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39. シャリルの思い 〈シャリル視点〉
しおりを挟む思い返せば、私の人生は波乱に満ちていたわね…。
始まりは…やはり、運命の花の印が出た頃からかしら…。
私は、それまで恋愛にも社交界にも興味がなく、両親を困らせていたのよね。
私は長女だったし、公爵家の跡取りで婿を取らないといれない立場だったから…。
所が、たまたま連れていかれたパーティーで運命の人に出会って印がでた。
相手を知った時の両親の顔は今でも良く覚えているわ。
だって婿養子に迎える事が出来ないお相手だったから…。
急いで次女に跡取りの教育をしてたわね。
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でも、王様にはとても大切にして頂いたし、愛していただいた。
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私のこの決断が後で後悔する事になるなんて考えもせずに…。
ちょうど、その頃に王様にまた"運命の花"の印が出たんだったかしら…。
それで、あの人と結婚することになったのよね…。
あの人が仕組んだ事と知らずに…。
今、思えば…あの人はいつくらいから王様のことがお好きだったのかしら?
私に世継ぎが産まれないように、侍女を雇い私のお茶に薬を入れたり、魔術を使い"運命の花"の印を作り出したり…思いつきでは出来ないわよね…。
でも、あの人が来なければ愛する王様の世継ぎは出来なかった…。
気持ちは複雑よね…。
エルルは可愛いし、とても賢い子供だからきっと将来は素晴らしい王様になることが出来ると思う。
だけど、私はもう…エルルを育てる事が出来そうにない…。
あの人の代わりに生まれた時から今まで私が育てて来た可愛い子…。
私の娘とも仲良くしてほしかったけど、きっとあの人が許さないわね…。
シャルル…ごめんなさい…弱い母親で…。
あなたを生かすにはこの方法しかないの…。
私はもう、あの人からあなたを守ることが出来ない…。
私の代わりに、とても信頼できる親友にあなたを育ててくれるように頼んであるからね。
あなたはこの国では亡くなった事になっているけど、違う国で幸せになりなさい。
母は空からあなたを見守っていますからね…。
さようなら…シャルル…。
私はシャルルのおでこにキスをした。
「カロン…シャルルをお願いね…」
そして、シャルルを侍女であり親友のカロンに渡した。
「はい。私の全てをかけてお育て致します。ご心配はいりません」
カロンの泣き顔なんて見たのはいつぶりかしら?
「カロン…泣かないで…」
「シャリル…」
カロンはシャルルをベッドに寝かせ、私を抱きしめた。
「ごめんなさい。私がもっと早くにあの女のした事に気がついていれば、あなたをこんな目に合わせることなんてなかったのに…ごめんなさい…」
口調が昔の学友時代に戻っているわ。
興奮した時のカロンの癖は直らないわね。
「あなたの…せいではないわ…自分を責めないでね…」
私は親友の涙を拭きながら言った。
「カロン…私こそ…あなたに…大変なお願い…をしてしまって…ごめんなさいね。」
「いいえ…」
私達は見つめあい、笑顔になった。
「さぁ、もう出発しないと気付かれるかもしれないから…行こう」
部屋にいた騎士団の団長がカロンに声をかけた。
「わかりました…」
親友から侍女に戻ったカロンがシャルルを連れて部屋を出ていく…。
「さようなら…私の愛する…人達…」
私は小さく呟いた。
申し訳ありません陛下…。
あなた様との子供を守る為とは言え…最後に嘘をついてこの世を去る私をどうかお許し下さい…。
あの世でお会いできましたら、必ずや謝罪させて頂きます。
できれば、最後に愛しいあなた様のお顔を見とうございました。
どうか…お幸せに……。
シャリルはゆっくりと目を閉じた。
その顔は女神様のような優しい顔をしていた。
「「「「「王妃様!王妃様!!…」」」」」
……部屋にいた者達の声が響く。
しかし、シャリルは目を開けることはなかった。
その夜、王様に速達が届いた。
【王妃さまが息を引き取られました。】
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