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36. 悪い予感 〈エルル視点〉

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おかしい…。

何だか嫌な感じがするんだよね。

母と妹がやたらと会って、話をしているんだよ。

いつもは僕達にあまり感心がなくて、お茶会かショッピングに忙しくて姿も見ることができない母のに…。

一体、妹と何をしているんだろう?

トラブルメーカーの2人が一緒にいるだけで僕は緊張するんだよね。

「エルル様!大変です」

妹付の侍女が慌ててやってきた。

「どうしたの?」

また、トラブルメーカーが何かしたのかな?

「キャルル様が…痛みを訴えられて…倒れられました」

いったい何があった?

僕は妹の寝室まで走りながら侍女に聞いた。

「痛みって、何処が痛いって言っていたのかな?」

「…右手です」

「はぁ?」

何処かにぶつけたとか?
打ち身?切り傷?
そんなことで倒れるの?

まぁ、あの妹ならありうるか…。

妹の寝室に到着した。

まだ、意識はないらしく医者が来て診察をしていた。

「妹は何かの病気?」

「いえ、診察しましたがどこにも原因が見つからないのです…」

「病気ではないってこと?」

「まだ、わかりませんが先程から少しずつ、右手の甲に赤い花模様のような形が浮かび上がってきているのです」

「花模様?」

それって…。
その時、妹が目を覚ました。

「キャルル、気がつ…」

僕が声をかけようとする間もなく、妹は飛び起きて自分の右手の甲を見た。

「キャー!!やりましたわ!これで、マウル様とすぐに結婚できますわ。お母様に感謝ですわー!!」

さっきまで、痛みで気を失っていた人とは思えないね。

演技だったのかな?

でも今、気になる事を言っていたよね。

マウルとすぐに結婚できる?
お母様に感謝?

何故、右手の甲を見て、結婚できると思った?
それは、ただのアザではないということを知っているということだよね。
アザに見える花模様…。

"運命の花"しかないな…。

だけど、なんで"運命の花"の印を見てお母様に感謝になるんだろう?

"運命の花"は女神様が決めた運命の相手の印…。

人がどうにかできるものなのか?

しかし、妹のあの言葉…。


そういえば…。

母も"運命の花"が決め手となり父上と結婚できたんだったよな…。

しかも、父上にとっては2人目の"運命の花"だったらしいんだよ。

運命の花が2人いるなんて初めての事だったから、当時の王宮は大変な騒ぎだったと聞いたことがあるな。

その時も何かおかしいなぁと感じたんだけど…。

どう考えても母が怪しいよね…。
絶対にキャルルに悪知恵をつけたよね…。

「もう大丈夫なのかい、キャルル?」

少し探ってみようかな…。

「お兄様!私、マウル様と結婚します」

色々と話がとんでいるね。

「どうして結婚かな?」

「だって、"運命の花"がでました」

嬉しそうだね。

「だからって、なぜ相手がマウルだとわかるの?」

そこからして、おかしいなぁと思うんだよ。

「だって、相手はマウル様ってつた…」

そこまで、言って妹は自分の口を両手でふさいだ。

…つたえた…と続くんじゃないかな?

それは、誰かに相手はマウルにしてくれと伝えた…ということじゃない?秘密にしないといけないのに、うっかりと話しそうになって自分の口をふさいだんだろうね。

キャルルが秘密にするなんて無理だよ。

本当、おバカさんだね。

おバカさんの考えではここまで出来ないよね。

これは、きっと母が関係しているね。
そして、その事を秘密にするように母に言われたんだよね。

色々と黒い噂のある人だけど、本当に危ないことにも手を出しているみたいだね。

さすがに、これはやりすぎだな…。

隣国の学友にまで手を出すのは問題だよ。

しかも、王族に…。

下手すれば国の問題になるということもわからないで、よく王妃なんかが務まるよね。

我が母ながら呆れるよ…。

まぁ、あなたは僕を産んでくれただけの人だけどね…。

それ以上でも以下でもないね。


あなたの事は嫌いだから別にどうなろうと構わないけど、学友を不幸にはできないから徹底的に調べさせて頂きますね…。



……お母様。



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