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2-52 王様!?
しおりを挟む「はあ~、ドキドキした」
なんとか教会から脱出できて家に戻ってくることができてホッとしたけど胸はまだドキドキしている。
ヴァン様は僕の隣で水晶の黒い靄を吸い取ったブラディーボールを眺めている。
とりあえず教会の人達の大事にしていた水晶を壊した…まあ、正確には割っちゃったんですけど…でも結果オッケーだよね。
なにも言わずに水晶を見ているヴァン様が怖いけど…。何を考えているんだろうか。
でも…これからどうしよう。
教会の企みは水晶を壊したことで今すぐには戦争をおこすことは出来なくなったけど、またあの聖女が力を貸せば水晶は黒くなるのかもしれないし…。
それに獣人のパルさん達にどう報告するかだよね。
今のところは戦争の心配はありません大丈夫ですから国に帰って下さい…なんて安心できないよね。
ここからは王様とかに話をしないと先に進まない感じかな。そうなるとヴァン様の出番だよね。
さっきから隣で動かないヴァン様に視線を移した。
「え!?何をしてるんですか!」
じっとしていると思っていたヴァン様が水晶にチェーンをつけてネックレスに加工していた。いつの間にそんなことしてたの!?
「お前はこれを身につけて離さないようにしなさい。今から王城に行くぞ」
「へ?」
「今、詳しく鑑定したらそのブラディーボールで王様の様子が改善されるみたいだ。正気に戻ってもらって恩を売っておけ。そうすれば獣人の国の返還も上手くいきやすいだろう」
なるほど…そういう使い方があったか。腹黒ヴァン様は一味ちがいますね。
「ほら行くぞ。善は急げだ!」
疲れていたはずのヴァン様がまたコウモリの姿になって窓から飛び出しだして行った。僕としてはもう少し休みたかったんだけどな…。でも、そうも言ってられないか。
「ヴァン様、待ってくださいよ~!」
気合いを入れてヴァン様を追いかけた。
最近レベルが上がっているのか飛ぶ速さが前とは違っている。短時間で王城まで到着することが出来た。
何気に基礎訓練が役に立ってたりするのかな?
僕はマントを使って姿を隠しながらヴァン様の後について城内に潜入した。
そして大きな扉の前で止まった。どうやらここが王様の寝室らしい。
護衛の人達に僕たちは仲間だと術をかけて部屋の中に簡単に入ることができた。ブラディーボール様々だよ。
部屋の中は大きくて豪華な飾りの着いた天蓋つきベッドがあってそこに王様が寝ているのが確認できた。
だけど…。
「…目が開いてませんか?」
「ずっとこんな感じだ」
コウモリから人間の姿に変化したヴァン様が寝ている王様の近くに行く。
「王よ…今からかけられている術を解いてやるから後で願いを1つ叶えてほしい」
王様は反応が無い様に見えたけど一瞬、目に光が宿った様に見えた。
「では始めるぞ…」
ヴァン様と王様の会話はどうやら成立したみたいだ。ヴァン様から僕にアイコンタクトがあった。
「では術を解きますね…」
僕はブラディーボールに念を込める。
どうか上手くいきますように…。
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