姫は王子を溺愛したい

縁 遊

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9. 姫サイド その2

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 姉は前々から考えていたと言って計画を話し始めた。

 考えていた計画とは俺と王子を結婚させる計画らしい。

 我が姉ながらこの暴走ぶりには驚く。本人達に何も聞かないで何を考えていたのか。

 なぜそんな計画をたてていたのかと聞くと

「だって私も王子ちゃん好きだし、優も王子ちゃんのことが好きでしょ?それなら家族になってもらいたいと思うでしょ」と言いきっていた。

 いや、俺の気持ちがバレているのも驚きだけど、そもそも王子の気持ちは聞かないで良いのか?

 でもな…姉は野生の感的なものあるのか、妙に感が鋭いんだよな。

 しかし、こういう時の姉の暴走は加速するところがあるからな…。だんだん不安になってきたぞ。

「でもね、ここからが一番大切なのよ」

 そう言うと急に姉が急ブレーキをかけて車を路肩に停めた。

 安全運転をお願いしたい。

「王子ちゃんはね、鈍感なところがあるからストレートに言っても気がつかないかもしれない。だから自分で自分の気持ちに気がつくようにしたいの」

 それって矛盾してないか?どうやって鈍感なアイツに自分の気持ちを気がつかせるんだ。しかも気がついたところで俺の事を嫌いだったらどうるんだ?

「優ちゃん、心配してるわね。大丈夫よ!私の見たところでは王子ちゃんは優の事を嫌ってないし、どちらかといえば好きだと思う。ただ王子ちゃんって男兄弟しかいないからお兄ちゃん達に対する好きと優に対する好意の違いがわかって無い気がするのよね~。これもきっと、あのシスコンブラザーズのせいよ」

 そういえば姉は王子の双子の兄達と同級生だがお互いに気が合わないと言っていたな。

 シスコンブラザーズ…。その言葉に少し笑ってしまった。

 王子には双子の兄達がいてどちらも妹の事が大好き過ぎて有名なのは確かだ。よく考えてみればあの兄達が何も俺に言って来ないのもおかしいよな。兄達に言うと面倒な事になると思って言ってないのかもしれないな。

「だからね、ひと芝居するのよ。まずは、恋人からね。優がストーカーに付きまとわれて困っているから恋人のふりをしてほしいって王子ちゃんに頼むのよ」

「何でそんな遠回りの言い回しをするんだ?ストレートに付き合ってほしいと言えば…」

 途中で言葉が止まる。俺…付き合ってほしいなんて言えるのか。

「フフッ…バカね。ストレートに言われたら王子ちゃんはすぐに断るわよ。ドッキリか罰ゲーム?って言われると思うわ。だからお人好しの王子ちゃんが断れないように言うことが必要なのよ」

 我が姉ながら策略家だな。いつそんなことを考えていたんだ。

 俺が困っていると言えばアイツは断らないだろう。それは俺にもわかる。しかし…。

「アイツを騙すのか?」

 それは俺の胸が痛む。アイツの夢を奪い、更に騙して俺の恋人にするなんて…酷すぎるだろ。

「ん~、最初はそうなるけど、その内に王子ちゃんが自分の気持ちに気がつくと思うのよ。大事なのはそれまで優ちゃんが王子ちゃんに手を出さないこと。大切に大切に本当にお姫様のように大事にしてあげるのよ。優ちゃんにできる?」

 姉が俺を見てニヤニヤと笑う。

 不愉快だ。そんな簡単に手を出せるならとっくに出している。お姫様のように大切に…できるのか。不器用で無口な俺が?

 だけど、王子の為ならやるしかない。

「コホンッ、それは大丈夫だ。何年でも待っていられる」

 姉のニヤニヤ顔はまだおさまらない。ムカつくな。

「優ちゃん、片想いの時と恋人の距離は違うよ。本当に大丈夫?」

 意味深な言い方だな。

「手は出さないで王子ちゃんに沢山の幸せを感じさせてあげる事ができれば少しでも罪滅ぼしにはなるんじゃないかと思うの。まあ、私はそのまま二人が結婚してくれたら嬉しいけどね。こればっかりは王子ちゃんの気持ち次第だから…。偽の恋人期間の間に優ちゃんがどれくらい愛情深く王子ちゃんを大切にしてあげられるかによるんじゃない?」

 さっきよりもニヤニヤと笑っている。姉は俺には難しいと思っているようだ。俺の負けず嫌いをわかって煽っているのか!?

「やる!王子をこれでもかというくらい甘やかす!!それくらい俺にもできる!やってやる!!!」

「キャー!それでこそ優ちゃんね。じゃあ、これから家に帰って作戦会議よ~!」

 停めていた車を発進させて、猛スピードで家路についた。

 深夜0時をまわっても作戦会議は終わらなかった。


 

「はぁ~、まさか本当に実行することになるとはあの時は思ってなかったよな…」

 一人、ホテルの部屋で呟いた。

 思っていたより早くマスコミにバレてしまったので恋人期間をすっ飛ばしていきなり婚約発表をすることになってしまったのは予想外だった。


 しかし俺の本心を言うと…本当は嬉しい。

 長い間進展しなかった二人の関係が変わる日が来たんだ。

 だけど…アイツの夢を奪ってしまった罪悪感も大きくて素直に喜べない自分もいるんだよな。

 アイツと恋人として過ごすなかで、この罪悪感は薄くなっていくのだろうか…。

 いつか俺の本心を王子に伝える事ができるのだろうか…。

 ヘタレな俺…気合いを入れろ!と自分に言い聞かせて気合いをいれた。

 さあ、王子に会いに行くか…。
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