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9. やはり味見では? (後半♡)
しおりを挟む「心臓はどうかな?」
優しく耳元で囁く神様の声になぜか背中にゾワゾワとしたものを感じます。背中にも異変が?
「心臓はドキドキしすぎて破裂しそうです。なので…心臓だけ取り除いて食べていただくことは可能ですか?」
私は真剣な顔をして神様を見たのですが…神様は呆れたような顔をしていらっしゃいます。
なぜ?
「アクア…前から少し話が噛み合わないと思っていたのだが、もしかして私がアクアを食料として食べると思っているのか?」
神様は驚いたように言っていらっしゃいますが、その通りですよね?
「はい。違うのですか?」
「はぁ~。私は人間を食べたりしない」
「え!食べないのですか!?」
では私は…私は何のための生け贄なのでしょうか。
「え…でも先程…舌で私の唇を味見なさいましたよね?」
「味見って…!」
神様が頭を抱えてしまいました。
私は神様が調子を崩されたのかと心配になり顔を覗き込んだのですが…。
神様は涙を流して笑っていました。
「アハハッ!アクア…あれは味見ではないよ。あれは口づけというんだ。好きな人とするんだよ」
口づけ…。好きな人と?
あら?
「神様は…私のことが好きなのですか?」
私は疑問に思った事を直接聞いてみました。
「アクアは私の事を好き?」
神様は私の質問に答えないで逆に私に質問してきます。神様の事を私は…。
「嫌いな人などいるのですか?」
私は小さい頃から神様のことだけを教えられて生きてきました。嫌いになるなんてありえません。
「…アクアはもっと感情について勉強しないといけないね」
神様の悲しそうな優しい笑顔が印象的ですが、結局、どちらの質問にも答えてはいただけないのですね。
「感情…ですか?私は神様の為だけに存在しています。神様が私を好きでいてくださるなら私は神様が大好きですし、嫌われても大好きです。そういうふうに教わってきました。私個人の感情は必要ないと言われていたので…」
話を最後まで聞いていた神様は話が終わった途端に力強く私を抱き締めました。
「アクア…」
何とも言えないような切ない声を出して、神様が私の額とご自分の額を合わせて私を見つめて下さっています。
「私がアクアに感情を教えてあげよう…。愛というものを…」
愛…。
神様の唇がまた私と重なります。
先程と違うのは重なる時間が長い事…。
息をしても良いのでしょうか?
少し…苦しくなってきました。
一瞬唇が離れたので息を大きく吸い込むと…再び神様の唇が私の唇を塞ぎました。
今度は舌が私の口内に入ってきています。
これはやはり…味見ではないのですか?
神様はお優しいから私を怖がらせないように食べないと言って下さったのですよね。
本当に素敵な神様です。
この神様になら喜んで身を捧げます。
「ん…」
いけない!今、決意をしたばかりなのに声を出してしまいました。
生け贄としては失格です。
ですが…なぜだかわかりませんが、また背中がゾワゾワとして変な感じがするのです。
それに足がガクガクとして床に崩れ落ちそうです。
ダメよ私!味見をしていただいている生け贄としてはしっかりしないと!
私は神様の背中に手を回して抱きつきました。
「アクア…」
やっと神様が味見を終えて私から唇を離して下さったと思いましたが、次の瞬間…。
「キャッ!」
神様が私をお姫様抱っこして下さったのです。
これは生け贄の運びかたとして習いましたわ。
それから優しくベッドに寝かされて…。
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