運命なんて信じません

26. 愛される幸せ？

「嘘？！本当に？」

　織糸が驚くのも当たり前だよね。

　あれだけ占いの通りになりたくないとか言っていた私が占一さんとお付き合いをすることになったんだから。

　今、織糸をカフェに呼び出して昨日の話を織糸にしているん真っ最中です。

「ま、でも良かったんじゃない。今までの男達とは系統が違うから安心できるわ。これで、会社を辞めたとかの話だったら、ダーリンとの時間を返せって掴みかかるところよ。」

　織糸…怖い。

「でも占一さんはモテるからな～。信頼できるかが鍵なのかもね。葵って冷たい男が好みだし、優しい占一さんとの相性は未知数だわ。」

「え？ちょっと待って。私が冷たい男が好き？はあ？どこが？」

「まさか…本人は気がついてないの？嘘！あんたの好きになる男って皆冷たい奴ばっかりだったじゃん。」

　ちょっと、織糸さん！失礼過ぎない？！
　
　どこがの誰かと勘違いしてない？

「誰と間違えてんのよ。」

「え～、じゃあさ、熱があるって彼氏に話をしたのにその後すぐに好きなゲームが並ばないと買えないから並んでくれないか？って言われたのは葵じゃなかった？」

　あ～、それ思い当たります。間違いなく私ですね。

　元カレに何か買ってきてほしくて「風邪ひいて熱があるみたいなんだよね。」って電話で話をしたのに、「あ、そうなんだ。悪いんだけど俺の好きなゲームが限定でさ、並ばないと買えないらしいから明日の朝イチで並んでくれない？」って言われました。ハッキリ覚えてます。

「それ…私ですね。」

「だよね。それに学生の時に好きになった先輩にバレンタインデーにチョコレートを渡したら目の前で隣にいる友人に渡されたんだよね？」

　…はい。それも事実ですね。

　高校生の時に思いきってバレンタインデーのチョコレートを先輩に手渡しをしたら、先輩がその場でラッピングを剥がして中身を見て「あ～、俺…手作りたべられないんだよな。これコイツにあげても良い？」と言われて隣にいた先輩の友人に渡された。私は「はい。」と言ってもいないのに…。

　あの時はショックすぎて寝込んだわ～。

　あれ？良い思い出全然ないじゃん！

「何を今さら呆然としてるかな？自分の事は本当にわかってないよね。あの人達と真逆の位置にいるのが占一さんかもね。葵は一度た～ぷり彼氏から愛されろ！」

　織糸～！女っぷりがあがってません。もう、惚れそうだよ。

「そうすれば本当の自分が見えてくるだろうし、自分を大事にすることができるようになると思うから。」

　本当の自分？

　自分を大事にする？

「葵が頑張りやさんなのは私がよく知っている。だけどね、必要以上に頑張りすぎて自己犠牲が当たり前だと思っているところがあるんだよ。私はそれが心配だった。いくら私が言っても聞かないし…。でも占一さんなら葵を変えてくれるかもしれないわ。」

　自己犠牲？それって頑張っていたら当たり前だよね。人に頼むより自分が頑張って動いたほうが良くない？

「自己犠牲…ってみんなはそうじゃないの？」

「葵は度を越してるよ。誰にも頼ってはいけない！みたいなオーラを凄い振り撒いてるもん。私でも近寄りがたいくらいにね。」

「そんなつもりは…。」

　正直言ってありますね。

　家族の事があるから何でも自分でしないとダメなんだって幼い頃から思っていたし、人に頼るってことができないというか…。

「自覚があるよね。今度からは占一さんに半分…いや、1/3でもいいから頼ってみたら？」

　占一さんに頼る…。

　できるかな…。

「とにかく良かったわ。葵にも幸せが訪れそうだから、ダーリンとゆっくりできるわ。愛される幸せを噛み締めてみなさいよ。じゃあ、葵、お幸せにね～！」

「え？ちょっ、織糸～！！」

　織糸はカフェの伝票をヒラヒラとさせながら行ってしまいました。

　幸せ…か。