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2-㉜ 契約する?
しおりを挟む気持ち悪い。本当にこの人が聖女で間違いないのか?
こんな人のどこにみんな惹かれるのか理解できない。臭い香水の香りに、わざとらしく僕にあててくる豊満な身体。何一つ魅力を感じない。
でも…。
「何もいりません。ただし僕と契約はしてほしいと思っています」
この人をブラディーガールにして、どんなブラディーボールが出来るのかには興味がある。
「あら、本当に何もいらないの?」
「いらないです」
「ふ~ん、契約してあげてもいいわよ。ただし…」
聖女らしき人は僕の周りをくるりと回りながら人差し指で常に僕の身体のどこかに触れていた。身体が僕の正面で止まるとその指が僕の唇に触れた。
「貴方の力を私の為に使ってほしいの…。契約すれば色々な能力を扱える様になると聞いているわ。それって貴方がいればどんな能力でも使える様になるってことよね。とても素晴らしいわ~」
話をしながら聖女らしき女性は僕の膝の上に座って来た。
…常識では考えられないよ。本当にこの女性が聖女なのか?
でも予想通りの話が出てきたな。
やはりこちら側の人達も僕の能力を使うつもりなんだな。
人から見れば僕の能力は価値のある能力に見えているんだと思うと悪い気はしないけど、複雑な思いもある。
僕としては僕の能力を人と争うために使いたくはないし、期待されているブラディーボールが絶対に出来上がってくるわけでもないし、それなのにその事でガッカリされるとかも嫌だしな…。
「ねぇ…緊張しているの」
膝に乗っていた聖女らしき女性の事をすっかり忘れていたよ!
女性は僕が考え事をして黙っていたのを緊張していると勘違いしているみたいだ。
「違います。申し訳ありませんが、僕から離れてくれませんか?」
下手に身体に触ると後で何か言われるかもしれないから自分で動かすのもためらってしまう。
「…面白くないわね」
フンッと鼻息を荒くしながら女性は僕から離れた。
「それで、どうなの?私の為に力を使ってくれるのかしら?」
協力はしたくないけど聖女のブラディーボールは作りたい…どうしようかな。
そうだ…。
「あの先程から聞いていて不思議に思ったのですが誤解されている部分が多々あるように思うんです」
「誤解?」
「はい。僕の能力は自分が思った能力を作り出す…ではありませんよ。貴女が思われているような能力が使える様になるのかどうか…」
僕の話を聞いていた女性の雰囲気が変化した。
「何ですって!聞いていたのと違うじゃない!!私は若く綺麗になれてしかも役に立つ能力を貴方が作り出せると聞いていたのに!!!」
…そんなことを誰から聞いたのか。
鬼の様な表情をしながら自分の指の爪をカジガジと噛んでいる。まるで駄々っ子のようだ。
いったい誰がこんな人を聖女にしたのだろうかと思うよ。
はあ~、こんなのでこの人と契約できるのかな…。
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