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31. 予想外すぎます
しおりを挟む人間って予想外の事が起こると思考が止まるっていうことを身をもって実感したよ。
今目の前で繰り広げられている光景が信じられないんですけど…。
「まさか本当に伝説の幸福のコウモリだったなんて信じられないと思っていましたが…それが私達のご先祖様だったなんて…夢を見ているみたいですわ」
母さんは興奮しすぎて涙目になりながら、両手を顔の下辺りでしっかりと組んでいて、まるでヴァン様を神様みたいに拝んでいる。
そう…コウモリのヴァン様じゃない人間のヴァン様をね…。
もうすぐ両親が来てしまうとオロオロしていた時に、僕の指をカブリと急にヴァン様が噛んで人間の姿に変身したんだよ。
僕がその事に驚いていたら、両親が来てしまって…今に至ります。
ヴァン様…何を考えているんだろう?
「お会いできて光栄です。まさか伝説のご先祖様にお会いできるなんて…うっ…」
え…父さんが泣き始めちゃったよ!
しかも伝説のご先祖様って何?!
「いや、私こそ急な訪問を詫びねばならない。しかし急用があってな…。その辺りの話しはそなた達の息子に聞いてくれ」
待ってヴァン様!!!全部を僕に振るつもりですか?!
それは無いと思います!
「息子ですか…?」
母さんの目線が僕に送られてくる。
冷や汗が出ているのは気のせいではないと思う。こ、怖い…。
「息子は前から知っていた…と言うことですか?」
「そうだ。私は人間の姿を長くは保つ事が今はできない。すぐにまたコウモリの姿になってしまうだろう。その時に話が出来るのは一族の中ではフルドだけだ」
「そうなのですね…」
こ、怖い。母さんの視線が怖くて目線を合わせる事ができないよ!
ヴァン様…恨みますよ。
「「あ!」」
両親の声が聞こえたと同時にヴァン様がコウモリの姿に戻ってしまった。
『後はお前が説明しろ。その方が今後活動しやすくなるであろう』
コウモリになった途端に僕の方に飛んで来て、言いたいことを言ったら僕の部屋に入っていった。
ヴァン様もう少し説明してくれても良かったと思いますが…。
「「フルド…」」
両親が作り笑顔で僕に少しずつ近づいてくる。
これって…怒られる?
ヴァン様の事を黙っていたから?
いや、僕は悪くないよね。
「さあ、ゆっくりと聞かせてもらいましょうか」
「そうだな」
母さんが僕の腕をしっかりと掴み、父さんが僕の背中を押して家の中に連れて行こうとしている。
「あ、あの今日は僕…疲れているというか…明日ではダメですか?」
僕だってヴァン様にどういうつもりか話をしてみたい。それからでも許されるはず…だよね。
「あら、じゃあ疲れがとれるハーブティーをいれてあげるわよ」
「私はマッサージをしてやろう」
どうやら2人は僕を離す気はないみたいだね。
結局…この夜は出かける事はできなかった。
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