2 / 8
2. 魔女の呪い 〈エルド視点〉
しおりを挟む彼女と出会ったのは僕が12歳の時の誕生会に彼女は母親と一緒にやって来た。
スタッツ伯爵家の長女クレア、光り輝く銀髪に深い緑色の瞳桜色の可愛い頬…手には僕へのプレゼントを抱えていた。
「初めまして、アバナル=エルドです」
「初めまして、スタッツ=クレアと申します。本日はお誕生日会にお招き頂きありがとうございます。これは我が領地で育てているお花です」
クレアは恥ずかしがりながら僕にサクラソウの花束をくれた。
可愛い子だな…。
僕はこの時魔女の言葉を思い出した。
「お前が愛を囁くと相手は死ぬよ…」
身体がブルッと震える。
母が心配し僕に声をかけているみたいだが僕にはもう聞こえなかった。
あれは、僕が8歳の春。
僕は魔女に誘拐された。
魔女は幼児愛者だったらしく、好みの顔をしていた僕を前から狙っていたらしい。
だが、拐われた僕は魔女を怖い人としか認識できなかった。
魔女は追ってが近づいてきたと分かると僕に呪いをかけると言い始めた。
「私を愛さなかった罰を貴方に与えるわ。将来、貴方に本気で好きな相手ができたら絶対に愛を囁いては駄目よ。相手が死んでしまうから…」
魔女は笑いながら言っている。
何を言っているんだ…。
「それにこの呪いの事を好きな相手に知られても駄目よ。貴方はずっと愛を好きな人にだけは囁けないのよ…アハハハ」
大声で笑う魔女が僕は怖かった。
頭に残ったのは僕は愛した人に愛を囁くと死んでしまうということだけだった。
「でも、可哀想だからチャンスもあげるわ、愛を囁かなくても貴方の事を心から好きになりキスする事ができたなら呪いは解ける様にしといてあげる。せいぜい頑張るといいわ。恋をする度私を思い出しなさい!」
そう言いはなった後で魔女は捕まり死刑になった。
僕は両親に魔女の呪いの話をした。
両親は青ざめた顔をして僕を抱きしめた。
「大丈夫、きっと素敵なお相手が見つかるわ。大丈夫…」
まるで自分に暗示をかけるように両親は繰り返し「大丈夫」と言っていた。
だが、僕は人を好きになるのが怖かった。
そう今までずっと…。
だけど、出会ってしまった。
好きになってしまった。
可愛いクレアを…。
しかし、僕は彼女に愛を囁けない…。
それに、何を言えば愛を囁くことになるのかも分からない。
愛してる、好き…はアウトだな。
可愛いもアウトなのか?
そう考えると彼女に何も言えなかった。
僕が下手に何かを言うと愛する彼女は死んでしまうかもしれないから…。
僕は知らなかった愛している人に愛してると言えない事がこんなにも辛い事だったなんて…。
こんな僕は振られてもしかたないのだ…。
しかし、僕はクレアを諦める事ができない。
8
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
さようなら、あなたとはもうお別れです
四季
恋愛
十八の誕生日、親から告げられたアセインという青年と婚約した。
幸せになれると思っていた。
そう夢みていたのだ。
しかし、婚約から三ヶ月ほどが経った頃、異変が起こり始める。
聖人な婚約者は、困っている女性達を側室にするようです。人助けは結構ですが、私は嫌なので婚約破棄してください
香木あかり
恋愛
私の婚約者であるフィリップ・シルゲンは、聖人と称されるほど優しく親切で慈悲深いお方です。
ある日、フィリップは五人の女性を引き連れてこう言いました。
「彼女達は、様々な理由で自分の家で暮らせなくなった娘達でね。落ち着くまで僕の家で居候しているんだ」
「でも、もうすぐ僕は君と結婚するだろう?だから、彼女達を正式に側室として迎え入れようと思うんだ。君にも伝えておこうと思ってね」
いくら聖人のように優しいからって、困っている女性を側室に置きまくるのは……どう考えてもおかしいでしょう?
え?おかしいって思っているのは、私だけなのですか?
周囲の人が彼の行動を絶賛しても、私には受け入れられません。
何としても逃げ出さなくては。
入籍まであと一ヶ月。それまでに婚約破棄してみせましょう!
※ゆる設定、コメディ色強めです
※複数サイトで掲載中
離婚された夫人は、学生時代を思いだして、結婚をやり直します。
甘い秋空
恋愛
夫婦として何事もなく過ごした15年間だったのに、離婚され、一人娘とも離され、急遽、屋敷を追い出された夫人。
さらに、異世界からの聖女召喚が成功したため、聖女の職も失いました。
これまで誤って召喚されてしまった女性たちを、保護している王弟陛下の隠し部屋で、暮らすことになりましたが……
婚約者に好きな人ができたらしい(※ただし事実とは異なります)
彗星
恋愛
主人公ミアと、婚約者リアムとのすれ違いもの。学園の人気者であるリアムを、婚約者を持つミアは、公爵家のご令嬢であるマリーナに「彼は私のことが好きだ」と言われる。その言葉が引っかかったことで、リアムと婚約解消した方がいいのではないかと考え始める。しかし、リアムの気持ちは、ミアが考えることとは違うらしく…。
こんな姿になってしまった僕は、愛する君と別れる事を決めたんだ
五珠 izumi
恋愛
僕たちは仲の良い婚約者だった。
他人の婚約破棄の話を聞いても自分達には無縁だと思っていた。
まさか自分の口からそれを言わなければならない日が来るとは思わずに…
※ 設定はゆるいです。
【完結】昨日までの愛は虚像でした
鬼ヶ咲あちたん
恋愛
公爵令息レアンドロに体を暴かれてしまった侯爵令嬢ファティマは、純潔でなくなったことを理由に、レアンドロの双子の兄イグナシオとの婚約を解消されてしまう。その結果、元凶のレアンドロと結婚する羽目になったが、そこで知らされた元婚約者イグナシオの真の姿に慄然とする。
おしどり夫婦の茶番
Rj
恋愛
夫がまた口紅をつけて帰ってきた。お互い初恋の相手でおしどり夫婦として知られるナタリアとブライアン。
おしどり夫婦にも人にはいえない事情がある。
一話完結。『一番でなくとも』に登場したナタリアの話です。未読でも問題なく読んでいただけます。
旦那様の秘密 ~人も羨む溺愛結婚、の筈がその実態は白い結婚!?なのにやっぱり甘々って意味不明です~
夏笆(なつは)
恋愛
溺愛と言われ、自分もそう感じながらハロルドと結婚したシャロンだが、その婚姻式の夜『今日は、疲れただろう。ゆっくり休むといい』と言われ、それ以降も夫婦で寝室を共にしたことは無い。
それでも、休日は一緒に過ごすし、朝も夜も食事は共に摂る。しかも、熱量のある瞳でハロルドはシャロンを見つめている。
浮気をするにしても、そのような時間があると思えず、むしろ誰よりも愛されているのでは、と感じる時間が多く、悩んだシャロンは、ハロルドに直接問うてみることに決めた。
そして知った、ハロルドの秘密とは・・・。
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる