に絶望していた。そんなこはるに救いの手を差し伸べたのは年上の幼馴染で大企業の御曹司、月ノ島玲二だった。けれど代わりに妻になることを強要してきて──。花嫁となったこはるに対し、俺様な玲二は独占欲を露わにし始める。 【幼馴染の俺様御曹司×大物女優を母に持つ2世女優】 ☆☆☆ベリーズカフェで日間4位いただきました☆☆☆ ※ベリーズカフェでも掲載中 ※推敲、校正前のものです。ご注意下さい

【完結】maybe 恋の予感~イジワル上司の甘いご褒美~

蓮美ちま
恋愛
会社のなんでも屋さん。それが私の仕事。 なのに突然、企画部エースの補佐につくことになって……?! アイドル顔負けのルックス 庶務課 蜂谷あすか(24) × 社内人気NO.1のイケメンエリート 企画部エース 天野翔(31) 「会社のなんでも屋さんから、天野さん専属のなんでも屋さんってこと…?」 女子社員から妬まれるのは面倒。 イケメンには関わりたくないのに。 「お前は俺専属のなんでも屋だろ?」 イジワルで横柄な天野さんだけど、仕事は抜群に出来て人望もあって 人を思いやれる優しい人。 そんな彼に認められたいと思う反面、なかなか素直になれなくて…。 「私、…役に立ちました?」 それなら…もっと……。 「褒めて下さい」 もっともっと、彼に認められたい。 「もっと、褒めて下さ…っん!」 首の後ろを掬いあげられるように掴まれて 重ねた唇は煙草の匂いがした。 「なぁ。褒めて欲しい?」 それは甘いキスの誘惑…。

【完結】溺愛予告~御曹司の告白躱します~

蓮美ちま
恋愛
モテる彼氏はいらない。 嫉妬に身を焦がす恋愛はこりごり。 だから、仲の良い同期のままでいたい。 そう思っているのに。 今までと違う甘い視線で見つめられて、 “女”扱いしてるって私に気付かせようとしてる気がする。 全部ぜんぶ、勘違いだったらいいのに。 「勘違いじゃないから」 告白したい御曹司と 告白されたくない小ボケ女子 ラブバトル開始

隠れ御曹司の愛に絡めとられて

海棠桔梗
恋愛
目が覚めたら、名前が何だったかさっぱり覚えていない男とベッドを共にしていた―― 彼氏に浮気されて更になぜか自分の方が振られて「もう男なんていらない!」って思ってた矢先、強引に参加させられた合コンで出会った、やたら綺麗な顔の男。 古い雑居ビルの一室に住んでるくせに、持ってる腕時計は超高級品。 仕事は飲食店勤務――って、もしかしてホスト!? チャラい男はお断り! けれども彼の作る料理はどれも絶品で…… 超大手商社 秘書課勤務 野村 亜矢(のむら あや) 29歳 特技:迷子   × 飲食店勤務(ホスト?) 名も知らぬ男 24歳 特技:家事? 「方向音痴・家事音痴の女」は「チャラいけれど家事は完璧な男」の愛に絡め取られて もう逃げられない――

冷血弁護士と契約結婚したら、極上の溺愛を注がれています

朱音ゆうひ
恋愛
恋人に浮気された果絵は、弁護士・颯斗に契約結婚を持ちかけられる。 颯斗は美男子で超ハイスペックだが、冷血弁護士と呼ばれている。 結婚してみると超一方的な溺愛が始まり…… 「俺は君のことを愛すが、愛されなくても構わない」 冷血サイコパス弁護士x健気ワーキング大人女子が契約結婚を元に両片想いになり、最終的に両想いになるストーリーです。 別サイトにも投稿しています(https://www.berrys-cafe.jp/book/n1726839)

ヤクザの若頭は、年の離れた婚約者が可愛くて仕方がない

絹乃
恋愛
ヤクザの若頭の花隈(はなくま)には、婚約者がいる。十七歳下の少女で組長の一人娘である月葉(つきは)だ。保護者代わりの花隈は月葉のことをとても可愛がっているが、もちろん恋ではない。強面ヤクザと年の離れたお嬢さまの、恋に発展する前の、もどかしくドキドキするお話。

スパダリ外交官からの攫われ婚

花室 芽苳
恋愛
「お前は俺が攫って行く――」  気の乗らない見合いを薦められ、一人で旅館の庭に佇む琴。  そんな彼女に声をかけたのは、空港で会った嫌味な男の加瀬 志翔。  継母に決められた将来に意見をする事も出来ず、このままでは望まぬ結婚をする事になる。そう呟いた琴に、志翔は彼女の身体を引き寄せて ―――― 「私、そんな所についてはいけません!」 「諦めろ、向こうではもう俺たちの結婚式の準備が始められている」  そんな事あるわけない! 琴は志翔の言葉を信じられず疑ったままだったが、ついたパリの街で彼女はあっという間に美しい花嫁にされてしまう。  嫌味なだけの男だと思っていた志翔に気付けば溺愛され、逃げる事も出来なくなっていく。  強引に引き寄せられ、志翔の甘い駆け引きに琴は翻弄されていく。スパダリな外交官と純真無垢な仲居のロマンティック・ラブ! 表紙イラスト おこめ様 Twitter @hakumainter773

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

葉月とに
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

処理中です...