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3. 誕生日パーティー
しおりを挟む沢山の招待客で溢れかえる広間。色とりどりのドレスが会場を華やかに見せている。
「誕生日おめでとうございます。今度は当家にも遊びに来てください」
「ありがとうございます」
もう何人とこんなやり取りをしただろうか。これっていつまで続くのだろう…と気が遠くなるよ。
僕の家は伯爵家だが領地から宝石の原石が採掘されるので資産があるのと、長く続く名門と言われる部類に入るので年頃の娘のいる家は必ず娘を同伴してやってくる。
兄には婚約者がもう決まっているので標的は僕ということになるみたいだ。
…勘弁してほしいよ。
しかも今日は昼間のパーティーなので僕にとっては苦痛でしかない。夜会にしようと母に言ったら「16歳の成人になったらね」と言われてしまった。たった1歳しか違わないのに…。
昼間だから目を開けにくくて薄目で見てると、ボンヤリとしか顔が見えなくて困るんだよね。美人だと言われても僕にはよくわからないし…。
そもそもそんなに女の子に興味も無いんだよね。
たぶん両親に言うと怒られそうだから言ったことはないけど。
伯爵家は兄さんが継ぐだろうし、僕はのんびりと田舎でスローライフを送りたいと考えている。動物が好きだからいろんな種類の動物を飼って楽しく過ごすんだ。その為には貴族の娘と結婚なんて出来ないよね。
だけど実現するには仕事がないとね。
問題はそこなんだよ。
今は伯爵家で養ってもらえるけど兄さんが結婚してこの家に帰って来ることになれば僕は家をでないといけないだろう。その時どうするか…。
本来なら結婚して相手の家を継ぐか婿養子に入るかするから考えなくても良いんだけど…それでは田舎でスローライフは無理だしな~。
前にも言ったように僕にはこれといって特別な力は今はない。そんな僕にできる仕事って何だ?
「フルド…ちょっとフルド!」
姉さんが僕の体を揺らして声をかけている。
あっ…またやってしまった。
「あなた…また考え事でもしていたの?ボーとしていたわよ」
「…ごめんなさい」
ふと周りの視線を感じる。あれ?何でみんながこっちを見ているんだ?口でも開けていたのかな?
「あ~あ、知らないのは本人のみ…ってね。フルドって考え事をしている時は目が通常モードになっているのよね。それに何だかわからないけど色気?がでてるのよ…。昼間は睨むような細い目になっているから今まで気がつかれなかったのに…これは婚約者選びで血をみるかもね…」
姉さんは何を言っているんだろう?
僕に色気なんてあるはずないよ。
「姉さんまで僕をからかわなくても…」
少し、いじけた感じで言ってみたが姉には通用しなかったみたいだ。
「…その鈍感力をわかってくれる相手が必要よね」
鈍感力?ってなんだろう。
「ほら、ボーとしない!挨拶はまだ終わってないわよ」
姉さんに背中を押されて色とりどりのドレスの中に押し出された。
僕が夕飯も食べることができないくらいに疲れたのは絶対に姉さんのせいだと思う。
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